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【043】「Q電丸」とランデブー 高性能の移動充電車はニーズ拡大中

 電気自動車(EV)が電欠したら、レッカー移動が頼り。だけど、その場で充電できる「Q電丸」という車が存在して、積雪による立ち往生(大規模滞留)に備えて冬季にNEXCO東日本で運用されていたことを今年2月にご紹介した。その時は実車を見ることができなかったのだが、やっと「ホンダe」でランデブーを果たすことができたのでご報告。

 Q電丸は、車載発電機と蓄電池、急速充電器を備えたEV用移動充電車。製作している京都市の特装車メーカー「モビリティープラス」の車体工場(滋賀県栗東市)を訪ねた。同社は出張用タイヤサービス車などさまざまな特装トラック・バンを開発・製造している。市販EVの日産リーフが登場したことを受けて、2012年にQ電丸を製作したという。

 執行役員の藤原愼司さん(63)が、開発の背景を語ってくれた。「技術屋の視点では、一般的な電動機械のなかで最大の消費電力を持つのがEV。これを動かせたら、世の中に普及している電動機械はほぼすべて動かせる。技術的課題に対する挑戦でもあったのです」

タイヤ交換用の器具も搭載

 残念ながら売れなかった。「早すぎましたね」と藤原さんは苦笑する。とはいえ、ニーズはあった。以来、同社所有のQ電丸には「貸してほしい」という依頼がひっきりなし。

 各地のEV走行会や試乗会に呼ばれたり、メーカーがEVのテスト時に借り出したり。東京五輪では聖火リレーの先導車トヨタ「LQ」をサポートした。最近は、急速充電器の交換や修理の際に「代替機」として配置されたりする。レンタル料金は1日5万円という。

荷台に急速充電器

 ホンダeで充電を試させてもらった。発電機を回しながら最大出力で充電したところ、12分で9kWh。ちょっと入れすぎた。レッカー移動の代わりなので、近くで充電可能な場所まで走れるようにすればいいのに、栗東から大阪まで走れてしまうほどの電力量。もっと短時間で十分。これならEVが複数台でも救出できるだろう。

 軽EVのヒットなどで、車の電動化は加速中。工場では、増加するニーズに対応するため新たなEV充電車を製作中だった。早すぎたQ電丸に、やっと時代が追いついてきたようだ。

(夕刊フジ/2022.7.7)

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