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【001】充電クエストは意外に楽しい

 世界各国で脱ガソリン車の動きが加速。電気自動車(EV)に注目が集まっている。日本の道路ではエンジン付きのハイブリッド車(HV)が主流だが、ちらほらEVも見かけるように。買い替え候補に考えている人もいるのでは。とはいっても、まだまだ充電網は万全とは言い難い。そんな中、充電設備のない集合住宅に暮らすフリーライターが、つい「ホンダe」を衝動買い。充電スポットを求めて走り回る「野良EV」の日々を送ることになった。未来を先取り? それとも気が早すぎた?

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さいたまの古墳

 「どれぐらい売れてますか?」。2020年12月、「ホンダe」を試乗するために訪ねた東京都内のホンダ販売店で聞くと、担当してくれたK氏が苦笑いを浮かべた。10月30日の発売以来、試乗希望者は続々と来店するが「まだ一台も売れてません」。話題になっていて興味はある、だけど買うほどじゃないってところ。たぶん私も冷やかしと思われていたんだろうな。

 この車、国内での年間販売計画台数はたった千台。ホンダ初のEVだというのに在庫ゼロで当時、納期は4カ月待ち。営業マンもさぞ売りにくいだろう。家族4人でもう一度試乗できるか聞いてみると、俄然やる気満々になったK氏は、週末すぐに自宅に車を運んできてくれて「好きなだけ乗ってください」。結局その販売店で一台目のホンダe乗りになったが、あれから9カ月過ぎたいまも、私一人のようだ。

 スタイルも乗り心地も抜群の車だけど、もの足りないのは航続距離。カタログ値で283キロ。実際には、エアコンを使いながら街を走ったら200キロいくかどうか。東京駅から半径100キロの円を描くと、西は富士山、北は宇都宮、房総半島は東端の犬吠埼と南端の野島崎あたり。それ以上の距離なら「出先で充電」が必要になる。

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82kmの同心円でこんな感じ

 我が家のマイカーの使用状況だが、家族の送り迎えや買い物など、ご近所づかいがほとんど。とはいえ、取材で遠出することもある(まさに先日、宇都宮まで行ってきたばかり)。充電どうするんだ問題は、購入時も最大の検討課題となった。

 内燃車がスタンドで燃料を入れるように、EVは充電しなきゃ走れない。自宅に設備があれば、いつでも満充電からスタートできる。ところが筆者は集合住宅暮らし。駐車場も借りもので充電設備は取り付け不可。人気テレビ番組「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」ではないけれど、下手すりゃ電池切れで「ヤバいよヤバいよ」となりかねない。大丈夫なのだろうか…。

 失敗談も含む充電のあれこれについては次回に。ただ、乗り始めてから4カ月で約4000キロ走って、充電ができずに困ったことはない。取材などで100キロ以上の遠出にも、ためらうことはなくなった。走行中に充電不足の警告灯が点いてドキッとしたのは一回だけ。充電に給油より時間がかかるのでスケジュールに余裕は必要だが、見知らぬ土地での充電スポット探しにはゲームみたいな感覚もあり、ドライブの楽しみのひとつになっている。

(夕刊フジ/2021.8.26)

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