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音楽劇 浅草キッドの感想(二幕)

タケと井上とマーキーの3人への思い入れが強くて、その3人のシーンに少し?割と?偏った感想になっています。まとめられなくて文字数がやばい。


二幕は一幕ラストからの1年後。
高山に続いて兼子もフランス座、深見師匠の元を去って違うコントの師匠(熊さん?)に師事してる。
そこでも芽が出ない兼子が、今も深見師匠を慕ってるのいい〜。
一方で兼子の新しい相方、こちらも多分本気で熊さんを慕ってて、コントをやめて漫才を始める事に激怒して包丁を持ち出す熊さんに、「何本でも指持ってってください!」って言える所がすごい。
これは極端だけど師匠と弟子の関係性ってそれくらい強いものなのかもって。


そして兼子が去った後のフランス座では、深見師匠とタケがコントでアドリブ飛ばしまくってる楽しそうな声が舞台袖まで聞こえてきてる。
老人の格好で待機してたマーキーが、師匠とタケのコントが延びたせいで自分の出番ない回ってこなくて不貞腐れたりして。
(マーキーが出来なかったコントは原作にも載ってる「中気」というコントらしく、かなり過激で今は絶対出来ない内容でびっくりする。めちゃくちゃ時代を感じる)

そんな中踊り子のひとみさんが、強引にストリップの曲に切り替えて舞台に出ていく時の「客も少ないのに何をダラダラ」って言い方が胸に刺さる……。その瞬間もコント中の師匠とタケの楽しそうな声が聞こえてくるだけに余計に。

急に曲を変えられて、慌ててコントを〆て戻ってきた師匠とタケが、

師匠「おいおいびっくりしたじゃねえかよ」
タケ「いい加減にしろって言っとけよ」

みたいな文句を言うんだけど、ある公演(私が観た中では多分大阪の11/4らへん?)から、山本耕史さんのアドリブが入り出して。

師匠「おいおい、びっくりどっきりがっくりくりくりだよ!」

これを真顔で言うのがめっちゃ面白くて😂林遣都さんも笑っちゃってたのが更に笑える。
それでも翌日の大阪楽の11/5公演では、同じくアドリブで笑わせてくれる山本耕史さんに対して林遣都さんが、

タケ「いい加減にしろって、言っとけやっとけほっとけ⚪︎×とけ△×とけよ」

って噛みながら応戦してて😂
でもその後「くりくりってなんすか」って笑いながら林遣都さんに突っ込まれて山本耕史さんも笑っちゃってるのが、あーー舞台上で生まれたやりとりを観てる楽しい〜〜ってなったのがめちゃくちゃ印象に残ってます!!

その後のマーキー。
師匠との麻雀は乗り気じゃ無いけど、タケとの飲みは「ん〜〜!🥴って行きたそうな様子が正直で可愛いやつだなって。
この頃からもうマーキーはタケのほうをより慕ってたのかなーってのがわかる気がする。

飲みに行こうとするタケとマーキーを遮る井上の「行くなよッ!!!!」が好き。何回か一緒に観に行った人たちも、ここの井上の言い方好き〜って言ってた。


井上がタケの引越し荷物が乗った荷車を引いて、

井上「今日はお前の引っ越しだろ!」
タケ「あー!そうだった!」


までの流れが好き。
そしてここの、引っ越しのテーマへの導入部分がめっちゃ好き!!幕が上がって浅草の街並みと住人が現れるところ!!!

この曲のイントロ中に、コントで使ってた小道具の片付けをセーラー服の踊り子にお願いするタケが、手間賃としてタバコを一本渡したり、日によっては箱ごと渡したりしてるやり取りのジェスチャーを観るのが好き。その間も井上がタケの引越し道具が乗った荷車を重たそうに引いてるのが可愛い〜。

タバコを箱ごと渡しちゃった公演の後のシーン。タケが一六酒場でポケットに手突っ込んでタバコ無いって気がついて、吸ってるとこなんて見た事ない井上に向かって「1本くれよ」みたいな仕草してて、手振って断られてて可愛かったし、やってることが細かいな〜!って感動した。こういう小さい所にも舞台のナマモノ観を感じていいなあと思った。

M11 引っ越しのテーマ

この曲作中屈指のキュートソングだと思うんですけど!歌詞から振りから何もかも可愛い!
歌詞を表示するモニターにタケ、井上、マーキーぽいイラストの猫ちゃん🐈🐈🐈が風呂敷背負ってお引っ越ししてるも可愛い。

3人が「ドンドンドンドンズンズン、エイホッホ」って進んでいく時の振り付けが可愛くて!
真ん中で踊ってるタケがこんなに可愛い振り付けなのに真顔なとこがむしろ愛嬌あっていい(伝われ)
踊ってる浅草の住人の間を3人がジャンプするような軽いステップで進んでいく振り付けも好き。

歌の間奏中にセリフを言ってる間もずっと軽快な楽しい音楽が流れてるから、会話のテンポがさらに心地よくて楽しい気持ちにさせてくれる。
セリフを思い出してると自然と音楽も浮かぶような感じ。

タケの引越し先は原作にもあるように、松倉荘の2階なんだけど、すでに井上は3階に入居済みで。
タケに対して井上が「俺3階〜✌️(本当は3本指)」って得意気にいうのがまた楽しそうで可愛い!
それに全然納得してないタケ。と何故かマーキー(笑)。
あからさまに「井上<タケ」になってるの本当に面白い。井上も先輩のはずなんだけど!?
あと、何故か濃さが異なる2層のグレーの外観の松倉荘を見たマーキーが「いいすね!灰色とネズミ色のコントラスト!」って言うのが毎回めっちゃツボだった😂

