見出し画像

【034】「バッテリーはエンジン」政府は内製化の支援を

カーデザイナー井上眞人さんが提言

 「バッテリーはエンジンですから」と言われても、意味不明かもしれない。でも、電気自動車(EV)に乗っている人は、きっと納得。私も力強く相槌を打っていた。

 EVユーザーが新潟県三条市に集まった「EVオートキャンプ実証トライアル」に、初代日産リーフのチーフデザイナーを務めた井上眞人さんが参加していて、いろいろ話を聞かせてもらった。その中で出てきた言葉だ。

 EVの走行用バッテリーは、内燃車でいう燃料タンク、と普通は考える。私も最初はそう思っていたが、じつはバッテリー容量や充電効率、あるいは制御システムが、出力や航続距離に直結する。その意味ではむしろエンジンに近い。バッテリーはEVの中核技術なのだ。ところが……。

 「いまバッテリーは中国と韓国のメーカーが世界シェアの60%を占めていて、さらに莫大な投資をして性能アップと原価ダウンに取り組んでいる。バッテリーを海外から買っていては日本の自動車メーカーはいつまでも主導権を握れない」

 井上さんの手がけた初代リーフは2010年に発売されると「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」に輝き、前年に発売された三菱「i-MiEV」とともに、EV時代の先駆けとなった。モデルチェンジして現在も販売中のリーフは日本で最も売れているEVで、キャンプにも2台参加。だが、早々に量産EVに着手していたはずの日本が、EVシフトでは遅れを取る。

 「日本は技術では決して負けていない。でも、性能の良いものを安く大量に作るということで世界が動いているのは理解しなくてはいけない」。井上さんは、日本経済を支えた家電や半導体がシェアを失ってしまったように、自動車産業が衰退することを懸念する。「バッテリーを日本国内で内製化できるように、政府が十分な先行投資をすることが必要でしょう」

 いまは独立して伊トリノにデザイン事務所を構える井上さん。最近携わったコンセプトカーが、カッコよかったのでご紹介。イタリア・トリノのデザイン専門大学IEDで教鞭を執る井上さんの教え子が、アルピーヌとのコラボで制作したフルスケールモデル「アルピーヌA4810」だ。もはや宇宙船。さすがフロントランナー。

アルピーヌA4810の発表風景(井上さん提供)

(夕刊フジ/2022.4.28)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?