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鬼と村人

赤鬼の子どもが病気になった。鬼は、激怒した。

隣の村へいくための、大きな橋が、濁流の川にかかっている。
赤鬼は、ざんぶと川に飛び込むと、
ギシギシ、ギシギシ、橋の支柱を揺さぶり始めた。
橋は、きしみながら揺れ動く。
たまたま、通りかかった村人が、
叫び声を上げて、村へと走り去っていった。

村人たちが、手にクワやスキを持ってやってきた。
「赤鬼! なんてことをする!」
村長がどなった。
「その橋がなくなったら、隣村へ
作物を売りに行けなくなる!
壊すのはやめろ!」

赤鬼は、手を止めようともしなかった。
ななめの支柱は、バラバラになり、
そのまま川の中に崩れ落ちていった。

「わかったか!」
赤鬼は、ポタポタ髪からしずくをおとした。
すさまじいどら声だったので、
近くの木々がしばらく震え上がったほどだった。

「オレの子どもの復讐だ!」
赤鬼は、壊れた橋を、さらにその太い腕で
崩しながら言った。
「なにが復讐だ、わしらは
なにもやっとらん!」

長老が、力強い声でがなると、
赤鬼は、ギロリと目を剥いた。

「オレの子どもが病気になったのは、
この村で、はやっていた病気をうつされたからだ!
この村がぜんぶ、悪いんだ!」

「乱暴は、ゆるさん!」
ひとりの猛者が、前に進み出てきた。
「赤鬼よ、このままでは、村は亡びてしまう!
そうなるまえに、おまえをやっつけるぞ!」

「まあ、待ちなさい」
長老は、猛者を押しとどめた。
「きみは医者見習いだっただろう。
赤鬼の子どもを診てやりなさい」

猛者は、
「そんな甘いことを」と
長老と激しい口論になった。
「憎しみからは、何も生まれない。
悪に対して善を持って勝利するのだ」
長老は言った。

最終的に猛者は折れ、
鬼の子どもは恢復した。
感謝した鬼は橋をかけなおしたのだった。

キーワードは(鬼+お医者さん)

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