その後一六酒場で、1人前の煮込みで質素な引越し祝いをしようとする3人に、3人前ご馳走する師匠の和装がかっこいい!! 洋風のハットと羽織の着こなしが素敵すぎる。
原作でも深見師匠の粋な着こなしを絶賛されてたのが、そのまま飛び出して来た!?っていう感じ!
お金の使い方も、例え金がなくてもそう見せずに弟子にも自分と同じ良いものを食べさせ、店には迷惑かけないよう長居せず金も余分に払うっていうスタイルだったらしい。 でも弟子は師匠だってお金ない事は知ってて😭
こういう部分も本当に粋な人だったんだろうな〜。

あと店主が「チューハイ4つに煮込みとクジラのベーコン3つずつ」って言いながら持って来てて、チューハイは師匠の分もあるの良いな〜。

飯食ったら風呂だ!って4人で銭湯に行くシーン。
ここから引っ越しテーマを師匠と3人の弟子で歌うのたまらなく好き!! 実在した店や橋や通りを歩く様子が浮かぶ。師匠と3人の弟子の日常を覗いてるみたいな。
舞台、飯、風呂まで一緒なの、本当に家族みたいでいい。

風呂行く時は、モニターの3匹の猫ちゃん🐈🐈🐈も、風呂敷を手拭いに持ち替えてて、可愛いし細かいな〜!って。



師匠と三弟子が風呂上がりに町を歩いてたら、町の人に「いつも一緒だね」みたいな事を言われて、

師匠「バカどもがついて来ちゃうのよ」

って言うところに師匠の可愛らしさを感じて好き。 原作には師匠のほうこそ一緒に飲んだりしたくて弟子を部屋まで迎えに行くってあったのに。
これ知っちゃうとじゃあ一六酒場でも待ち伏せしてた!?師匠!?ってなるよね😂

もう隠居したいからタケに全部教えちゃおうかなって師匠の軽口に、ひっそりショックを受けてるマーキーが切ない……。
全体の空気感は日常パートの延長みたいなんだけど、マーキーの周りだけスッと温度が下がる感じ。
この時井上だけがマーキーをちらっと見てて。 こういう細かい仕草に井上の思慮深さが出ててめちゃくちゃいいなあと思った。

師匠に乞食のコントをダメ出しされて、道を歩く本物の乞食を見て真似てみろと言われ。
師匠の言葉に自分を奮い立たせるように乞食を演じるマーキー、これが本当に後々のシーンまで響いてて、知ってから見ると心臓がギュッとなる……。

マーキーにダメ出しして見せた師匠のお手本の乞食は、哀れさを見せてからの歌にブレイクダンスに口上にと流石すぎて、その場にいるみんな師匠に魅せられて楽しそうなのに、マーキーだけはずっと苦しそうなのがつらい。マーキー……。
乞食の師匠をいびるサラリーマン役を任せられたタケが褒められてるのもまた、マーキーを追い詰める。
周りにその気がなくても。

このシーンで印象に残ってるアドリブ。
乞食の師匠の前に、いびるサラリーマン役のタケがポケットから紙幣を1枚落とすシーン。
公演を重ねたためか折り目にそって真っ二つに破れてる時があって(笑)
目の前に落ちてきた真っ二つの千円札を見た師匠が「これ使えるんですかい?」って怯えながらもサラリーマン役のタケをイジってたのがめちゃくちゃ面白かった😂
タケが俯いて笑ってたのがまた😂

また別の日。
落とした千円札はその後タケがまたポケットに回収するんだけど、師匠がさりげなくくすねる公演があって。
多分しばらく手に持ってたと思うんだけど(記憶曖昧)、一番自分に視線が集中する口上のシーンで、千円札を持った手をススス……と自分の懐にしまってて、あっくすねた!!ってみんながなってるのが面白かった。
山本耕史(敬称略)、すごい。



やっぱ師匠はすごい!ってなったその帰路で、師匠の自宅もタケたちと同じボロアパートの松倉荘だってなるのが、じわじわと首を絞められるような苦しさで。

あんなすごい師匠ですらこれ…?って失望するようなマーキーも、師匠が松倉荘に住んでる事を知ってて言わなかったタケと井上の気持ちも両方わかる。師匠を馬鹿にしてんのかってマーキーに怒るタケの気持ちもわかる……。
わかるからつらい。

このシーンがあるから、タケたちもただ盲目に師匠を慕ってるだけじゃないのが伝わるんだよなーーつらーーー。
井上も言ってたけど、本当はわかってるけど直視してこなかった部分というか。
特にタケにとっては、ようやく自分が何になりたいのか、その気づきをくれた師匠の陰の部分に目を向けるのはつらいんだろうなあと。

私としてもつい数十分前にキラキラした一幕のラストを見たばかりなので受け入れ出来ない気持ちがすごい。
一幕が陽なら、二幕がその裏にある陰というか、しかもここからどんどん陰が侵食してきてるのがなんとも言えずつらい。

