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事前情報ゼロで『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を観た

先日、ダ・ヴィンチ・恐山さんが下記のtweetを投稿した。

私も以前から気になっていた作品だったので、びっくりしに行こうと思って、近くの映画館に向かった。

実際ものすごくびっくりしたし、すごくよかったのだが、どのように感想を書いたらいいかわからず、1週間が経ってしまった。しかしどうしても、うろ覚えでも、当たり前な、あるいは間違った解釈があったとしても、アニメの前にまっさらな状態で観た映画の感想を残しておきたい。
(この記事はネタバレを含みます)

映画の主題

この映画の本質は一貫して「舞台人になっていく舞台少女」を描き、「舞台少女は一人ではなり得ない。複数の舞台少女があり、互いに影響しあって初めて舞台少女となる」ことだったように感じる。

観る前のイメージ

私のTLでたまに見かける「スタァライト」の文字。なんだかすごそうな気配は感じていた。観る前の私のイメージは下記のとおりである。

・百合っぽい気配がする。根拠はないが『少女革命ウテナ』に近そう
・まどマギのような、重い運命を背負った女の子の話なのでは?たぶん何かと戦うんだと思う。

1点目については、そこまで間違ってはいなかったと思う。未視聴だが、Amazon Primeビデオで2018年のアニメ作品をチェックした際に、「これを見た人はこちらも見ています」とウテナが紹介されていた。

2点目については、たぶん間違っていた。

レビュー スタァライト(鑑賞冒頭)

最初の東京タワー風の場面の描写で、「きっと本来は敵と戦うのだが、仲間同士で戦うことになってしまったんだな」と思った。まだ敵の存在を信じていた。
急にキリンが出てきたので、大型動物を使い魔としているのか…などとのんきなことを考えていた。

日常パートが始まったので、「舞台稽古」と言いながら実は戦闘訓練、なタイプのアニメだと思った。もしくは彼女たちはそれを知らされておらず、「本番」に出てようやくそれを悟るのかもしれない。
しかし、進路の話が普通に演劇業界だったので、ようやくそこで戦闘モノとしての理解を諦めた。後から、ここで誰がどの進路を希望していたかはかなり重要だったことを思い知ったが、初見ではうろ覚えになってしまったことが悔やまれる。

電車内で衣装が出てきたところの順応性の高さにびっくりしながら、意味ありげな「オーディションに呼ばれなかった」話について考える。やはり、舞台少女には地球規模の特殊な役割があるのではないか? ロンドンにいるはずのひかりにもこの一件は繋がっているようだし……
次々に流血描写があり、やっぱり戦闘モノじゃないか!となったところで、はっと気づく。
そう、これはレビュー。

私は宝塚歌劇団のレビューを数回観た程度の経験しかないが、レビューには漠然と「テーマがあり、お芝居ほどの語りはなく、歌と踊りで伝える芸術」くらいのイメージがあった。ここでレビューの定義を確認する。

レビュー
1.《名》歌と踊りとを主体としたショー。レヴュー。
(Oxford Languagesの定義)

まあ、大体合ってた。
ここから急に(ようやく)、レビューの形式で伝えられる「卒業を目前に控えた舞台少女たちが舞台人になっていくためのけじめ」の話としてすべてが入ってきた。

大場ななの覚悟と星見純那の秀才性

最初からこのレビューのシステムに馴染んでいたのは大場ななだけだった。たしかに前半の寮のシーンから、彼女だけが一歩引いたところで冷静なコメントを残していた。このレビューがあることを察していたのだろうか。ななが一番、もう少女でなくなることを意識していたのだろうか。
大場ななはすぐに仲間をバッサバッサと切り倒し、目を覚ました舞台少女たちを本気にさせる。なな本人はどうありたかったんだっけ?進路希望が思い出せない…

大場ななと対を為すのは星見純那だった。純那は進学希望だった子か? 頭でっかちの表現として純那が偉人の名言を引用するのはすごくいい。どのような芸術も、模倣が最初の一歩だし、巨人の肩に立ちたいよな。オベンキョウとしてインプットするのは、努力で一定のレベルまで持っていける。純那は秀才なんだろう。ただ、ななから求められるのは、舞台人としての純那に求められるのは、自分自身の力で板にしがみつく輝きなのだ。インプットばかりではだめだということなのかな。

香子と双葉 魂のデコトラ

そしてなんと言っても見どころの一つが、香子と双葉のデコトラである。なんだこの最高のレビューは。最推しかもしれない。
香子は、日本舞踊の家元?となる覚悟があり、でもそれは永遠に双葉がそばにいることが前提だった。一方双葉にはきっと、香子だけが家元を背負って、自分は陰でフォローするだけではだめだ、自分も舞台人として一人前になってこそ、香子の止まり木にもなれよう、しかしその器は今の自分にはない、といういたたまれなさがあった。お互い依存しているし独占欲の塊なのだが、双葉が相談せずに決めちゃったから少し喧嘩になっちゃった。卒業前に仲直りできてよかったね!
ただ一つ気になる点がある。双葉の主張は「あんたばっかり私を独り占めしてずるい。私にもあんたを独り占めさせて」だと思っていたのだが、もしかして「私にも私を独り占めさせて」な可能性もあるのだろうか。

