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低血糖アラート犬アニモとの出会い

スペイン語で「頑張れ!」を意味する「アニモ」と名付けられたその子犬は奇跡的に助かったのだ。
愛護センターから保護された母犬は既に妊娠しており、まだ出産する様子ではなかったがセンターでのストレスからか早産をし、5頭が生まれた。未熟児のため自力で母犬のお乳を飲むことができず翌日まで生きていたのは1頭アニモだけだった。生後2日目のアニモを自宅に連れて帰り、猫用哺乳瓶での授乳を始めた。助かるかどうかわからなかったが、2時間おきの授乳とペットボトル湯たんぽ交換を続け、アニモはミルクを作る匂いがするとピーピーと鳴くくらい元気に育ってくれた。

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いつもはちきれんばかりにお腹がパンパンになるまで飲んでいた。2時間置きのミルクをあげるということは、通勤も一緒、出張も一緒、会議も一緒、寝るのも一緒とあらゆる環境にアニモをバスケットに入れて連れて歩いていた。おかげで、車も平気、人も平気、多くの犬も平気、バスケットに入るのも平気、暇な時間はおとなしく寝る。という何とも手のかからない良い子に育ってくれた。
真っ白でふわふわの綿毛のような被毛で、鼻と肉球が黒く、たれ目のアニモは犬の子というより白熊の子のようだった。どこへ連れて行っても大人気でかわいがってもらった。野良犬の子には必ずと言っていいほどお腹には回虫がいて、もちろんアニモのパンパンのお腹もいた。駆虫薬を飲ますとパスタ1人前はあるんじゃないかと思うほどの回虫がでてきた。それ以外にほとんど病気もなく元気いっぱいで育った。そして多くの犬といろんな人にいじられて育ったアニモは、生後3か月のころ低血糖アラート犬訓練性としての候補になった。

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低血糖アラート犬とは、主に1型糖尿病(※)患者さんが低血糖状態になっている時に呼気や体から出ている匂いの変化に気づき、患者さんに何らかのアラートを示し気づかせる仕事をする犬。犬はその匂いに気づくとご褒美がもらえるので、意欲的に匂いに執着するようになる。さまざまな探知犬たち(薬物探知犬・食肉探知犬)との違いは、これらの探知犬は匂いを探す対象や探し始める合図をハンドラーから指示があるが、低血糖アラート犬は患者さんとの生活の中で、いつその匂いがするかわからない、リラックスしている状態や寝ていてもその匂いがしたら反応をするようにトレーニングする。

(※)1型糖尿病:膵臓のインスリンを出すβ細胞が破壊されることで起こる糖尿病。

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今、アニモはその匂いを覚えアラートするとご褒美がもらえることを知っている。アニモの家族となる患者さん家族とも短期間のホームステイも経験しすっかり家族の一員となり、朝方寝ている時も匂いに気づき知らせてくれているという。アニモのパートナーになるりあんちゃんからは「アニモはいつも見守ってくれるヒーローみたいな存在だと。」と言ってもらった。

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手のひらサイズだったアニモも、今年3歳になる。匂いにアラートしている時はとても頼もしく見えるが、私と一緒に寝ている時のアニモはいつまでも赤ちゃんのころのように無防備で甘えてくれる。もうすぐ、私の手から離れて淋しい気もするが、私が友人と約束したことをアニモが果たしてくれる喜びのほうが大きい。その約束の話はまた次回に…。
アニモ、頑張れ!その名前の通りみんなからのエールが君にこめられているのだから。

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