松倉荘前で揉める3人のところに炬燵机を持ってよたよた階段を降りてくる亜矢さん。
その亜矢さんの部屋着姿が素朴で可愛らしくもあり、出勤前の綺麗なワンピース着てる時よりどことなく小さく見えて切なくもあり。 自分たちの生活も苦しいのに若い子たちに炬燵机あげに来ちゃうのが、これが昭和の下町の義理人情なのかなって。
(そういえば引っ越しの荷車にカバーのない扇風機が乗ってたけど、これも踊り子さんがくれたものだって原作にあった。 細かい所拾えるとあっ!ってなって楽しい。)


個人的に感動したのは、大阪楽で亜矢さんがタケに「タケ、タップ上手くなったな〜」って……「頑張ったからこれ、あげる」って親みたいな口調で…………😭 言いながら、小さくて可愛い花を渡すのにすっっっごくキュンときた。 一幕でタケのタップ練習を見てくれてた亜矢さんが!って気持ちでうるっと。
遣都くんも嬉しそうにはにかんでるように見えて、その表情にぐっときた〜🙏




亜矢さんが去った後、タケ、井上、マーキーの3人も「飲み直しましょう」って管撒きながら捌けるんだけど、ここがほぼ日替わりのアドリブで。

色んな事話してたんですけど個人的に私が好きだったのは、愛知公演の時。
亜矢さんが炬燵机と一緒に名古屋名物ういろうを紅白で2個、井上とタケにくれて、マーキーには「あんたは居ると思ってなかったからないよ」って言われてて。(もうおもろい)
亜矢さんが去ってからおもむろにういろうを食べ始めるタケ、井上に「なんで俺の分ないんすか!亜矢さん!!」って叫ぶ😂
稲葉友さん、後々のシーンでめちゃくちゃ痛ましい叫びを聞くことになるんけど、ここでも結構マジ寄りに訴えられてるように思えて尚更面白かった。


炬燵を、あげてきたよって。
私達はどうやって冬を越そうねって。
可愛い3人衆とは違った、師匠と亜矢さんの家での、しっとりした大人2人のシーン本当に好き。
炬燵無くても布団に2人で包まってればいいだろって笑うのが切なくてたまらない。
亜矢さんが幸せにならないとやだ……って思いながらも、亜矢さんはきっと師匠のいない場所へは行けなさそうな……。

ここで初めて人生を電車に例えて、浅草はこの後走る電車はない、行き場のない終点だよって話をしてて。

一幕の「M1 途中下車のテーマ」「M3 知らない電車」で、キャラクター達がどこかへ身を運んでいくのを、電車を使って表現されてたのが曲がここに繋がるのか!っていう。
この後の曲でも歌詞にはないけど、モニターに電車のつり革が出てくるし。
ここでは意見が食い違う師匠(朝になれば始発が出る)と亜矢さん(朝なんてくるもんか)が、後々「M15 きえていく」という曲では……って考えると本当にしんどい。

言い合った後部屋を出てった師匠が、暗転した場所を羽織を肩に掛けてタバコ吸いながら歩いてて、夜道を歩くその姿が様になっててカッコいいなあと。



一幕でフランス座を飛び出して行った高山が、ドサ周りを終えて戻ってくる。
かなりの経営難に陥っていたフランス座の興行権を師匠から高山が買い取っていた事が発覚するシーン!

た、高山ー!!
一度フランス座を出て行った高山がまた浅草に戻ってくるの本当にグッとくる。
一見悪者のようだけど、高山の師匠に対する態度は今もちゃんと敬ってるように感じたし、憎まれ役を買ってでもフランス座を立て直すために帰ってきたんだとしたら、松下優也さんがパンフ内で話されていた「高山はダークヒーローのような」っていう言葉になるほどなあと。


M12 俺が座長だ

高山が歌うこの曲!
この時モニターに表示されてる歌詞の背景で、お金がバラバラ落ちていくんだけど、それが紙幣じゃなくて小銭なのがめちゃくちゃそれっぽい。 きっと高山はドサ回りでお金をじゃんじゃん稼いだ!というより、必死で貯めて戻って来た!って事なのかなって思ったら尚良かった。
この作品悪い人が1人もいなくて本当にみんな好きだ……。
このままじゃ先が無い事はきっとみんなが思っていた所で、強行手段に出られる高山カッコ良すぎるなって。

そのために下ネタ満載の古いコントは禁止され、師匠はじめ色んな人の居場所が無くなっていってしまうわけだけども……。 師匠がそれも覚悟の上で高山にフランス座を明け渡すしかなかったのも切ない……。

あと「俺が座長だ」で〆るこの曲、高山の元カノ?の踊り子が、最初は怒ってたのにラストはまた高山に惚れた……みたいにうっとりしてたのも面白かった。





同じくフランス座を去った兼子が、コソコソと偶然を装ってタケに会いにくるシーンが抜群に面白い!
とにかく間が最高。 大阪楽の時遣都くんが、今野さんにおでこがくっつきそうな程の至近距離で間をフル活用して仕掛けられて、堪えてたけどとうとう笑っちゃったのが可愛かった(笑)
一度笑うだけでは終わらせてもらえず、攻めを緩めない今野さんを引き剥がして強引に展開を進めてたのがめちゃくちゃツボ。

その後名古屋1日目の同シーンでは、私視点では特に何も仕掛けられてないと感じたのに、まず遣都くんが笑っちゃって、それを見た今野さんも笑って、こっちまで笑ってしまった😂

今の相方との漫才に行き詰まり、次はタケとコンビ組むべーって誘いに来たのを師匠に見つかって、そそくさと逃げていく動きもコミカルで面白かった。

師匠が漫才を見下してコントに執着する理由は、師匠は元々役者で芝居の道にいたからで。
ベロベロに酔った師匠がタケに言う、

師匠「ストリップの合間にやるセットもないコントなんて、俺のやってきた芝居じゃねえ」

っていう言葉、一幕で師匠の半生を見たからこその重みがある……。
対してタケが言い捨てて行く師匠の背中に、

タケ「それでも!俺のやってきた芝居のすべてです」

😭😭😭!!
この言葉を立ち去ろうとする師匠の背中に投げかけるのが!!一度は立ち止まるけど振り返らないまま去って行く師匠が!!


