SSnote #001「ドッキリダイエット」

#ショートショートnote

「ドッキリダイエット」
その山寺へ行けば、20㎏の減量も夢じゃない。
体重80㎏、身長158㎞のぼくは、
喜んでその山寺へ行った。うっそうとした山奥の、薄寒い寺の中、ぼくは
寺の中をながめた。
すでに夕暮れちかい山の中で、お寺の構えは重厚だった。すすけたような太い柱を
支える木組も、風雨に洗われて、あちこちガタが来ている。まるで骨がそのまま、
剥き出しになったようだ。
木製の寺内には、寂寞としたお香が焚かれ、
いかにも妖怪が出そうな雰囲気。
ちょっと歩くと、陰鬱な坊さんたちが、暗い表情で行き来している。
ぼくは、八畳間に座った。

まずは、坐禅を組めという。
正座をして目を閉じると、背中にぴとり、となにか冷たいモノが……。
ヒャッと身を縮める。
首筋にぞくぞくと、悪寒が走った。
ふりかえると、ニヤニヤと坊さんが鉛色のこんにゃくを持っている。
ぐにゃりと、こんにゃくが揺れるたびに、首筋に寒気が走った。
「な、なにをするんですか!」
ぼくが驚いて言うと、

耳元で坊さんがささやく。
「雑念をはらいなさーい」
なんて臭い息なんだろう。なにを食ってたら、こんな息になるんだ。
辛抱して、坐禅を組み続ける。

ひととおり、修行が済んで、寺の中を掃除する。
乾いた雑巾で、廊下や柱などを拭きとると、
なにか、目に見えないものが走り回っている。
上っているはずなのに、下へと動く廊下に仰天して手を放すと、
雑巾がフワフワと浮いた。

出される食事は蜂の子、イナゴばかり。ミイラ化していて気持ち悪い。
甘いばかりのお茶が出され、ご飯はパラパラしていた。
山奥にあるお化け屋敷で運動することになっており、そのお化け屋敷は
ゴミが散らかり、床は突然揺れ動く。

お風呂に入るとき、暖かい湯気の中で、ぼさぼさの髪の長い女が、
あばただらけの顔をこちらに向けている。
気の休まる暇がない。
とうとうストレスで20㎏減量した。
ネットで炎上させてやる。

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