あんさんぶるスターズ!第一部メインストーリー読了に寄せて
皇帝を殺したのは友情でも努力でもなく「システム」だった────「命がけの戦争ごっこ」であり、政治的な結末を迎えるスマホゲーム・あんさんぶるスターズに気が狂いそう
※以前は「乙女ゲーム」と記載していましたが修正しました。乙女ゲームを男性キャラがメイン登場人物で女性キャラが操作キャラのゲームだと思ってました、教えて頂きありがとうございます。
注意事項
本投稿はあんさんぶるスターズ!(以下あんスタ)第一部メインストーリー(以下第一部)を読了して発狂しそうな筆者が精神を落ち着かせるために執筆しています。
そのため「支離滅裂な文章」「第一部メインストーリーのネタバレ」「安定しない情緒」を含んでいます。
誰か助けてくれ。
「命がけの戦争ごっこ」
第一部にて繰り広げられたDDDはまごうことなく「アイドルたちがその技量を競い合う大会」ではなく「命がけの戦争ごっこ」であった。
純粋に芸術的技能を競い合うのであれば、外的要因は少しでも減らすべきだ。純粋に技能を発揮できる場所を作るべきだった。けれどもDDDはそうではなかった。
自分にとって最も実力を発揮できるステージを確保する朔間零。
体力を消耗させるという作戦に出る流星隊と2wink。
相手の戦力を物理的に削ぐ瀬名泉。
地の利を取り物量的アドバンテージを確保しにかかり、その上で初めて技能を用いて敵を攻略しにかかる。これを戦争と言わずに何を戦争と言えばいいのだろう。
しかしそれでいてこのDDDは決して戦争ではない。何故ならばこの戦争にはルールが存在するからだ。
現実の戦争にも確かにルールはある。化学兵器や終戦後も民間人の生活を脅かす兵器の使用禁止などがそれに該当する。けれども、本当に戦争が勃発した際、それを律儀に守る国家はいないだろう。
何故なら戦争は究極的に言えば目的を果たすための道具以外の何物でもないからだ。
目的を果たせない道具の、何の意味があるだろう。野菜を切ることが出来ない、カバーをつけたままの包丁に何の意味があるだろう。
けれどもDDDは違う。一人法律を犯した人間はいるが、参戦者全員がルールに則り、相手がルールを守ることを前提として戦っていた。確かにこれは戦争だが、戦争ではない────命をかけていた、けれども守るべきルールがある遊び、戦争ごっこだった。
それが端的に表れているのが「延長戦」というルールだ。得票差が延長戦範囲内であれば必ず延長戦が実施される。現実の戦争でそんなものはない。実際に延長戦を行おうとすれば、そこにあるのは滅亡だけだ。
そして戦争にはないこの「延長戦」という「システム」が、皇帝────天祥院英智にとどめを刺した。
「システム」に殺された皇帝
「延長戦」のルールは極めて厳格だった。一票でも、たった一票であっても、得票差が延長戦範囲内に入ってしまえば、必ず延長戦は行われる。その結果、延長戦を棄権せざるを得なかった天祥院英智は敗北した。
けれども、彼らは得票数では間違いなく勝利している。
この得票数と勝敗が直結しない状況を筆者は現実で見たことがある。2014年のアメリカ大統領選挙だ。あの選挙、国民からの投票では、ヒラリー・クリントン元指名大統領候補の方が得票数が多かった。それならば何故ドナルド・トランプ氏が大統領になったのか。
そういう「システム」だったからだ。
アメリカ大統領選挙は直接国民が大統領を選ぶのではない。各州に「選挙人」と呼ばれる人々が存在し、この選挙人たちが大統領を選ぶ。「選挙人」は538人おり、各州に人口に応じて割り当てられている。
国民はどちらの大統領候補者が良いか、各州ごとに投票する。その州で勝利した候補者は、その州の「選挙人」を総取り出来る。そして州によって割り当てられた「選挙人」の人数は異なる。そのため割り当てられた「選挙人」が多い州(人口が多い州に多く割り当てられる)を効率よく抑えられれば、そう得票数が少なくとも勝利出来る。
そういうシステムが、得票数に関係なく、彼を大統領にした。
そういうシステムが、得票数に関係なく、天祥院英智を敗北させた。
てっきり自分は仲間が敵の体力を削り、最後にTricksterが全力を発揮し、観客に選ばれ勝利する────そういうエンドになるのだと思っていた。あんスタのペンライトによる投票は明らかに直接民主制だ。直接民主制によって選ばれた存在が皇帝を倒す。きれいで、誰もが納得するエンドだろう。
いやそもそも絡め手を使っている時点できれいかどうかは知らない。
自分はあんスタを、一人の英雄が腐敗した国を立て直し、されど自らが皇帝となってしまい、最後には追い出されるフランス革命とナポレオンをなぞるようなシナリオだと捉えていた。そう考えれば最後に『皇帝』が『直接民主制』によって追放される流れは実に理にかなっている。
でも違った。
得票数で、間違いなくTricksterは敗北し、fineは勝利した。
流星隊が、2winkが、UNDEADが、Tricksterが押し込んだギロチンの刃は、かろうじて皇帝には届いていなかった。友情や努力では、ほんの少しだけ、ギロチンの刃は足りなかった。
それを届かせたのは、「延長戦」というシステムだった。
たった一票という差を決して見落とさない、ルールという厳格な存在だった。
それを天祥院英智は「奇跡」と呼んだ。
This is the government of the law, not of men.
ここは人の政府ではなく、法律の政府である。
友情でも努力でもなくシステムが、アイドルとしての技量ではなく戦争において地の利と物量的アドバンテージを取り、相手を戦う前に弱体化させる政治が、天祥院英智を敗北させた。
それでいいのか。
筆者の気が狂いそうな理由がわかった、それでいいのか天祥院英智。
アイドルになりたかったと言った彼が負けたのは、アイドルでも、友情でも、努力でもなく、システムと政治だった。
それでいいのか、天祥院英智‥‥‥どうして‥‥‥
それならまだ、まだ得票数で負けた方が、観客が彼らの友情に魅せられて勝った方が、天祥院英智にとっては、よかったのではないか。
というか、そういう風に終わらせることも出来たはずだ。そういう物語としてもよかったはずだ。大団円だったはずだ。
でも天祥院英智は、得票数で勝って、システムによって負けた。
筆者は「追憶*3人の魔法使い」を読了している。ユニット制度を作り上げ、それによって五奇人を封殺した皇帝が、システムによってとどめを刺されたこのメインストーリーを、どう咀嚼すればいい。
因果応報としては綺麗に回るかもしれない。天祥院英智がそれに気がつかないようなキャラクターとして設定されているとは思えない。恐らく全て理解した上でこれを天祥院英智は「奇跡」と呼んだ。
こんな、こんなあまりにあまりなストーリーを、何故「男子高校生アイドル」でやったんだあんスタ‥‥‥
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