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明日ノ澪
2024年1月27日 23:20
彼女の話す言葉全てが詩であり、その全てが僕の文学だった。「海ちゃん。僕はお酒に酔っていてね、」地元、京都の山道を1時間以上歩いてやって来た此処からの帰り道は、わからない。お金もない。携帯電話もない。光の方を見下ろすと、ちっぽけな街頭や、ちっぽけな家々が、隣合って突っ立っている。僕の手元には、殆ど空になった缶ビールと、分厚い手紙の束。去年の冬に彼女から届いた、薄いみずいろの封筒
2024年1月23日 03:02
不意に訪れた小春日和。開店十分前のパン屋に到着し、僕は焼けたパンを棚に並べる。高校を卒業してから三年間ずっとこの生活。朝と昼の慌ただしい空気から、ゆったりとした夕焼け色の時間の流れに変わっていった。空いたトレーの片付けをしていると、花の香りがしたので振り向いた。「あれ、木村くん?久しぶり」「あ、え、ひなた先輩……!お久しぶりです……!」「わたしが高校卒業してから一度も会ってなかっ