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娘が高校生になったら読んでほしい本

これは カンムアドベントカレンダー2022 17日目の記事です。

昨日は @achiku による「辛ラーメンの具材とか」でした。ちょうど家にも辛ラーメンがあるので、おすすめのニラを入れてみようかな。

ということで、わたくし、無類の本好きなので、本の話をします。

高校生の頃は授業中にひたすらに小説を読んでました。村上春樹とか太宰とかロシア文学とかそっち系が多かったです。本好きが高じて将来は作家になりたいと思っていた時期もありました。

最近は金融やらプロダクト開発やら仕事関連の本ばかり、というかこの1年は積ん読が加速しているのですが… これまでに沢山の本を読んできたので、紹介してみたいと思います。気になるものがあれば年末年始の読書にぜひ、という感じで。

押し付けがましいと思いつつも、「娘が高校生になったら読んでほしい本」という切り口で10冊選びました。自分がもっと若い時に読んでおきたかった本とも言えますかね。

最初は人生観とでも言われるような普遍的なものから始まって、徐々にインターネットとか金融とか自分が密接な関わりのあるテーマに沿ったものに、といった感じの順序になっています。

1. 愛するということ

著者:エーリッヒ・フロム

言わずもがなですが、恋愛の本ではありません。愛するというと重い印象を受けますが、恋人や配偶者などのパートナーに限らず、もっと日常的な生活の中での人への態度に関するものとしての愛です。

愛するということは意思であり、技術であると。初めて読んだときは目から鱗でした。

2. 夜と霧

著者:ヴィクトール・E・フランクル

アウシュビッツの強制収容所を生き抜いた男の話です。読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

この本から学んだことは「事象と認識は分離可能であり、人は認識に対しては自己統制可能である」ということ、それを強烈な体験に基づいて教えてくれたように思います。人生では自分の身に降りかかる出来事をコントロールできないことは多々あるけれども、それをどう捉えるかは自分次第でコントロール可能であると。

フランクルがこれを言うのだから自分は言い訳できないな… みたいな気持ちになることもたまにあります。ストイックな思想なので人への押し付けはダメだし、自分もいつもここまでストイック・マインドなわけではないんですが。

3. PRINCIPLES 人生と仕事の原則

著者:レイ・ダリオ

世界最大規模のアセットマネジメント会社であるブリッジウォーターの創業者です。原則、というと一歩引いてしまうかもしれないのですが、彼の人生経験を通じた人生観や仕事観を体系化したもの、くらいの気分で読みました。過去、精神的にかなりきつかった時期には、この本にはかなり支えられましたね…

以下、一部引用しますが、この考え方は特に好きです。

「私は正しい」と思う代わりに「自分が正しいかどうか、どうすればわかるだろう?」と自問するように変わった。(中略)よく考え抜かれた反対意見を聞き、その根拠を理解し、自分自身をストレステストにかける。こうすれば、正しくなる確率を上げることができる。

p53より引用

30代も半ばを迎えて自分の過去の経験や知識に基づいて判断してしまうことが増えたな… と感じるのですが、この考え方のおかげで、自分はもしかしたら間違っているかもしれないという余白を常に持ちながら、色々な意見にオープンに耳を傾けて自己検証をする癖がついたように思います。人は思考が硬直化すると老害への道をまっしぐら… と思っているので本当に気をつけたい。

4. シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント

著者:ナヴァル・ラヴィカント
原題:The Almanack of Naval Ravikant: A Guide to Wealth and Happiness

こちらの本、未邦訳だと思っていたのですが、2022年8月に邦訳出てました。日本語のタイトルが絶妙(最重要思想家とは…)ですが、今回の10冊から1冊を選べと言われたら、この本を選びます。

テーマはレイ・ダリオ本と若干被りますが、インド出身の起業家・VCであるナヴァル・ラヴィカントが富と幸福という2つのテーマについて彼の思想を語った本です。

レバレッジの大切さを語る章で、レバレッジを作る2つの手法として、投資とソフトウェア・プロダクトを作ることの2つを挙げています。自分が労働せず寝ている間にお金を稼ぐ仕組みをいかに作るかという話ですが、手元にお金がないなら、すぐにコードを学んでプロダクトを作れ!という話があって、こういう考え方は誰しも当たり前に持つべきだよな… と思います。

5. CODE VERSION 2.0

著者:ローレンス・レッシグ

原著初版が2006年とインターネット本にしては古めですが、インターネットについて真面目に考えるきっかけになった本です。10年近く前に新卒の会社の先輩におすすめされて読みましたが衝撃でした。

キーメッセージは「何かをコントロールする要素は大きく4つあり、それは法律、規範(社会や人々の価値観)、市場(お金)、アーキテクチャ(コード)である」というものです。

今まさに Big Tech が批判に晒されているのも、彼らのコード(検索アルゴリズムであったり、タイムラインの表示ロジックであったり)が法律と同じ程度、あるいはそれ以上に私たちの行動や考えに影響を及ぼしうるという話で、本書は早い時期にこうした構造を捉えており、手放しにインターネットの発展を喜ぶことはできないと警鐘を鳴らしていたのでした。

今の子どもたちにとってインターネットは物心ついたときからそこにあるもので、それに対して何か思考を巡らすということはあまりないと思うのですが、こういう視点を一つ持ってもらえたら… と思ったりします。

6. 歴史とは何か

著者:E.H.カー

学部と修士で歴史学を専攻していたので入れてみました。学部生向けの歴史学の入門書と言ってよい一冊だと思います。自分もことあるごとに読み直しました。当時は岩波新書で読んでいたのですが、2022年5月におしゃれな装丁で単行本が出ていました。

7. 21世紀の資本

著者:トマ・ピケティ

資本主義の格差について語る上での底本だと思うので。多く批判を受けていますが、それは一考に値する名著ということの裏返しだと自分は捉えているので。

8. 現代経済学の直感的方法

著者:長沼伸一郎

物理学者が書いた経済学の本です。経済学ってこんな捉え方できるのか!と衝撃を受けました。大学のときにこの本を読んでいたら経済学を専攻していたかもしれない…

9. アメリカ金融革命の群像

著者:ジョセフ・ノセラ

FinTech界隈の方は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。カンム社のバイブルです。かなり分厚い本ですが、好きな章は何回も読み返しています。

今となっては当たり前のクレジットカードや証券の仕組みも、たかだかこの50年の歴史の中で作られたものに過ぎないのだなと… それを築き上げた先駆者たちの情熱、狂気、ダイナミズム… 単純に読んでいてワクワクします。

10. ゆっくり、いそげ

著者:影山知明

行き過ぎた資本主義に対して、こういう見方もあるんだよ、という視点として。マッキンゼー・VCを経て、西国分寺でカフェを創業した影山さんという方の本です。この類の本としては地に足がついている感じがするので、好きです。

番外編:せっかくなので、単純に自分が好きな小説も紹介します。

1. 悪童日記

著者:アゴタ・クリストフ

一番好きな小説家です。淡々とリズムよく、皮肉を交えながら、残酷な描写が続く。中毒性あります。

2. 人間の土地

著者:サン・テグジュペリ

明るい気分になれる本です。

3. 深い河

著者:遠藤周作

ちょっと重めですが、潜りたい方にはお勧めです。

なんだか真面目な内容のものが多くなってしまって反省していますが、自宅の本棚に置いておくので、いつの日か娘にふとした時に手にとってもらえたら、父はひっそりと喜びを噛みしめることにします。


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