高山が来てどんどん様変わりしていくフランス座で、マーキーの劣等感が膨れ上がって爆発するシーン。
二人と比べて学歴もなく、師匠にも認められず、吃音のせいで感情が高ぶるほど上手く言葉が出ないマーキーが闇に堕ちていくのがしんどい。

マーキーがタケに言った「師匠の笑いは古い」っていう言葉、苦しいくらいブッ刺さる。
原作本に載ってる師匠作の「中気」というコントは前述した通りかなり過激で、ストリップ小屋に足を運ぶ客層には受けたとしても、テレビでは絶対流せないような内容で。 そもそもテレビどころかフランス座の経営すら回せてない状況だったわけで……。

みんなきっと気付いてたけど明言してこなかった事が、どんどん言語化されていく辛さ。 なんせタケが、現実的な問題に向き合うのを拒絶してるような様子が苦しそうでやるせなくて。

やさぐれたマーキーがタケに、

マーキー「才能ある奴はいるだけで才能ない奴傷つけてんだよ、謝れよ!」

って突っかかったり、

マーキー「俺もっとタケさんと舞台に立ちたいのに!」

って本音を溢したり。

ここ本当にあーーー!って胸が痛くなる……。マーキーがタケに憧れてるからこそ嫉妬するみたいな、一筋縄ではいかない感情をぶつけ合うシーン、つらいんだけど大好き……。
井上は作家志望で芸人の2人とはどこか一線あるけど、口出しせず居てくれる心強さみたいなのを感じて、この3人が好きだなあとつくづく思ったり。

この辺りに来ると展開的には本当につらいシーンばかりなんだけど、俳優さん達の演技は本当に痺れるし、気分が高揚する。こんな素晴らしいお芝居に出会えて幸せすぎる🙏

そしてつらいシーンでも笑いを取り入れてくれるのが観る側として本当に助かる。息詰めてたんだけど、急に出て来た乞食のきよしを交えての「クソッ!」の応戦でふっと笑えたりして。


M14 ないとある

このマーキーの歌い方が痛々しくて本当に心を抉られるんだけど大好き。
マーキーを挟んで歌うタケの声が繊細で、井上の声ががむしゃらで、「死んでしまうような 度胸もない」で最後3人がユニゾンするところがつらいけどめちゃくちゃ好きなシーンのひとつで。
この曲でマーキーが「笑い飛ばせる腕もない」って歌うんだけど。一幕ラストの曲、浅草エンターテイメントではソロで「笑い飛ばせ〜!」って歌ってたんだよ……笑い飛ばしてよマーキ〜〜〜😭

マーキーの叫ぶような「死んでしまうような」の歌詞と一緒に死神コーラス軍団が彼を連れていく演出めちゃくちゃいい。 いや連れて行かないで欲しいけど。


マーキーが連れてかれた直後に、兼子がまたコソコソやって来て、タケをコンビに誘いに来る。

「相方はクビにしてきたからよ」って言われた時にタケが気まずそうに井上を見て、井上が察して後ろ向いてくれるのが本当にいいなって。井上のさりげない配慮好きだー。

師匠が嫌う漫才に手を出す事に躊躇して、「俺にはたった1人の師匠だから」ってボソッと言うタケが愛おしい〜〜。
上手の前の方でこの表情を観る事ができたんですが、瞳の揺らぎ方が本当に心細そうで、綺麗で、胸が締め付けられた……。

でも「売れるのが師匠への一番の恩返しだよ」って兼子の言葉を聞いて心がグラつくのが、現状をどうにかしたい気持ちと、師匠への恩とか義理とか愛とか色んな感情が交錯してて良い。


兼子と漫才に挑戦するためにフランス座出てく事をなかなか切り出せないタケと、辞めてくタケに憎まれ口を浴びせる師匠が本当にやるせない。
師匠に売れて恩返ししたいからこそ決断をしたタケと、タケを認めて可愛がってるからこそ好きにしろって言いながらも離れてく事が悲しくて皮肉る師匠にすれ違いを感じて……😢
この場面で兼子と井上が度々茶々を入れに来て、ふっと息をつかせてくれるの本当に助かる。

フランス座を辞める事を言い出せないタケがどうでも良い事話をしちゃう、その内容がアドリブなんだけど、どこかの回で遣都くんが、「喉にカビが生えて……」って言うんだけど、ガチのご本人由来のエピソードに、客席から笑いと悲鳴両方起きててめちゃくちゃ面白かった😂

タケを見送って一人になったフランス座の楽屋で静かに歌う、

師匠「深見千三郎はさ……いつでも浅草にいるぜ?」

が!!
一幕ではビシッとスーツ着て慕ってくれる人に囲まれて歌ってたのに。 二幕はもう舞台に出ることのなくなったフランス座の楽屋でひとりでぽそっと、っていうのがあまりにも切ない。

ていうかコント禁止にして師匠が舞台に上がる事はなくなったのに、師匠がまだフランス座にいるのがまた……高山も追い出したりしないのが良い。
高山からは、タケとはまた違う尊敬を感じる。



色んな漫才の形を試すために、タケが兼子・マーキーと交互に漫才をする構成が楽しい!!

