2020年 個人的ベストアルバム50 by Ashira
いつも年末になるとTwitterで年間ベストアルバムを発表しているのですが、今年は某感染症の影響で家に居る時間が増えてしまったという事もあり、折角なのでとnoteにも記事を書いてみました。
今年聴いたアルバムの中から特に好きだったものを50枚選んでいます。
並びは基本順不同ですが、トップ5を選ぶなら最初に書いた5枚のアルバムかなと思います。自分自身の備忘録も兼ねて簡単な解説も書いております。拙すぎる文章ですが、新たな音楽の出会いのきっかけとなって貰えれば幸いです。
MOLCHAT DOMA - MONUMENT
密かに盛り上がりを見せているソヴィエト・ウェイヴ/ロシアン・ドゥーマー・ミュージックシーンを代表する存在であり、個人的に今最も好きなバンドでもあるベラルーシ出身の「Molchat Doma」3rdアルバム。正に現代版ソヴィエト・ディスコなマシンビートとシンセサウンド、そしてこの地域ならではの低体温なボーカルが素晴らしい1枚です。独裁国家ベラルーシから2020年にこの音が鳴らされ、それが世界で受け入れられているという所からも現代ポストパンクの最重要盤ではないかと思います。
kairon;IRSE! - POLYSOMN
フィンランドのシューゲイザー/サイケデリックロックバンド「kairon;IRSE!」の最新作。圧倒的な轟音とプログレッシブロックの要素も感じられる複雑でドラマチックな構成とリズム、北欧らしい美しいメロディーを堪能できる作品。アルバム通しての完成であれば今年1番かもしれません。シューゲイザーの更なる可能性を感じました。
CRACK CLOUD - PAIN OLYMPICS
カナダ出身のポストパンク集団Crack Cloudの1stフルアルバム。
以前リリースされたEPと同じくヒップホップやジャズを通過したノー・ウェイブ/ポストパンク的サウンドであるものの、同郷Arcade Fireにも通じるようなスケール感も纏ってきました。ディストピアな空気感、ビジュアルも素晴らしい。収録曲「THE NEXT FIX」は今年DJで最も多くかけた曲な気がします。
THE LEMON TWIGS - SONGS FOR THE GENERAL PUBLIC
若き天才ダダリオ兄弟によるバンドの3rdフルアルバム。先行で配信されていた「The One」のメロディーに一瞬で心奪われ、かなり高い期待値でアルバムを待っていましたが余裕で超えてきた感があります。古き良きグラムロックやパワーポップ、サイケロックをベースにしながら、しっかり現代の音に仕上げているのは流石だなと思います。
SAULT - UNTITLED (RISE)
未だ謎多きロンドンのネオ・ソウルバンド。今年リリースされた「UNTITLED (Black Is)」に続く2020年2枚目のフルアルバム。「UNTITLED (Black Is)」は人種差別への怒り・反抗をコンセプチュアルに表したヘヴィーな作品でこちらも傑作でしたが、今作はアフロファンクなどの要素も取り入れたより軽やかなサウンド(しかしやはりアートワーク通りの漆黒の空気感)で希望を感じさせるアルバムになっています。ちなみに「UNTITLED (Black Is)」もベストに入る傑作でしたが、枚数の関係でこちらのアルバムのみセレクトしています。
GLOBAL CHARMING - MEDIOCRE, BRUTAL
徐々に注目を集め始めているオランダのギターロック/ポストパンクシーンから登場した新人バンドの1stアルバム。The Fallを思わせる隙間だらけのダウナーポストパンク「Office Hell」「Soft Fruit」がクセになり何度も繰り返し聴いていました。「Curve Ball」のようにSPORTS TEAM好きにも響くであろう疾走ギターロックも。ミックスは世界中で引っ張りだこのMikey Young!
