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【007】タイヤがついたデジタル家電

 電気自動車(EV)に乗り始めたのは、脱炭素社会に貢献したいとか、立派なことを考えたからではない。いや、地球温暖化はなんとかしなきゃ、とは思っているけれども。昨年秋、たまたま本屋で見かけた自動車雑誌の表紙に「ホンダe」が載っていた。ほんとに市販車?と雑誌を買い、試乗して気に入って現物も購入。絵に描いたような衝動買いだ。

 ミニとかフィアット500とか昔の日産フィガロとか、コロンとした感じの車が好き。なので最初は見た目。EVだというのは、むしろマイナス要素だった。何度か書いた通り、集合住宅で貸し駐車場で、自前の充電設備を持てないから。他の車のように、EVかハイブリッドかが選べるラインアップなら、ハイブリッドにしていたかも。

 でもいまは、いずれ乗り換えるとしてもきっとEV、と思っている。低重心、レスポンスの良さ、静けさといった長所は、知ってしまうと捨てがたい。とてもよくできた乗り物だ。それでいて、どこか車っぽくない。法的には自家用普通乗用車だし、路上では道交法に従っている。運転する楽しさも似ている。だけど、何かが違っている。説明しにくいけど、タイヤが4つついたデジタル家電といえばいいだろうか。

 運転席から助手席にかけて、5枚も並んだ液晶パネルで、家電っぽさも倍増。左右両端の2画面はサイドミラーの役目。この車、左右のミラーがない。ボディ側面のカメラから画像が送られる。これはナイスアイデア。視線の移動も少なくて済むし、雨でもわりと見やすい。

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 運転席の前にある画面には速度や充電量や電費などの情報が表示される。これは従来型とそう変わらない。真ん中と助手席の前はタッチパネル式で、ナビやらオーディオやらがあれこれ切り替えできる。アプリもダウンロードできて、ほとんどスマホ。デジタル版の取扱説明書が読める。止まっている時は電子水槽を呼び出して、魚にエサをやって和んだりもできる。

 あと、車内でWi-Fiが使える(有料)。ノートパソコンを持ち歩くライター稼業には、かなり便利。どうやって車をネットにつなげるのか不思議だったので、営業マンK氏に質問。最新のナビは渋滞などの道路情報を得るために情報センターと随時交信しているらしく、その通信端末を使って接続しているそうだ。

 車は時々「動くリビングルーム」にたとえられたりする。ホンダeはそれほど広くもゆったりもしていないので、「動く書斎」もしくは「動くプレイルーム」だろうか。

 当たり前だが、一切合切がバッテリーにつながっている。ヘッドライトやウインカーといった灯火類、ナビやオーディオ、パワステのような操作系もモーターとかの動力も、なにもかも。もし電欠しちゃったら、どうなるんだろう。停電してしまったオール電化の家を想像してみた。きっとお手上げ。EVにも使えるモバイルバッテリーとか売ってたら積んで走りたいのだが。

(夕刊フジ/2021.10.14)

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