断腸の思いでフランス座を飛び出して新しい事に挑戦しようとしてるのに、誘って来た兼子が人からもらった古いネタ用意してたらタケが怒るのも無理はないよねと。

フランス座を出てからも井上がタケの相談相手になってくれてて「最初から上手くはいかないよ」って諭すところが好きで!!!!

井上「最初から上手くはいかないよ」
タケ「……そんな事言ってる余裕ねえよ!」

この余裕ないはずのタケが、同じかそれ以上に焦るマーキーに対して、

タケ「最初から上手くはいかないよ」
マーキー「そんな事言ってるよゆ、よゆう…」
タケ「……余裕ないよな」

って励まして、優しい口調で代弁までするのがもう!!
人に言われた言葉に影響受けて自分でも使うの、一幕ではただ愛嬌のあるエピソードだったけど、ここでまた出してくるのはずるい、しんどい、めちゃくちゃ良い😭

タケはマーキーを気遣って?言ったんだと思うけど、その言葉を聞いてマーキーは絶望したように感じて。
吃音症のせいで、タケと意見をぶつけたり共有する事も対等に出来ない事に心が折れてしまったのかもと思うともう、マーキー!!!!ってなります。
マーキーへのクソデカ感情が止まらない。

あと営業先の大ママの、

「向いてないことに夢中になっちゃう人生、つらいよねえ」

は本当につらくて、やめて、これ以上マーキーを刺さないでって思いながら聞いてる…。
大ママは大好きなんだけども!

あとこれだけは!!マーキーと二度目の漫才の時、お揃いの背広と蝶ネクタイで靴だけ違うのが!!浅草キッドの歌詞「同じ靴まで買う金はなく」がそのまんまで言葉にならないくらい好きで!!!!!!
兼子より先に、マーキーとお揃いの衣装買ったりして、タケは漫才やるならマーキーとが良かった、ていうのがこの衣装で語られてるのがたまらない。 浅草キッド、わざわざ言わないけどこういうエモ演出が本当にたくさん散りばめられてて本当に最高です。

(余談ですが、この時のタケとマーキーの漫才内で小津安二郎という人物の名前が出てて。たまたま観劇期間中に小津安二郎のサイレント映画がリメイクされた作品を視聴したばかりだったので、この台詞に引っかかる事が出来ておお!って嬉しかった記憶✌️
本当に余談。)



喫茶店で元弟子と話す師匠。
ビシッと決めたスーツや着物ではないけどハットと靴の着こなしがおしゃれ〜!
服はラフだけど、靴はスーツの時と同じものを履かれてて(多分)、もっとチグハグになりそうなのにそれも似合ってて着こなしかっこ良!!って。

フランス座で師匠の居場所がなくなってる事を聞きつけた元弟子から再就職の手助けをされるだけじゃなく、課長の席まで用意される事に師匠の人望を感じる……師匠に憧れてた人たちがずっと師匠を慕ってるが本当に良い。


M15 きえていく

大好きなんだけど苦しい。けどやっぱり大好きな曲!!
亜矢さんの歌い出しが本当に綺麗。
泣きそうな「褒めて」が聞いてて苦しい。
確かな表現力でぶつけられる2人の歌の迫力がすごい!歌詞も好きで、亜矢さんのパートが「月から迎えは来やしない」ってかぐや姫っぽい歌詞だったり、師匠のパートが「ずいぶん寂れた竜宮城に」って浦島太郎っぽかったり、表現に感動した。
本当に曲全部好き。もう一回聴きたい……。

最後の「みんなは2人を忘れていくよ、2人はみんなを忘れないよ、みんなは2人を忘れていくよ、2人もみんなを忘れたいよ」って歌いながら手を重ねて歩いてくのがすっっごい良かった。浅草を去る人、浅草に残る人がこんなに辛い形で歌になるなんて……。

亜矢さんが枕芸妓にまでなってまで師匠と生きてく覚悟を決めたなら、師匠も芸の道は諦めるしかないよなあ……。
でも亜矢さんがそれを強いる事がないのがすっごくいい。 師匠と生きていくために枕芸妓になった事を、ただ「褒めてよ」って…………可哀想で強くて愛おしい😭
亜矢さん幸せになってくれないと嫌だ〜〜〜。



タケと井上が、2階から飛び降りたマーキーの面会に行く精神科病棟のシーン。
本当につらいけどこのシーン自体も、俳優さんの演技も全部大好きで……。
大楽はこのシーンが来る、ってだけで泣きそうになってた。

ナースに車椅子を押されながら鳥の鳴き声の話をするマーキーが、見た事ないような穏やかな空気感で、悪い事じゃないはずなのに何故か心がザワザワして。

足にギプスを巻いたマーキーが、タケ、井上に飛び降りた事をヘラヘラしながら、吃音の症状も出ずすらすら喋ってる事がしんどい。
そのマーキーを見てるのか見てないのか、タケが一点を見つめて一言も喋らないのに対して、いつも通りを心がけて話してくれる井上(思慮深い)が良いんだよ〜〜。
井上〜〜いつもいてくれてありがとう🙏