PERFUME GENIUS - SET MY HEART ON FIRE IMMEDIATELY
Mike HadresことPerfume Genius、5作目のアルバム。前作「No Shape」も傑作でしたが、さらにアレンジの深みが増し、エネルギッシュになった今作も素晴らしかったです。初期の儚く内省的なサウンドからここまで力強く進化し、世界的に評価されるようになるとは思っていませんでした…。
MONOPHONICS - IT'S ONLY US
Colemine Recordsを代表する存在であるベイエリアのソウル・バンドMonophonics最新作。良質なソウルをリリースし続けているColemine Recordsの中でもサイケ色が強いバンドですが、今回は今まで以上にソウルフルなメロディーが際立っていました。Kenny Finniganのボーカルも相変わらず良いです。
KATE NV - ROOM FOR THE MOON
ロシアのアヴァンギャルド・ポストパンクバンド「Glintshake」のボーカリストでもあるKate Shilonosovaのソロプロジェクト。70年代〜80年代のロシアと日本のポップ・ミュージックにインスパイアされたという本作は、エレクトロニカ/アンビエント/ニューエイジとシンセポップの要素が絶妙なバランスで融合したサウンドに、ロシア語と英語と日本語が織り交ぜられたボーカルが合わさり美しく不思議な世界観を作っています。ロシアのアーティストの中でも今最も世界的に評価されている存在ではないでしょうか。
CHOIR BOY - GATHERING SWANS
Adam Kloppを中心に結成されたソルト・レーク・シティのシンセポップバンドChoir Boy 2ndアルバム。The SmithsやThe Cureを彷彿させるような切ないメロディーとロマティシズム、キラキラと輝くシンセサウンドが素晴らしい1枚。Adam Kloppが何故か赤パンツ姿で歌うMVもゾンビジャケも最高。Death Bells、Riki、Private WorldなどDais Recordsは今年だけでも良作連発でした。
HAIM - WOMEN IN MUSIC PT. III
実はこれまであまりHAIMを聴いていなかったのですが、ワイルド・サイドを軽やかに歩くような「Summer Girl」が気になりアルバム通して見事にハマりました…。素晴らしすぎた「Summer Girl」含む先行リリース曲はボーナストラック扱いとなっていますが、アルバム本編もそれらの曲に全く引けを取らない名曲揃いでした。
ELLIS - BORN AGAIN
カナダ出身のシンガーソングライターLinnea Siggelkovによるプロジェクトのデビューアルバム。プロデュースはSnail MailやYumi Zoumaを手がけるJake Aron。Mazzy StarやSlowdiveを連想するメランコリックで儚いシューゲイズ/ドリームポップサウンドが染みる1枚でした。最近聴いたドリームポップをベースにしたSSWの中でもトップクラスに好かったです。
ALDOUS RH - RESPECT 4 DEVOTION
EGYPTIAN HIP HOP のフロントマン Al Robinsonによるプロジェクトのデビューアルバム。PrinceやTodd Rundgrenといった先人たちへの憧憬も感じつつ、全編通して漂うメランコリックなムード、そして少し気だるいファンクネスが極上のインディー・ブルーアイド・ソウルアルバムでした。
CAVERNZZ - II
DeathcrashのフロントマンであるTiernan BanksとJoe Taylorによる新興レーベルWarm LaundryからリリースされたMilton Keynesによるプロジェクト。このレーベルもこの方も全く知らなかったのですが、BIG LOVE RADIOで紹介されていた「Cleaned」が気になりレコードを購入。「Cleaned」を聴いた時はSlintやBlack Country,New Roadのようなサウンドかと思いましたが、切ないメロディーのローファイオルタナな曲や、夢の中を漂うようなアンビエント要素を感じる曲なども収録されています。ここ最近知ったアーティストでは一番衝撃でした。
PEEL DREAM MAGAZINE - AGITPROP ALTERNA
N.Y.拠点のJoe StevensによるプロジェクトPeel Dream Magazinの2ndアルバム。名門Slumberlandから。各所で言われている通りMy Bloody Valentine × Stereolabな「Pill」で完全にやられてしまいました。クラウトロックの要素やYo La Tengoも連想するような浮遊感溢れる曲もあり、単なるシューゲイズリバイバルではない傑作アルバムでした。本作のアウトテイクEPに収録された「New Culture」もマイブラな名曲!
