見出し画像

天然素材のグランド作りにこだわる理由。そしてこれから。その2

ヨーロッパで人工芝が作られ始めたのが1960年代。当時はスポーツ用では無く、室内カーペットの一種として作られていた。
人工芝を作る技術は、カーペット作りと変わらない。カーペットの歴史については良く知らないが、かなり古い時代からあるわけだから、1960年代に人工芝が作られていたとしても不思議は無く、オランダのベタップ社などもそうだ。
オランダは繊維工業が盛んで、人工芝の糸を作るメーカーとして、テンカテ社などが有名です。

例えば。人工芝会社には色々なタイプがあるります。原料から糸を作り、人工芝を作る会社も有れば、テンカテ社や、ドイツのポリタン社のような糸を作るメーカーから、人工芝糸を仕入れて人工芝を作る会社もある。
日本には原料から糸を作り、人工芝を作る会社も無い、いわゆる人工芝メーカーと言う会社は無い。
人工芝を輸入販売する、商社が存在するだけである。また、人工芝を半製品で購入して、僅かに手を加えて製品化する会社があるくらいで、自ら製品を開発するような会社は無いのが現状なのです。

人工芝の製造機械

人工芝の主な原料は、ポリエチレンやポリプロピレン。この二つ配合具合により耐久性や品質が変わる。また、同じPE、PPの製品原料にも品質ランクが有る。つまり、同じダイヤモンドでも質に違いがあることと同じようなことです。
同じ素材で作られていても、中国産の糸で作られた人工芝は質が悪い。
簡単に説明すると、原料純度の差と言える。
ポリエチレンはエチレンを原料として作られるプラスチック素材。ポリプロピレンは炭素と水素から作られるプラスチック素材。
それぞれに短所と長所がある。例えば、ポリプロピレンは強度はあるもの、耐紫外線に弱く劣化する。
一方でポリエチレンは、耐寒性が高く防水性に優れている。
それぞれの特徴を活かして配合を研究し、いわゆるプラスチックが作られている。

中国は元々、プラスチック製品の質が悪く、原料からプラスチックを作ると言うより、日本から廃棄プラスチックを輸入し、リサイクル原料から製品を作る方が品質の良い製品ができていたのです。

人工芝の基布とバッキング材

日本から廃棄プラスチックを輸入し、プラスチック製品の原料を生産する。
その原料から作られた糸で人工芝を作ると言う具合だ。
中国製品の品質の悪さは、製造技術の問題では無く、製品原料の品質の悪さなのです。
人工芝を作るのに必要なものは、糸だけでは無い。
糸を縫い付ける、基布と言われる布も大切になります。
この素材もプラスチックから作られるのですが、見た目は同じでも品質は様々有ります。

バッキング材の劣化による剥がれ

人工芝は基布に縫い付けした糸を樹脂で固定して作る。
この固定樹脂素材にポリエチレンやポリウレタンが使われる。
ポリウレタンを使う理由としては接着性の強度に有る。しかしながら、ポリウレタンの弱点は水分と熱に弱いこと。
水分と熱によって数年で経年劣化するのがポリウレタンなのです。
私がアスファルト施工を薦めない理由の一つとして、排水機能の悪さと、アスファルトの熱による人工芝の劣化が有ります。バッキングに使われるポリウレタン樹脂が劣化をすると、瞬く間に人工芝の抜けが始まる。

近年、人工芝の質をよく知らずに購入してしまう例がよくある。
中国人工芝メーカーの話を鵜呑みにし、見た目だけで購入すると、とんでもないことになる。本来スポーツには使えない人工芝が平然と販売されている。観賞用の人工芝をスポーツ用途に販売する業者の存在は正直いただけない。

観賞用とスポーツ用の人工芝は、人工芝に使われる糸も違えば、基布の品質もバッキング材も違う。ふかふかで柔らかいことで勘違いしてしまい、購入してしまう例が後を絶たない。それはほぼ観賞用の人工芝です。
人工芝に使われる糸がそもそも違うのです。
まずはよく滑る。スポーツなどで使うのはとんでもない話しです。
数年で糸はボロボロになり、基布は裂けてしまう。まるで天然芝なんて見えたらとんでもないことになるのです。

また、「紫外線抑制効果、帯電防止、FIFA認定」中国で作られた人工芝は、殆どが誇大広告を使う。
こうした広告を鵜呑みにして俄か業者が販売してしまう例が跡を絶たない。
業者にしてみれば、中国産は安く仕入れられ、安易に入手が可能だから、販売しやすい。

効果について言えば、効果1〜100まで有るとすれば、その効果の数値は1でも嘘にはならない。
FIFA国際サッカー連盟認定工場と言うものも存在しないのだが、しかしながら中国にはFIFA国際サッカー連盟認定工場が100近く存在する。
確かにFIFAには推奨工場と言うのは有るが、世界でも20社程度しか無いのが本当なのです。

国際展示会のFIFAブース

私が中国TAISHANの人工芝を使う場合は限られる。本当に予算が無く、それでもとりあえず人工芝グランドを作りたい、低予算で作りたいと言う場合のみに使用することが有ります。

TAISHANはFIFAクオリティの人工芝を作れる工場を持つ、中国最大のスポーツグループです。
製造する人工芝の数は、年間で1000万平米。簡単に言うと、サッカーグランド1000面。
全てがスポーツ用途ではないが、殆どは大陸用の人工芝。品質が劣っても、雨の少ない大陸なら劣化は遅いので、まだ使えるのです。

TAISHAN人工芝会社の社長と
TAISHANの会長、社長一家と

私とビャン一家の付き合いは20年に成る。中国最大のスポーツ企業で有り、オリンピックのスポンサーもロンドン五輪以降継続する企業。
国際体操、国際柔道、国際陸上大会のスポンサーでも有る。
そんなTAISHANでさえ、ヨーロッパの人工芝技術には追いついていない。
最近、日本の大手人工芝販売会社も中国産を販売施工している。抜けや、色落ちが酷く全面張り替え保証をしていると聞いた。
安いだけで仕入れ販売をするとそう成る。
大手のホームセンターで販売する人工芝もスポーツには使えない。しかしFIFA国際サッカー連盟認定工場を謳っているから笑えない。

東京オリンピック前の日本体育大学視察
トーマスバッハ会長の名誉教授授与式でビャン会長と

日本でめ有名な企業。白物家電を販売する企業が人工芝販売をスタートしている。
正直言って、クオリティは低い。彼らの目的は企業利益有るのみ。
もちろん、彼らが扱うのは安い中国産人工芝だ。
選手の安全や環境保護など微塵も考えては無いだろう。

バッキングの劣化による糸抜け

まとめるとこう成る。
つまり、かつて日本は廃棄プラスチックを大量に中国や東南アジアに輸出をしていた。ゴミを他国に輸出していたのです。
そのゴミを原料に作られた製品が日本に大量に輸入され、海洋汚染や自然破壊をしているのです。
100均で販売される商品の殆どは、数年で劣化しゴミになります。
大手家具チェーンや大手ホームセンター、そして大手ファンシー家電企業など、品質よりも販売利益に拘る会社が、日本の自然を破壊しているのです。
海洋ゴミの30%は人工芝の破片。
こうした現状を少しでも変える為に、私たちは天然素材、自然由来にこだわるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?