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【032】EVを蓄電池に 電気の自産自消を実現

革工房「革榮」代表・辻榮亮さんインタビュー

 「電気自動車(EV)は車として乗るだけではもったいない。蓄電池として使うことで大きな価値がプラスされます」

 千葉県睦沢町にある総天然素材革工房「革榮(かわざかえ)」は、屋根に設置した太陽光発電パネルで、オール電化の自宅と工房の電気をまかなっている。エネルギー自給のカギを握っているのがEV。日産「e-NV200」を蓄電池として活用している辻榮亮(つじえ・りょう)さん(42)に、その取り組みについて教えてもらった。

走る蓄電池の「e-NV200」と辻榮さん

 「2016年にこのEVを買ったのをきっかけに、エネルギーの”自産自消”を考えるようになって、19年に東京都内から睦沢町に移住してきました」

 糸から研磨剤に至るまで天然素材の「土に還る革製品」をコンセプトにしている工房のわきにある白い箱が、家とEVをつなぐ「V2H充放電器」だ。V2Hは「ビークル・トゥ・ホーム(車から家へ)」の略語。屋根で発電された電気は、使った分以外は接続したEVに充電される。夜などは逆にEVから電気が取り出される。満充電にしたe-NV200で、家で使うほぼ1日分の電気が賄える。

 「足りない時は電気を買いますが、日中にEVに充電して余った分は売電しているので、電気代は差し引きでは黒字になっています」

 電気の自産自消は、EV乗りの理想像かも。辻榮さんは、8万キロ近く走った「e-NV200」(電池容量24kWh)を、ヒョンデ「IONIQ5」(同72.6kWh)に買い換えることを検討しているという。太陽光パネルの発電量が大きいので、容量の多いEVにすることで、さらに電気を有効活用できるようになる。

 「うちは水道も引かず、地下水を汲み上げています。独立した電源や水源を持つことで、地域の防災にも役立てる。房総半島台風(19年)の時は、停電していたご近所の方に、いつでも来てくださいねと声をかけました」

 有事でなくても、工房の営業時間帯は、V2H充放電器を道ゆくEVユーザーに開放している。しかも「晴れの日は無料」。お言葉に甘えて「ホンダe」をつないでもらった。快晴だったので、ぐんぐん充電されていく。太陽の恵みで走れる。電源として暮らしを支える。EVの魅力をたっぷり実感できた。

(夕刊フジ/2022.4.14)

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