3.11でできたのに 1.1でなぜできない

2024/1/1 能登半島地震発災。
2011.3.11、その前の1995.1.17と比較しても復興へのスタートダッシュが遅く感じます。いまだに孤立集落があり、避難所がどうなっているのかもよくわからないところもあるようです。道路が損壊していて自動車での行き来が妨げられていることが大きな原因でしょう。電気の復旧、上下水道の復旧には車での進入が必須です。海から入れるにしても、港の隆起があり、陸楊艦などもともと少ないわけで、携帯電話の基地車やユンボが順次あげられているところでしょう。

さて、なぜ道路復旧が遅いのか?ですが、土木の建設業者が施工するというのが大部分であり、発注者から施工者迄の流れがうまくいっていないのだと考えます。

従事者が少ない

3.11は2011年平成23年 1.17は1995年平成7年です。
平成7年の建設業従事者は 650万人
平成23年の建設業従事者は 500万人
令和4年の段階で479万人とされています。
令和6年の今 470万人ぐらいなのでしょうか?
令和5年の10月に インボイスと言う制度が始まり、この機会で廃業した一人親方もいるわけで、令和4年の統計には含まれていないことでしょう。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001602250.pdf

減った部分のほとんどが、おそらく高齢の熟練技能者。

直近の2011年東日本大震災と比較しても21万人ほどの従事者の減があります。1995年と比較すれば171万人の減少です。

石川県の人口が111万人ほどですから、阪神大震災時代から石川県の人口を上回る数が消滅したことになります。

高齢化で退職したということがまずありますが、建設投資、特に公共投資である土木工事が少なくなり、仕事がないから従業員を維持できない、会社の存続が出来ないとなってしまいます。

仕事がなければ、固定費割合が増え、重機を維持することなく借りればよいやと言う流れになります。実際、レンタカーみたいに重機を借りてくることは多いと思います。足場などの仮設資材や安全維持の標識などもレンタルと言うか借りてくることになります。
リースなら、物件はリース先にずっとありますが、レンタルだと、工事が終われば返すという流れです。

その分、レンタル屋さんが儲かることにはなります。足場レンタル屋さんが大儲けしているというお話は結構聞きます。建設機械のレンタル屋さんも儲かっているのではないでしょうか?

一方、地方の土木業者は少ない公共工事をやるわけで、その中には除雪作業もあります。その、除雪に使う重機もレンタルすることがあるのかもしれません。他の季節に他の用途で使えるグレーダーの仕事がなければ、除雪車を借りてくることが得策です。

背骨がまだ

2011.3.11は東北の内陸部の被害が少なく、背骨のような東北自動車道から櫛の歯のように沿岸部へ道路啓開していけばよかったです。
今回2024/1/1発災の能登半島地震の場合、そもそもの背骨に当たる「のと里山海道」「能越道」自体が被災し、その道路啓開にまずあたり、そののちに背骨の構築というのが今の段階なのかなと思います。

そもそも、輪島道路はのと空港の先までは行ってますが、輪島にはいまだ到達しておらず、穴水や珠洲に至っては、高規格道路がないというのが現実です。沿岸部の国道はがけ崩れがあり、その土砂を除去しないと仮設道路すら作れない。除去した土砂をダンプで運ぶにしても、そのダンプをどこから持ってくるんだというお話です。

重機集めよう

日本中の重機を集めて作業するにしても、重機はトレーラーで運びます。車両総重量20tの制限を守ってもいまだに通れる道路は少ないでしょうから運べるところは限定されます。

仮に、トレーラー運賃かけて重機を持ってきても、誰が操作するのか?ということになります。重機の操作は 例えば、機体質量3t以上の車両系建設機械(整地等)の運転作業に従事する方は、労働安全衛生法に基づく運転技能講習を修了しなければならないことが義務づけられています。
そんな有資格者が現地にいないのなら、オペレーターともで派遣しなければなりません。その宿舎も必要ですし、食事もいります。それを避難所の支援物資に頼るわけにはいきません。

となれば、自ら糧食や宿泊も兵站として持ってくることのできる自衛隊でなければ重機作業は難しいでしょう。

金沢から通いで仕事ができるのなら、宿泊場所も確保できましょうが、片道3時間かかれば、現地で作業できる時間が限られてしまいます。しかも、4月からは残業時間の規制が始まり突貫でやるわけにはいかなくなります。

それでも、全国から行く会社があるでしょう。当然、当地の仕事を犠牲にしていくわけです。比率から考えれば分母の大きな首都圏の工事を犠牲にすれば出せるパワーは大きなものになりましょう。

受注単価は正当か?

国土交通省直轄の作業を請け負うには、公共工事の受注資格が必要で、どんな単価で発注されて、そもそも、何をやるかの指示というか設計がなければ動けない時代になっています。とりあえず、先に作業して、金は後からどうにかするという時代ではありません。公共の場合、公平な発注のためにも本来は入札が必要です。こういう事態ですから特命随意契約でも良いとは思いますが、それを受ける業者がいるのかどうか?です。

昨今の公共工事の不成立は、材料費の高騰を反映できていない 少し前の時代の単価表で積算されているのに、今の市況は**%上がっているという乖離がひどいからでしょう。物価スライドという仕組みが動かない限り、今の材料費が賄えなければ受注できずに入札辞退になるだけのことです。

いまさら、建設業従事者が増えることはないので、この現状でどう切り回すのか?道路啓開をどこからどの順番でやるのか?は行政が考えるべき課題です。


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