交流企画で小説を書く理由・3

自己顕示欲に承認欲求? 難しい漢字を並べたくなるのは文字書きの性、企画歴5年が難しく考えてみます。


はじめましての方ははじめまして。
ご存知の方はこんにちは。
お前の文章なんぞ読みたくねえ! という方はさようなら。
好きな食べ物はシーフードグラタン、世界観は滅んだ世界、シチュエーションは拘束、キャラ要素は女装男子、眠り熊と申します。

前回、交流小説で小説を書く理由・2では、「交流企画で小説を書くメリット」について触れました。

今回はその逆、「交流企画で小説を書くデメリット」についてお話ししたいと思います。ただしここでは対人トラブルについては触れませんのであしからず。ここで焦点を当てるのは、『小説を書く』メリットデメリットです。『他人と何かをする』メリットデメリットではありません。

長々しい前置きはさておき、交流企画で小説を書くデメリットは、大きく分けて2つです。

1. 『自由』には決して書けない
2. 打ち合わせに時間がかかる

さて、前回のメリットより若干わかりにくい内容です。
そうでなくても本投稿のモットーはシンプルイズワースト。掘り下げて行きましょう。

1. 『自由』には決して書けない

小説を書く、ということは、とても自由なことです。

ノンフィクションを謳うなら話は別ですが、そうでないなら何だって出来るのが小説です。空が青色でも桃色でも自由。男の子が宇宙へと飛び立っても女の子が空から降ってきても自由。そして反倫理的なことを行うのも自由です。昔読んだ小説から台詞を思い出すのであれば、こうでしょう。

『小説の中では何人殺しても罪に問われない』

ところが、これが一切通用しないのが交流企画です。

まず世界観。これはその企画の主催から提示されます。

主催によって世界観の詰め方は様々で、きっちり設定を詰めてものすごく精密なマップや用語集を準備する主催もいれば、「そこ決まってません! でもそれ面白いから採用!」とその場のノリで世界観設定を増やしていくタイプの主催もいます。

ただどちらも共通しているのは、最後にどれを『公式』、或いは小説の中において『真実』とするのか、それを決めるのは主催であること。

小説を書く、あなたではないのです。

勿論、それにはちゃんとした理由があります。ひとつめは「参加者同士で決めようとすると時間がかかるから」。企画によっては何十人もの参加者が何人ものキャラクターを生み出していることがある交流企画。全員が納得する設定を話し合いで決めようとしたら、いつまでたっても小説が書けません。主催が「うちではこうします」と言ったほうがはるかに早い。
ふたつめは「その世界観を作ったのは主催だから」。一番その世界観に詳しいのもさることながら、その世界自体、あなたの作品ではなく主催の作品です。版権交流企画と言って、既に存在するゲームや漫画、小説をもとにした交流企画もありますが、こちらにしても「交流企画がしやすいよう整えたのは主催だから」という理由があります。

交流企画に参加して小説を書く以上、あなたはあなたの小説の世界観を、自由に書くことは出来ないのです。

自由にならないのはそこだけではありません。他の方が投稿されたキャラクターとの交流、これもまた自由ではありません。

基本的に交流企画では、まず初めにキャラクターシート、と呼ばれる投稿を行います。これは「この企画にこういうキャラクターで参加します」という住民登録であり、同時に「このキャラクターはこういう設定があるこういう子です」というキャラクター設定集でもあります。その形式は企画によって様々ですが、共通していることは1つ。

あなたは、小説を書く際その設定を無視して、自由に書いてはいけません。

宇宙には行けないという設定がある子に「宇宙旅行から帰ってきた!」と言わせてはいけませんし、空から降りてこれないと設定が書いてある子にお洒落な通りを散歩させてはいけません。宇宙旅行から帰ってくるのもお洒落な通りを散歩するのも小説としては面白いかもしれませんが、そのキャラクターを作ったのはあなたではないのです。

ちなみにこの設定無視、二大対人トラブル原因の一つでもあります。そう、『二大』対人トラブル原因。もうひとつあるの? と思ったあなた。それが最後の「『自由』に書けない」です。

交流企画では、相手のキャラクターに、そのキャラクターを作った方が嫌がることを『自由』にしてはいけません。

殺人はもちろんのこと、怪我、暴言、無視、特定の話題などなど。『そのキャラクターを作った方が嫌がること』は多岐に渡り、企画によってはキャラクターシートにそれ専用の枠があることもあります。

難しいのはこれが『そのキャラクターを作った方が嫌がること』であること。そのキャラクターを作った方がGOサインを出しているのであれば、殺人、怪我、暴言、無視、特定の話題などなど、キャラクター自身は断固拒否していても『自由』に書いていい。

なぜなら、そのキャラクターを作ったのはあなたではないからです。

交流企画は根本的に、誰かの作ったものを借りて小説を書く試みです。
相手の作ったものと、相手自身を尊重すること。
そこを失念すると、誰も『交流』してくれなくなります。

何れにせよ、交流企画では決して『自由』に書けない、というのは伝わったでしょうか。

2. 打ち合わせに時間がかかる

我々はエスパーではありません。加えて、キャラクターシートにありとあらゆる情報は載せる事が出来ません。特に企画が始まったばかりの頃は、一体何が『そのキャラクターを作った方が嫌がること』なのか、どうキャラクターを動かすのが相手を尊重していることになるのか、手探りの状態。

しかし、ここにそれらの問題を解決する画期的な手段があります。

相手に、直接、聞けば良いのです。

Pixivのフィードやメッセージ、TwitterのリプライやDM、はたまたツイキャスなど、小説作品の外で、小説を書く人同士が質問をしあったり相談をすることを外部交流と呼びます。

企画によっては意図的にこの外部交流を一部禁止/完全に禁止しているところもありますが、大概の企画では外部交流OK、場合によっては推奨していることも珍しくありません。
外部交流での質問や相談によってある程度のトラブルが防げるのであれば、それも自明の理と言えましょう(その外部交流が原因でトラブルが起きないとは言ってない)。

またこの外部交流、大変楽しいものです。自分の作ったキャラクターと、自分が好きなキャラクターのことを、誰かと心ゆくまで話し合い、語り合う。それによって新しいアイディアが生まれることも多々ありますし、あの人が書いている、と思うとやる気が出てくることだってあります、と書くと、いいことずくめな気もしますが。

あまりに楽しすぎて、そのまま小説を書く時間すら外部交流に当ててしまうのが外部交流です。

それを差し引いても、こうした打ち合わせには時間がかかります。自分の要望を伝え、相手の意見を聞き、それに自分の要望をすり合わせ、また相手に聞く。それが終わらなければ、肝心の小説を書く、に移る事が出来ません。

『小説を書く』ことを考えるなら、明確にデメリットと言えるでしょう。

まとめ

どうして、わざわざ、「交流企画で」、小説を書くのか?

その答えを探るべく、なるべく難しく、交流企画で小説を書くメリットとデメリットを書き連ねてまいりましたが、お楽しみ頂けましたでしょうか。

締切があり、必ず誰かに読んでもらえるメリット。

『自由』には決して書けない上、打ち合わせに時間がかかるデメリット。

そのどちらも、交流企画という場の特徴です。片方だけを受け入れて、もう片方を受け入れない、ということは出来ません。

けれども、だからこそ、交流企画というものは楽しいのかもしれませんね。

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