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TBM(Technology Business Management)とは何か?

1.はじめに

株式会社Asikaze代表の平井です。
この記事を見ていただいている皆様は、おそらくITファイナンスに関わる方や、TBMを導入される担当者の方々かと思います。

日本語の情報はまだまだ少ないので、TBMとは何か?ITファイナンスを高度化するにはどのようにすればよいか?など記事である程度わかりやすくお伝えできればと思います。



2.TBMの概要

TBMとは

TBM(Technology Business Management)とは何かを一言で表現すると「Technologyによって生み出されるビジネス価値の最大化を目的としたITファイナンス高度化のための方法論」という答えになります。
また、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)などと同様の略称です。

その内容はとても一言で表現できるものではありませんが、なるべく簡略にこの記事で説明ができればと思います。

TBMとは何ができるのか

TBMの全体像

TBMを用いると「ITファイナンスを高度化することができる」という答えになってしまうのですが、もう少し具体的にお伝えすると「共通言語化によって企業内部におけるIT部門とその他の部間の分断の解消を目指すことができる」と言うことができます。

企業においてIT部門(情報システム部門)とは、IT資産・インフラの運用管理、アプリケーションの開発保守などの機能を中心とする間接部門であり、社内の各部門と関わり合いを持ちます。この各部門とIT部門との間に隔たりがあり、それがDX推進の大きな懸念となっています。

ビジネス部門との分断、ファイナンス部門との分断、経営との分断、それぞれの部門間でテクノロジーに対する考え方、捉え方が異なることにより、分断が生まれています。

IT部門と他部門の分断

Technologyによって生み出されるビジネス価値最大化の実現のためには、このような部門間の分断を防ぎ、IT、ビジネス、ファイナンス部門が協業していく必要があります。
そのためには部門を超えた「共通言語化」によりIT投資を可視化し、納得感を高め、IT投資の説明責任の仕組みを確立することが必要です。
それを実現するのがTBM方法論、ということです。

TBMによって解決していくことができる

3.TBMの2つの柱

IT部門が目指すべきゴール

Technologyによって生み出されるビジネス価値の最大化を目的としたITファイナンス高度化のために、IT部門は何を目指すべきか?
それは、「運用費の継続的改善」と「新規開発投資の最適化」の2つです。

IT部門が目指すべきゴール/TBMの2つの柱

1,運用費の継続的削減

こちらは誰もがイメージしやすいものかと思います。
不必要な保守運用費を継続的に削減し、削減した分を新規開発投資へ回すことを目指します。

2,新規開発投資の最適化

こちらは、無駄な新規開発を乱発し、経費の増加を防ぐことを目指します。
TBM方法論に含まれる、アプリのTCO把握や最適化、配賦と課金の仕組みを用いて継続的に新規開発投資を最適化していくことが可能になります。

4.TBMを構成する5つの要素

TBM Council

TBMには TBM Councilと呼ばれるNPO団体が存在し、米国の錚々たる企業のCIOがメンバーに名を連ね、会員数は1万人を超える規模の組織です。
この目的は、「TBMの発展を目指す非営利の専門組織であり、TBMとITプロフェッショナルの発展のために、コラボレーション、標準化、教育に重点を置く」となっています。
ここで年4回ボードメンバーが集まり、テクノロジーの進化や発生した課題の解決、方法論自体の標準化、アップデートが行われています。

5つの構成要素

そして、TBM Council のパートナーであるKPMG, EY, Deloitte, ISG とMcKinsey がTBM の実装について数年間にわたり議論を重ね、体系立った方法論として確立されました。
その体系化されたTBMは、TBMフレームワークを中心とし、それを補完する下記4つの要素から構成されております。
各内容はまた別の記事で説明いたします。

  • TBMフレームワーク

  • TBMタクソノミー

  • TBMモデル

  • TBMメトリクス

  • TBMシステム


5.テクノロジーによって生み出されるビジネス価値の最大化

テクノロジーによって生み出されるビジネス価値の最大化に向けて、TBMでは4つの規律が存在します。
一番上に目指すべきゴールがあり、その下に2,3,4,の規律、さらにそれぞれ9つの矢羽根、そしてそれを支える可視化があります。

青背景が4つの規律。1から4へ順番に進めていく。

1,最適な形での可視化

TBMにおける「可視化」とは、ツールによる「見える化」にとどまらず、ITコストや効果をステークホルダーに公開し、意思決定者に必要な情報を提示し、IT導入を促進するという意味で用いています。
ここで述べるステークホルダーとは、ビジネス部門やファイナンス部門、経営を指し、それぞれお互いに理解できる形に言語化し、Meatualなコミュニケーションを促します。
この可視化の在り方を示したものが、「TBMタクソノミー」です。

また、可視化にはデータが必要です。
TBMタクソノミーを基にデータを整理する際、一定の分類と配賦を行います。そのルールを「TBMモデル」と呼びます。

2,IT予算と統制

ここは、予算の策定、予算配賦、予実分析の3ステップからなります。
IT予算を策定するプロセスと、IT予算の消費状況を管理するプロセスにおいて価値を提供します。

3,ITコスト最適化

ここは、インフラ・ベンダー・データセンタの最適化、アプリのTCO・利用状況の把握、アプリケーションの最適化、の3ステップからなります。
また別の記事にて説明いたします。

4,ステークホルダーとの関係性改善

ここは、ビジネス部門のIT消費支出把握、課金額算出、課金・請求の3ステップからなります。
こちらも別の記事にて説明いたします。

6.さいごに

いかがでしたでしょうか。ここまでTBMの大枠を簡単に解説してきました。
複雑な概念だとは思いますが、まずは「TBMとはITファイナンス高度化のための方法論」だと理解いただけると幸いです。
それぞれの詳細についてはまた次回の記事でご紹介します。

・参考書籍