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『哲学あそび』#6

2024年2月25日に『哲学あそび』というイベントの第六回を開催した。
場所は商店街の一角にある静かなお寺。当日はさらさらとした雨だった。多分、雨の日の開催は初めてだが、あらゆることを優しい静けさとして見せてくれる力が、こちらの場所にはあるように思う。
雨が冷やした空気を暖めるため、ストーブを焚いて皆様を待った。
 
哲学あそびがどんなものであるかは、過去のnote(『哲学あそび』#1)をご覧いただければ嬉しいです。
 
――下記に当日使用したイベント内容の用紙より一部掲載する。

【はじめに】
哲学あそびは、テーマについて唯一の結論を出そうとするものではありません。
いつもより深めに自分に潜ったり、自分以外の様々な思考や感覚にふれたりして、そうする前の自分(また、自分と他者との関係)から、ほんの少し変化しようとする試みです。

【今回の流れ】
まずは、宮沢賢治「やまなし」の一部分から、気になる言葉を選んでください。
(単語でも一文でもOKです。複数でもOK。)

その言葉はどういう物事を表そうとしているのかついて考えてみます。
(感覚的なものが内包している、色々な具体例を想像しましょう。)

なぜ、そう思ったのでしょうか。
(理由や根拠は人それぞれですよね。自分はなぜそう思ったか、潜ってみてください。特に司会はしませんので、各々のタイミングで話し、お互いに耳を傾けてください。)

感想タイム。
(最後に今回の感想を教えてください。)

2024.02.25 哲学あそび

――というものだった。
 
実はこれ、小学校のときの担任の先生がしてくれた授業へのオマージュなのです。
私が小学校六年生当時、ここまで複雑なものではありませんが、「これらの言葉の象徴するものは何だろうか?」という、文章(延いては物事)を解釈していくための一つの方法を提示していただきました。それが今でも印象深く思い出されます。
 
そんな背景のもと開始した、今回の哲学あそび。
様々な解釈の一部をホワイトボード(noteに共に掲載した画像)へ。
 
「クラムボン」が何であるのかは勿論考えてみたいところだったが、哲学あそびが進むにつれて、会話をしている兄弟にも、その会話にも、そしてそれらを取り囲む情景の描写にも、スポットライトが当てられていった。
これが象徴するものはこれ、という確固たる正解はない。人によって正反対の解釈になるものすらあった。それでも、お互いになんとなく、それも内包しているのかも……という気になってくる。
私は、このような状況は自然なことだと思っている。というのは、あらゆる物事にはあらゆる状態があって、ある物事をどこの状態と結びつける(解釈する)かは、各々の経験や感覚などに大きく左右されると思うからだ。
それが今回の皆様の解釈や思考にも反映されている。だからこそ正反対の意見も出てくるし、そうでありながら、別の見方を提示されても「あり得るもの」として向き合えたのではないだろうか。
 
感想タイムでは、皆様から下記のような内容をお話しいただけた。
・ストレートに見てみたんだけど、“死んだ→生き返った”の視点はなかった。(感じ取り方が)人それぞれだから、人の話を聞いてからまた読んでみると、違う観点が追加される。
・“死んだよ”“殺されたよ”の件で、(宮沢賢治は途中からベジタリアンになったらしいという背景を鑑みて)“食べる”“食べられる”のどちら側に立つのか、などの思いが強く反映されているのかも。
・ただひたすら、わからない。動きが丁寧に書かれていることについて、意味がないと思っていたけど、あるのかも。やっぱりないのかも、などと思った。それと、自分の力ではどうにもならないものが、外からもたらされる感じもあった。こんなふうに見えたのは、多くの観点が知れたからなのかも。
・宮沢賢治の本を一度も読んだことがないし、バックグラウンドも知らない。(その状態で)今回の文を見て、戦争の話なのかと思った。魚が飛行機でクラムボンが爆弾なのでは、というふうに読めた。それが皆の話と全然合わないことを知って、面白かった。
 
「やまなし」の文章はそれ自体が色々な解釈をできる、懐が深い作品だと個人的に思っています。具体的で明確な長文よりも、言葉ひとつひとつに色々な解釈を持たせた短文のほうが、結果的に広い範囲を網羅できるということは、往々にしてあることのように思います。(念のために申し添えますが、これは具体的な長文が不要だということでも、魅力がないと主張しているのでもありません。用いるのに適する場所はそれぞれにありますよね。)
今回、「やまなし」という作品の一部について、皆様と多様な解釈を共にすることができて、懐かしく楽しかったです。
 
お越しいただいた皆様、ご協力いただいた皆様、気にかけていただいた皆様、ありがとうございました。
また遊びましょう。

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