やっと口を開いたタケが、いつまでも浅草でもがいてる自分たちを、西遊記に例えて、

タケ「西遊記でよ、どんなに駆けずり回っても結局はお釈迦さまの手の中って話あるだろ。俺らもどんなに逃げ回っても結局は浅草の手の中なんじゃねえか」
マーキー「……俺ら?」
タケ「浅草寺に火でもつけりゃ逃げ出せるか」
マーキー「……浅草出て府中まで行っちゃうよ。府中刑務所(笑う)」
タケ「だな(笑う)」

マーキーがここで俺″ら″って自分も含まれてる事に引っかかるのが!!
マーキーはもう浅草でもがく事も出来ないほど精神が疲弊してるから、そこで一緒にされてしまうのも辛いのかも、とか。

「府中刑務所」っていう台詞でやっと笑い合えた二人を、マーキーの精神状態に悪いからって看護婦長さんが咎めるのも、婦長さんの判断は間違ってないんだけど切ないんだよーー。

もう一幕で見た、ストリップ小屋に来てたサラリーマンをいじってちょっと不謹慎な事で笑い合って、それを井上が咎めてっていう、あの3人に戻る事はないんだなって思ったら……。

ヘラヘラしたマーキーが一変するシーン。

マーキー「俺はもう新しい一歩を踏み出すんだってさ。タケさん達、置いてけぼりー」
井上「……そう。良かったね」
マーキー「言い訳ねえだろ!!」

ここが……!!ずっと緊張状態だけど、さらに空気が張り詰める感じ!!ここの稲葉友さんの叫び方がすごい好きで!!!!

マーキーが何度も飛び降りる夢の事を話すのも、夢の中で飛び降りてるのは自分じゃなくてタケさんだって話すのも。
後に高山が言う、「浅草への酔いから醒めてしまった」のに、それでもどんなにもがいても浅草から抜け出せなかったら。
タケも追い詰められて自分と同じように飛び降りてしまうんじゃないかって、それが怖くてたまらない、みたいなマーキーが痛々しい。

その様子を見てタケが、

タケ「じゃあね。マーキー」

って手を差し出しながら言うこの台詞も大っっっ好きで……!!!!!!
最初はセリフはどういう意図だったんだろうって考えてたんだけど。
タケはきっとマーキーに何を言われても芸人として大成する夢は捨てられない。 だから新しい道を歩まなければいけないマーキーとはここで道が分かれたって事なのかなって。
それにマーキーだって好きで芸人になる夢を諦めたわけではないから、芸人を続けるタケがいつまでも近くにいるのはつらい。 タケだって自分が足踏みしてる間に新しい道に進んでいくかつての仲間を見るのはつらい、はず……。

お互いの未来のために出た言葉が「じゃあね、マーキー」だったのかなって。
手を差し出して別れの握手を求めたのも、相手を大事に思うからこそっていうのが、伝わって……。
でもマーキーがこの手を握り返せないのもめちゃくちゃわかるしつらくて……。
この時のマーキーの手を見つめる表情が「これで芸人を目指す自分とは本当にお別れなんだ」とも、「まだ苦しい道を行こうとするタケさんを止められなかった」とも取れる気がして。
もう涙止まらない。なんならこれ打ちながら泣いてる。

握られなかった手を引っ込めて立ち去るタケと井上に、

マーキー「タケさん!!心配だよ!!タケさん!!」

って叫ぶマーキー。
面会中、ずっと表情が変わらなかったタケが、振り返った時に見せた苦しそうな顔がまたつらくて……林遣都くんがタケで、稲葉友くんがマーキーで本っっっ当に良かったなあって思いました。
キャスト全員に言えることなんですけど!!!!!

このシーン大好きすぎてめちゃくちゃ熱が入る。
もう一回観たい……。(鳴き声)





M16 弱者のテーマ

ここで弱者のテーマが流れ出すのも激ヤバな構成!!
涙の追い打ちをかけられる。

松下優也さんの綺麗すぎる歌声と、曲の合間にその後のフランス座のみんなの様子が流れて行く。

兼子が最後まで面倒見てやると宣言した通りに、家に閉じこもるタケを迎えに来てくれるのいい。
兼子もどんどん好きになるよーー。

師匠は会社員になってて、捨てたはずの久保七十二をまた名乗るのがしんどい。
でもここに居られるのもフランス座で深見千三郎でいたからこそなんだよなあと。 去った後でも師匠がそこまで慕われてる人だってわかって良かったという気持ちもほんの少しあり……複雑。

亜矢さんが芸妓をしながら酒に溺れていく姿が、飲み過ぎが祟って倒れる姿が本当に本当に本当にきつい。

井上は週刊誌の記者になってて。
上司から怒鳴られて「浅草で何を学んできたんだよ」って原稿を投げつけられる。
それを拾いながら

井上「いっぱい学んだよ、バカヤロー」

ていうこの台詞も屈指の涙腺崩壊ポイントで!!
二幕序盤で言い慣れないバカヤローを披露してた井上が、師匠の言い方に染まってきてる風なのがいいなあと……。

M16 弱者のテーマの歌詞の中に「弱いやつらはかたくなって、どこまでも墓穴を掘り続ける」ってあって、自分ではこの歌詞の意味がわからなくて。
一緒に行った人に何気なく聞いたら、「かたくなるって集まってって意味じゃない?」と聞いて、辞書検索したら確かに「固まる=一箇所に集まる」ってあって、なるほど〜〜って感動したと同時につら!!!ってなった(余談)
なんてつらい歌を歌うんだ……高山〜〜〜。

