仮初めまみれの日常だけど(2023年度入試・神戸女学院中学国語分析)

神戸女学院中学校の国語の入試問題については、その年度に発表・刊行された書籍を出典にすることは少なく、作成者であろう先生方が気に入っていると思われる文章をそのまま出題してくることが多いという、ある意味では「趣味に走っている」文章が多い、とよく言われます。そのため、受験生からすると「出題者の先生、すなわち大人の感性に追随できるだけの基礎能力を備えているかどうか」が値踏みされていることになり、そういう点においてはやや癖が強い問題であると言えるかもしれません。文章の内容は多岐にわたっているのですが、どちらかというと文学的文章(物語文・随筆文)に対する対応力をしっかりと磨いた上で、挑みたいところですね。大問三については、韻文(詩)が出題されたり、文法問題・語句問題が出題されたり、と一定しないところもあるので、大問一・二の文章題二題をきっちりと答えきれるようにしておくと、そこまで後手を踏むことはなくなるのではないか、と推察されます。

大問一は宇江佐真理さんの『備後表』(『幻の声-髪結い伊左次捕物余話』より・文藝春秋社1997年4月→文春文庫2000年4月文庫化)。表題作は別冊文藝春秋219号にて書かれたもので、中村芝翫さん(当時は中村橋之助さん)主演でテレビドラマ化されたこともある、時代小説の逸品です。時代小説は神戸女学院中学校よりも大阪府下の女子校や共学校でよく出題されるので、少々驚かれた人も多かったかもしれません。

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