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よみがえる免許

 
 霧深い村のなか、すべてはぼんやりと真珠色の輝きに満ちていた。おぼろげな影がさし、
そのなかからくっきりと浮かびあがってきたのは、ナイフを腹に刺されたひとりの男……。
「父さん!」
 オレは叫んだ。
 逃げ去る男、追うオレ。しかし男を取り押さえることができなかった。

手がかりは、死人が知っている。
 ネクロマンサーを志したオレは、とある魔術師に弟子入りした。
 修行は厳しかった。あるときは、冷たい滝に打たれて気絶しそうになった。
 あるときは、山奥の道なき道を、息を切らして走り回った。
 魔術師の長すぎる首には、動物の骸骨のネックレスがかかっている。

長い修行生活の後、オレは免許皆伝の身となった。
しかし、その免許は三年更新制で、その三年の間に少しでも
法規に違反していたら、魔術師総会にしめあげられる羽目になる。
オレは、父の死霊を復活させた。

父は、意気地のない表情で、オレの魔法を気にかけていた。
「私は死んだのだ、もう復讐など考えるな」
父は言った。
オレは、納得しなかった。
父から、ムリヤリ犯人の正体と居所を聞きだし、
犯人のもとへと駆けていった。

犯人は、腹黒い顔をした痩せ型だった。
彼は、父の商売敵だった。
父の商売が順風満帆なのをうらやんだのだ。
そんなことで父を殺したのか。
怒りに燃えたオレは、犯人の心臓に、ナイフを突き立てた。

断末魔の叫び、噴き出す血潮。
犯人は死に、オレはそいつを操ることが
できるようになった。

犯人の知識を使って、泥棒をしたり商売道具をダメにしたり。
オレはやりたい放題をしたため、魔術師総会に見つかり、
ネクロマンサー免停となった。

すると、コントロールを失った犯人と
父が、激しいケンカになってしまった。
それを止めようとしたオレは、
自分が死霊となってしまったのだ。
いま、オレは二人の間に挟まれて
グチや悪口を聞かされまくっている。

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