無邪気な弟子志望の新人と座長高山のシーン。
自分は師匠になれる器じゃないっていうのが良い。高山の中で、師匠という存在は不可侵なんだなあと。
でも新弟子を拒みきらずに迎え入れる高山にもめちゃくちゃ器のデカさを感じて好きです……。

ここで高山が希望いっぱいの新弟子に言う、

高山「お前、浅草に酔うなよ?醒めた後つらいからなあ。……まあ素面じゃ乗り切れない町だけどよ」

って言葉が、色んな場面で響く……。


兼子と漫才を続けるタケ。
ヤケクソから生まれた新しい漫才のやり方がウケて、嬉しそうな兼子と、疲弊してるタケの対比。

この時のタケが、大事な人たちと別れて、色んなものをすり減らしてやっと立ってる、みたいなのが痛々しい。
マーキーの夢の、飛び降りる寸前まで来てるような、そんな感じがする。
隣にいる兼子がいい意味で楽観的でおおらかで、ずっと見捨てずに居てくれて本当によかったな〜〜〜って。
じゃあコンビ名変えようって前向きな兼子に、

タケ「名前のせいにすんなって……!」

って絞り出すような語尾がめちゃくちゃ好きだったな。
遣都くんのこういう辛い場面での台詞、一筋縄じゃない色んな感情が込められてるような多彩さを感じて大好きなんです……。
(語彙力が欲しい)



新生ツービートが、ダイジェスト的にどんどん売れていくの良い〜。
タケの態度も段々やわらかくなって、兼子への信頼が深まってきたのを感じる。
後ろ姿のタケ(演じてる人は違うけど)がへっへって笑ってるのを見て、あっ笑ってる、ってほっとしたり。
普段口悪いのにふと出る相槌がやわらかくてじーんとするんだよ……。 「じゃあね」とか「いいよ」とか……。(打った文字では伝わりにくい微妙なニュアンス)
新車買おうとしてるタケに自分のと同じ車を勧める兼子と、なんで同じ車買わなきゃいけないんだよって笑うタケが可愛い〜。

最後、兼子も置いてタケだけが大ブレイクして、タケちゃんマンの格好で1人、光に向かって歩いて行く背中に寂しさを感じる。 そこでも師匠に習ったタップを踏んでるところが泣ける。


タケがフランス座に来てから約十年後。
一六酒場で飲んでる師匠とタケが居住まいとかで年齢を重ねてるのがわかるのがすごい!!
師匠の雰囲気が丸くなって、服もくたびれててちょっと小さくなった風なのが少し切ないなあ……。

ここで放送大賞の賞金を師匠に渡すタケが!!
兼子が前に言ってた「売れるのが一番の恩返しだよ」をちゃんと覚えてて「恩返しって言ったらあれだけど……」って照れながら言うのが良い🥹

お前に貰った金なんか財布にいれたくねえんだよって、タケを色んな店に連れ回してその先々で弟子自慢してるのがあったかいよ〜〜。

ベロベロに酔った師匠が、弟子が弟子がって何度も同じ話をするから、ホステスに言葉遮られちゃうんだけど、タケに優しく「生意気な弟子がなんですか?」って続きを促されて嬉しそうに「天狗!」って言ってたのがめちゃくちゃ良いなって。

お酒を盛大にこぼした師匠がホステスに「何してんだよジジイ!」って言われてるのはつらい……。 もう浅草で飲んでても、若い子達は深見千三郎を知らないんだなあって……。
一六酒場の主人や馴染みの寿司屋では「師匠!」ってまだ慕われてたから余計に。

キャバクラを出て、真冬に赤提灯で飲み直す師匠とタケ。
外の空気に冷たそうに上着を羽織る演技が好き。

酔い潰れて寝こける師匠が持ってるタバコをタケがそろーっ取って、灰皿に捨ててるのと、その時の優しい眼差しがすっごい……いいなあって。

ここで赤提灯の店主に多分万札を渡して「釣りはいいから」って言うのもいい。
タケはもう金に困ってないからっていうのもあるけど、貧しくても店に多くお金を払ってた師匠の粋な部分を受け継いでるのかなと思ったら心臓がギューーっとなる。
あと、寿司屋でもキャバクラでも実は師匠に渡した賞金には手をつけられてなくて、タケが払ってたんじゃないかとか……。どっちでもすごく良いんだけど、色んな可能性があるよねって。

「師匠、俺もう行きますよ」「おう」ってなんでもない風に別れるんだけど、その時のタケの、師匠を慈しむような視線がいいんだよーーーー!!!!!
憧れ!!一色だった一幕では絶対観られなかった表情に心臓部わし掴みにされる。




じゃあってタケと別れた後夜道を歩く師匠が、ホームレスに見間違われるくらい格好がみすぼらしいと思われてるのが悲しい。
松倉荘の自宅に帰ると棚に亜矢さんの遺影が立てられてて、亜矢さんに「ただいま」「亜矢ちゃん」って言って遺影を撫でるのがもうすっごい、好き。
亜矢さん死んじゃったんだ……。 でも師匠に本当に愛されてたんだろうなあ……そこは良かった……😭