THE STROKES - THE NEW ABNORMAL
やっぱりThe Strokesはかっこ良かった…な1枚。先行公開された「At The Door」がシンフォニックな造りでどんなアルバムになるか想像つきませんでしたが、瑞々しいギターロック「Bad Decisions」や80'Sシンセポップな「Brooklyn Bridge To Chorus」などで構成されたポップな前半、「At The Door」から始まるややダークサイドな後半という原点回帰と新機軸を感じるアルバムでした。
SHITKID - 20/20 SHITKID
スウェーデンの ÅSA SÖDERQVISTによるプロジェクト。元々グランジやガレージロックからの影響を感じるアーティストでしたが、今作は溶けるようなベッドルームポップの要素が強く押し出されている…のですが、このアルバム、それだけでは無い特別な何かを感じます。上手く言語化できないのが悔しいのですが。
SUFJAN STEVENS - THE ASCENSION
Sufjan Stevens5年ぶりの新作アルバム。「崩壊しつつある世界への告発」「アメリカのカルチャーが持つ病に対する抗議」といったコンセプトを掲げた本作。実験的なエレクトロやアンビエントの要素を取り入れたサウンドは悲哀や危機感を体現するようでありながらも、彼ならではの優しい歌声、美しいサウンドスケープによって心地良く響いてくる傑作アルバムです。
SPORTS TEAM - DEEP DOWN HAPPY
ロンドンのブライテスト・ホープなギターロックバンドSports Teamのやっと出たデビューアルバム。これまでリリースされてきたシングルがどれも傑作でしたが、アルバムも期待通りのクオリティでした。Arctic MonkeysやThe Cribsといった00年代のギターロックサウンドに、Pulpのようなグラマラスな雰囲気も。2020年代のインディーシーンを牽引するギターロックヒーローになることを信じています。
ARTHUR - HAIR OF THE DOG
ペンシルヴァニアのバンドJoy Againのメンバーによるアルバム。おもちゃ箱的なキラキラしたエレクトロサウンドに泣きのメロディーが乗った素晴らしい作品。USオルタナ・ヒップホップ界の雄であるWHY?など連想したりしました。レコードも流通しておらずほぼ知られていない存在ですが、本当に曲が良いです。
YVES TUMOR - HEAVEN TO A TORTURED MIND
前作「Safe In The Hands Of Love」が世界的に高い評価を得た奇才Yves Tumorの最新アルバム。前作に引き続きエクスぺリメンタルな音作りはそのままに、サイケデリックロックやグラムロック、モダンポップの要素も融合させた新しいソウルミュージックが圧巻の1枚でした。強烈なビジュアルも相変わらず良いです。
THUNDERCAT - IT IS WHAT IT IS
もはや世界的スターとなったベーシストThundercatの最新作。Flying Lotusとの共同プロデュースで、Ty Dolla $ign、Childish Gambino、Kamasi Washington、Steve Lacy、Steve Arrington、Louis Coleなどなど豪華すぎるアーティストが参加。ソウルやAOR、フュージョンに接近した楽曲で今まで以上にメロウで普遍的な1枚になっているように感じます。まんまLouis Coleな曲のタイトルがI Love Louis Coleだったのには笑いました。
SHE PAST AWAY - X
トルコのゴス/ダークウェイヴバンドShe Past Awayのリミックスアルバム。Ash Code、Boy Harsher、Selofan、Soft Moonなどの同世代のゴスポストパンクシーンを代表する盟友たちから、Clan Of Xymox、Front242といったレジェンドまで参加という超豪華盤。もちろん一切ハズレなしのダークウェイヴ好きにはたまらないアルバムでした。
SOFT KILL - DEAD KIDS, R.I.P. CITY
Tobias GraveとOwen Glendowerにより結成されたポストパンクバンドの6thアルバム。前作まではダークな印象がありましたが、今作はCureを引き合いに出してしまいたくなるメランコリックなポストパンク/ネオサイケサウンドになっています。彼らの最高傑作と言われてるのも納得の1枚。
TENCI - MY HEART IS AN OPEN FIELD
シカゴの4ピース・インディーフォーク・バンドのデビューアルバム。スティール・ギターやチェロなどを使用しルーツミュージックの要素が色濃く感じられながらも、しっかりと現代的なインディーフォークに仕上げている良質なアルバムでした。Jess Shomanのヴィブラートを効かせた甘美なボーカルも素晴らしいです。
SILVERBACKS - FAD
ダブリン出身の5人組バンドデビューアルバム。同郷でもあるGirl Bandのベーシスト、Daniel Foxがプロデュース。Franz FerdinandやThe Cribsのようなポップなポストパンク/ギターロックに、程よく実験性もブレンドされておりなかなかの良作です。少し過小評価されているような気がしますが、Fontaines D.C.やDry Cleaningといった新世代のポストパンクバンドと併せて要注目したい存在です。
THE COOL GREENHOUSE - S.T.
