リハビリ④ 酔っ払いを見捨てた話

夜勤明けのある水曜日。
職場から出ると救急車が止まっていた。

何事か?とも思ったけれど、とりあえずスルー。
こちとら夜勤明けで二日酔い。
下手に首を突っ込んでまた3時間なんてことは御免だ。

救急隊の方は平日でも大変だと考えながら駅までの道を急いでいると、路地でうずくまっている人影が目に入った。

…さっきは救急隊がいたが、今回はどうだろう。
とりあえず水だけでも渡しておくか?

仕方なく近くの自販機で購入して人影の方に向かうと、鞄を抱えてうずくまる男の子。

何度も戻したことが伺えるの道路のシミ。

とりあえずそこまでは想定通りだった。

しかし、彼の周りには自分の持ってる水のボトルが3本も置いてある。

なるほど、同じ事をしようとした人達はどうしようもなくボトルだけ置いて供養としたようだ。

先人の勇気を讃え、とりあえず購入した水は鞄にしまいその場を後にすることにした。

辿り着いたホームでは、酔った大学生が彼女らしき人と大きな声で通話していた。

どうやら終点まで寝て、駅員さんに起こしてもらおうという算段らしい。

まぁ今回は意識もちゃんとしてるし、電車に乗ればいいだけ。
そもそも自分とは反対方向なのだと無関心を決め込む。

電車に乗り込み席に座ると、件の彼が向かいに座る。
電車には乗れたから、と通話を終えた彼は、仕切りにもたれ目を瞑る。

…ん?
彼が乗りたい電車は方向のはず。
同じ電車に乗った人達もあの会話を聞いていたはずだ。

誰も彼に声をかけないように、聞き間違えたと自分に言い聞かせてまた無視を決め込むことにした…

と、電車でこんなnoteを書いていたらいつの間にか自分が降りる駅から3つも降り過ごしてしまったのは内緒の話。

人を呪わば穴二つという事なのだろう…
せめて水は供えておくべきだったか。

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