あなたがいる世界に私も生きてる(2023年度入試・洛南高等学校附属中学国語分析)

関西圏では最難関の一角、特に女子の皆さんにとっては本当に狭き門と言えるのが洛南高校付属中学校さんです。国語に関しては本当に多岐にわたることばの力、抜き出しやあてはめ、中字数の記述、そして全体的に多めの問題に対応できるだけの処理能力と速度、というものが求められています。ただ、設問数が多いということは一問一問の配点はそこまで高くはない、ということになり、取り切れるところをしっかりと正解していくことで点数を積み重ねていくようにしたいですね。

大問一はあさのあつこさんの『一年四組の窓から』(光文社・2012年3月→光文社文庫・2016年3月)。ベストセラーとなった『バッテリー』以来、あさのあつこさんはいわゆる中高生を主人公とした小説をたくさん執筆されていて、悩みながら精神的にも肉体的にも経験を重ねていくということを物語を通して書かれており、この作品もその一端と言えます。

あらすじ(リード文)は示されていないので、読み進めながらどのような場面や展開があるのか、またこの場面につながる前段階としてどのような状況があったのか、をとらえなければなりません。この場面での中心人物となる杏里は母親の加奈子から祖母の菊枝が発熱したため、見守る(様子を見ておいてほしい)ことを頼まれる、そこに友達の美穂から電話でどうしても聞いてもらいたいことがあるという誘いを受けて水鳥公園まで行った、というのがまずは前段階にあたります。

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