ロンドン出身のポストパンクバンドのデビューアルバム。ひたすら反復し続けるフレーズに、Tom Greenhouseの呟くようなボーカルが乗ったサウンドはどこか呪術的でもあり中毒性が高いです。Global CharmingやEXEKのようにミニマルでダウナーなポストパンクの波も来ているかもしれません…。
ETHAN P. FLYNN - B-SIDES & RARITIES
イングランドのハロゲイト出身のシンガーソングライターによる「B-SIDES & RARITIES」という名の1stアルバム。FKA TWIGSの最新作「MAGDALENE」に参加するという大役を果たした後にもかかわらず未だに謎の多い彼ですが、このアルバムはローファイ、サイケデリックポップ、R&Bなど複数の要素を感じる曲調に、希望と悲哀が同居するようなサウンドが素晴らしい作品になっています。
KEVIN KRAUTER - FULL HAND
米ブルーミントン拠点の4ピースバンドHoopsのベーシスト、Kevin Krauterのソロアルバム。もはやHoopsより人気が出てきた感がありますね…。ひたすら甘いメロディーと浮遊感、そして多幸感に溢れた、正に虹がかかったジャケット通りのアルバムでした。
RINGO DEATHSTARR - S.T.
現代のシューゲイザーシーンを代表するバンドRingo Deathstarrの久々のアルバム。今まで通りの轟音シューゲイズナンバーはもちろん健在ですが、今作はCocteau Twinsなどの80年代4ADのような繊細で儚い楽曲も増えて新しいアプローチも感じられました。1月にギリギリ観れた来日公演も最高でした。
PET SHIMMERS - TRASH EARTHERS
既に一部では話題になっているUK7人組バンドの今年2枚目のアルバム。The Flaming LipsやBeach Boysにも通じるような、しかし確かに今の音だと感じられる極上のインディーサイケデリックポップアルバム。Hapyness、Porridge Radioとのジョイントツアー(観たい!)も決定しており今後が本当に楽しみな存在です。
SUPER BESSE – UN RÊVE
ブレイク中のMolchat Domaと同じベラルーシ出身のニューウェイヴバンドによる3rd アルバム。初期の頃は正統派のソヴィエト・ウェイヴサウンドでしたが、このアルバムではテクノ的なサウンドにより接近した内容になっています。レコードなど日本では全く流通していませんが、Molchat Domaやロシア周辺のポストパンク/ダークウェイヴ好きな方には是非聴いて欲しい1枚です。
HOLY HIVE - FLOAT BACK TO YOU
ShacksやBrain StoryといったBIG CROWNのインディーソウルバンドの登場と活躍のおかげで、ソウルとインディーポップ/ロックの境界線が薄くなっていきているように感じます。そのBIG CROWNからリリースされたHoly Hiveはやはり極上のインディーソウルサウンド。ファルセットを多用した甘いボーカルと美しい泣きのメロディーが最高なアルバムでした。
KLLO - MAYBE WE COULD
オーストラリアのエレクトロポップデュオKlloの2ndアルバム。ダンサブルなビートと透明感のあるサウンド、そして全体に漂うメランコリックなムードが絶妙な1枚。リードトラック「Still Here」はThe XXの「On Hold」を連想する多幸感溢れる名曲でした。
PILLOW QUEENS - IN WAITING
アイルランド・ダブリン出身のガールズバンドPillow Queensのデビューアルバム。エッジの効いたギターサウンドと切なく伸びやかなメロディーが泣ける1枚。同性同士の恋愛関係を歌ったリードトラック「Handsome Wife」は個人的にも今年のベストのかなり上位に入る好きな曲です。
KING KRULE - MAN ALIVE!
2010年代を代表する存在であった孤高のSSW、King Kruleの2020年作3rdアルバム。ロックンロールやヒップホップ、ジャズ、ダブ、ソウルといったあらゆるジャンルの要素がありながらも、非常にタイトに自分のスタイルとして落とし込んだ、やはり天才だったと思い知らされる傑作でした。
BANANAGUN - THE TRUE STORY OF BANANAGUN
オーストラリア・メルボルン出身のNick Van Bakelを中心とする5人組バンドの1stアルバム。1stシングル「Do Yeah」を聴いた時はKing Gizzardタイプの王道サイケ路線かと思っていましたが、アルバムはアフロファンクの要素も取り入れたトロピカルでポップなサイケデリックロックサウンドが素晴らしい傑作でした。
LEBANON HANOVER - SCI-FI SKY
現行のダークウェイヴ/ポストパンクシーンを代表するデュオLEBANON HANOVERの最新作。メランコリックで閉塞的なメロディーとシンセサウンド、突如鳴り響く切り裂くようなディストーションギターが2020年の空気感にもマッチしており愛聴していました。