クロディーヌと真矢 優秀そうな二人

この二人は難しかった……優秀そうだな、という感じはあった。歌と演出最高!とそれだけ楽しんでしまった。
クロディーヌと戦っていた真矢は、文化祭の舞台の脚本を書いてた子? いや、脚本を書いていたのは純那だったかもしれない……今感想を書いて不安になっている。
(追記:公開後に友人から「脚本を書いていたのは名前の付いたモブです」と教えてもらった。以下はただの妄言である。)
クロディーヌが悪魔として「脚本家」を名乗るのは、あえてなんでもできる真矢にそれを意識させるためだったのかと思ってたけど、純那の脚本だったら全く意味のない感想だ。
「私には悪魔を」って、ほかのペアとかに比べてどのような意図だったのか謎だった。悪魔の誘いに乗るようなタマか? それとも、完全無欠すぎるから、悪魔的な存在が必要なのか?

ひかりとまひる 仲悪いの?

ひかりとまひる。こう書くと、対応する存在なんだ、と思わされる名前だ。まひるは、ひかりが華恋から逃げていること、レビューの舞台に立とうとしないことにいら立ちを感じているらしかった。なんで? と思っていたが、この感想をまとめるにあたって、アニメ版のホームページのキャラクター紹介を見て「あぁ…」となってしまった。なるほど、やはり華恋が運命の柱だったんだな。ひかりがいない間、華恋を照らしていたのはまひるだったんだろうか。
まひるはひかりが本当に大嫌いなんだ、やはり舞台少女たちにもいろいろあるんだなと思ったが、ライバルとしてちゃんとしてよ、ということだったらしい。華恋の横に立つならば、ということか。つまり当て馬役?
オリンピックの描写もあったので、今年映画館で観られてよかったなぁと感じたポイントの一つである。

華恋とひかり 二人の世界から、舞台人としての自覚

そして、華恋とひかりである。華恋は昔からまっすぐひかりを見て、ひかりと舞台に立つために舞台人を目指す舞台少女だった。ひかりも同じ夢を目指し、いつかそれが実現しない限り、舞台少女をやる意味はない。ただ自分でも、それを理由に舞台少女であることに歪みを感じていたのだろう。自分からだけひかりに手紙を書くのをいいことに、ひかりの情報をシャットアウトし、「私はひかりちゃんと舞台に立つために頑張っているんだ」と言い聞かせていた。
華恋がただ一つの夢を追いかけて、歌、ダンス、芝居のレッスンに励み、舞台人に限りなく近づいていることをひかりは知っていた。ひかりの「ファンになるのが怖かった」がすごく苦しかった。ひかりは華恋より早い段階で、舞台の主役が一人であることに気づいていたのだろう。華恋と語った幼い夢は甘い幻想であると思い知っていた。だからこそ、この二人の戦うレビューがあった。華恋はその事実を直視してこなかったから、なぜひかりと戦うのかがわからない。手をつないで舞台に出たいのに。そこで星を取られて、冒頭に繋がる。

華恋は卒業を目前に、ひかりなしで舞台人になるビジョンが描けず迷走していた。しかし、夢を目指して積んできた練習は本物であり、彼女を舞台人とする支えは確かにある。レビューを通して、ひかりをライバルであると認識し、舞台人華恋として、アタシ再生産したのだろう。
エンディングはかなりあっさりしていたな。

最後に

宝塚が好きな友人に誘われてレビューを観た経験があったことは、本作を楽しむうえでとても重要だった。ありがとう友よ。

華恋が主役だと思っていたのだが、華恋のシーン(レビュー)が少ない……シード権なの? と不安になっていた、とか、星を取られても理性を失うとかではなかったから、戦いの構成をとるためだけのアイテムだったのだろうか? とか、華恋とひかりはちゃんと収まるべきところに収まったのか? 冒頭の雰囲気は解決した? とか気になる点はたくさんある。ただ、たぶんどれも重要ではないor解決しているし、事細かに説明してしまっては映画・ましてやレビューにならなくなってしまう。

少し忘れていたが、異様なキャラクターとしてキリンがあったのは謎だ。例のオーディション絡みのものなんだろうか。キリンの存在は、序盤はかなりインパクトがあったが、物語が進むにつれて、舞台少女に夢中になり意識から薄れていったため、結局何者か理解できなかった。キリンのメッセージは下記のように受け取った。

舞台人は、観客の望むものを演じなくてはいけない。
このレビューは、演者も観客も舞台少女。舞台少女が自分たちのために演じる歪なレビュー。

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