タケの前ではずっと憎まれ口叩いてたのに、最後の最後にアパートで一人、タケが一番って認めたところでもう泣ける。 本当はずっと前から認めてたんじゃないかな。

師匠の最期。
私はネタバレなしで初日に臨んだので、ただただびっくりして涙が止まらなかった。
寝タバコって自業自得といえばそうなんだけど。
こういうのにも時代を感じて良い。

目が覚めたら火と煙の中に居て、這って逃げようとしてたのに思い出したようにわざわざ戻って来て「タケ、亜矢ちゃん」ってタケの賞金と、亜矢さんの遺影を抱える姿が……。
その後もなんとか逃げようと踏ん張るのに、扉のセットがどんどん遠ざかっていくのがあまりにも無情でつらかった。

その時師匠が、

師匠「これ、あれだな。死ぬなあ、俺」

って言った時、不思議と観に行ったどの公演でも少し笑いが起きてて。えっここで笑うんだ!?って思ってたんだけど。踏ん張った時に床についた指のない左手を見て、

師匠「大変だー!タケー!指が抜けなくなっちゃったー!」

っていうタケとじゃれてて生まれたコントのネタ。
ここでどこからか聞こえてくる笑い声と、火と煙の中に消えていく師匠と、フランス座のコントの明るい出囃子が流れるのが、師匠は一幕でタケに教えた「人間のすることは全て喜劇」を自分自身で体現したんだなって思ったらもうダメだった。
泣きすぎて口抑えながら観てた。
山本耕史さんがただただ圧巻だった。



M17 浅草キッド

売れる事と引き換えのように色んな大事な人を失ったタケが、井上とはまだ繋がってるのが嬉しい。

井上との電話越しの「忘れないうちに歌うよ」っていう台詞。
師匠の訃報を聴いたからなのか。
浅草で経験した全ての出来事にかかってるのか。

曲が流れ出すまで客席に背中を向けてたタケが、振り返ったらシャツとジャケットと髪型と歌い方と、何より佇まいがもうビートたけしにしか見えなくて、役者さんって本当にすごいなあと。

曲の途中で幕が開いて、薄暗かった舞台に明るい浅草の町並みが現れる。
そこを住人が行き交ってるのが絵みたいなすごいきれいな風景だった。
新弟子と高山が一緒に歩いてるのに感動しつつほっこりしたり。
でも師匠がいた時代に見慣れた踊り子さんたちも居るから、現在の浅草の風景というよりかは夢の中のような、思い出で脚色された浅草の姿だったりするのかなあとか。

病院のシーンでは、浅草から逃げ出したいと取れるような台詞があったけど、この浅草の光景があるからこそ、今のビートたけしがいるんだなっていう、この作品を象徴するようなシーンで、めちゃくちゃ沁みた。

歌の長めの間奏の時、タケが振り返ったら上手から下手に向かって乞食が歩いてて。 タケが前に向き直ったら、下手からマーキーがとぼとぼと歩いてくる。 他の人物たちは集団でわいわいしながら歩いてたのに、この瞬間に舞台上にいるのはタケと乞食とマーキーだけ。 乞食が先に捌けた後、とぼとぼ歩くマーキーが舞台の真ん中まで来た時にタケのいる方向をなんとも言えない表情で見上げてたりして、もういよいよ涙が止まらなくなる激エモ演出。

ここから歌う「夢は捨てたと言わないで」以降歌詞が、もちろん師匠に向けた言葉でも何も違和感なく感動できるんだけど、本家浅草キッドでは、芸人になる夢を捨てたマーキーに宛てられた曲らしいので。
舞台版の浅草キッドもその歌の意味がちゃんと生きてるのがいい…。 また打ちながら泣いてる。

初日はマーキーへの曲だって知らずに観て、2日目に原作とパンフレット読んで知ってから観たんだけど、知ってても知らなくても両方泣けるってすごくないですか……本当にすごい、音楽劇 浅草キッド……。

しっとりした曲の空気のまま終わらず、ビシッとスーツで決めた師匠がタケの背後に来て、

師匠「カッコつけてんじゃねえよバカヤロー」

ってタケにツッコんで、二人でポーズ!!!!
そして幕が下りる!!!

ここも実現し得なかった大歓声と拍手の中でステージに立ってる師匠とタケの姿なんだと思うと幸福感がすごい!!!!!

それから浅草エンターテイメントの演奏に合わせて手拍子でカーテンコール。
キャストさんに拍手を送れる喜びと一体感が至高!
キャストさんもバンドの方も浅草キッドのスタッフさんも、劇場のスタッフさんも関わってくれた方みんな、本当にありがとうございました!!!

こんなに素敵なものを浴びれて1ヶ月半幸せでした。


当時、自分比で浅草キッドにあまりに入れ込みすぎて、名古屋の大楽を迎えるのがつらかったんですけど、遣都くんがカテコで「終わっちゃいましたが」って、終わるのが惜しいみたいに言ってくれた事と、まさかの全員揃って(た、高山ー!)の浅草エンターテイメントを歌って踊って、ものすごい量の紙吹雪っていう豪華な演出があって、めちゃくちゃ笑顔で終われました!!最初から最後まで、ずーっと最高だった!!!

ありがとうございました!!!
また浅草キッドの世界に浸りたいので、再演いつまでも待ってます!!!!!!!
(可能なら配信とか、劇中音楽の販売なども🙏)

あーーー2023年の秋は楽しかったな〜〜〜!!!!


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