HAPPYNESS - FLOATR
3人から2人編成になり、そしてAsh Kenaziは本当の自分の姿であるドラァグクイーンとなってリリースされたサウスロンドンのギターロックバンドHappyness、3rdアルバム。初期Teenage Fanclubを思わせる切ない轟音ギターとElliott Smithばりのメロディーが生々しく鳴らされる傑作。個人的に今年1番泣けたアルバムです。
GORDI - OUR TWO SKINS
オーストラリア・シドニーを拠点に活動するシンガーソングライター Gordi の2ndアルバム。農場にある小さなコテージに楽器を持ち込み1カ月という短い期間で制作された、牧歌的で透明感のある1枚。
YUMI ZOUMA - TRUTH OR CONSEQUENCES
ニュージーランド出身のドリーム・ポップバンドYumi Zoumaの3rdアルバム。これまでのリリースがどれも良作でしたが、今回も80'sシンセポップのキラキラ感と切なくブリージンなメロディーが心地よいです。過去作よりもダンス色が強いですが、熱くなりすぎないと言うか、クールさを保っているところも好きでした。
RUDY DE ANDA - TENDER EPOCH
メキシコ出身・カリフォルニアで活動するSSW、Rudy De AndaがColemineのサブレーベルKarma Chiefよりリリースしたアルバム。トロピカルだけど切ない、蕩けそうな青春ポップソング/チカーノソウルが詰まった素敵な1枚。ネオアコの系譜を感じるギターとメロディーもとても良いです。
KASSA OVERALL - I THINK I'M GOOD
ジャズ・ミュージシャン、シンガー、プロデューサー、ドラマーなどマルチな才能を持つKASSA OVERALLが名門Brownswoodからリリースした最新作。ジャズにヒップホップや実験音楽などの要素を見事なバランスでクロスオーバーさせジャンルの垣根を越えた傑作でした。
KING GIZZARD & THE LIZARD WIZARD - K.G.
コロナ禍でも止まらないオーストラリアのサイケロックバンドKing Gizzard & The Lizard Wizardの、もはや何枚目か分からない最新作。19年はポップな「Fishing For Fishies」とメタルアルバム「Infest The Rats' Nest 」という全くタイプの異なる2枚のアルバムをリリースし驚かされましたが、今作は再びサイケデリック路線に戻っています。しかしそこにアナドルロック(トルコのサイケロック)の要素を感じるオリエンタルなリフやメロディーが多用されており単なる原点回帰に留まっていないところが流石なアルバムでした。
CHRONOPHAGE - THE PIG KISS'D ALBUM
テキサス・オースティンの4人組ロックバンドChronophageの2ndアルバム。D.I.Yな感触のポストパンク/オルタナティブロックサウンドという軸は前作通りですが、歯切れの良いギターとリズム隊は鋭さを増しており泣けるくらいかっこ良い。今作で加わったチープな電子音も良い味出しております。
FONTAINES D.C. - A HERO'S DEATH
1stアルバムが世界的に大絶賛されたダブリンのポストパンクバンドの2ndアルバム。エッジの効いたギターやタイトなグルーヴはさらに研ぎ澄まされ、サイケデリックロックの要素やBeach Boysを思わせるコーラスも登場し、ポストパンクの枠にとらわれない進化を感じる傑作アルバムでした。
NO JOY - MOTHERHOOD
Sonic Boomとのコラボ作も話題になったカナダのシューゲイズアーティストNo Joyの最新作。まるで「Screamadelica」のようなダンスビートやパーカッシブなリズム、エレクトロニカサウンドを大胆に取り入れ轟音ギターと融合させた、シューゲイザーの新たな解釈を見せられた傑作でした。
SPUNSUGAR - DRIVE-THROUGH CHAPEL
スウェーデン・マルメで活動するシューゲイザー/オルタナティブロックバンドのデビューアルバム。Curveを思わせる打ち込みやインダストリアル要素にノイジーなギター、叙情的なメロディーが乗ったサウンドが非常に良いです。今年のシューゲイザー隠れ名盤かと。
EARTHEATER - PHOENIX: FLAMES ARE DEW UPON MY SKIN
NY拠点のアーティストAlexandra DrewchinによるソロプロジェクトEartheaterの最新作で、スペインのサラゴサにあるガラスの立方体施設(ETOPIA Center for Art and Technology)で制作されたアルバム。火山や溶岩といった地質学的要素にインスパイアされたという本作では、ギターやピアノ、チェロなどの生楽器に時折挿入される電子音やノイズが美しくも不穏な印象を感じるエクスペリメンタルフォークの傑作でした。オペラを思わせる歌唱法もドラマチックで素晴らしいです。
WEEKND - AFTER HOURS
ビルボード・アルバム・チャートで4週連続1位を獲得したWeekndの4thアルバム。アンビエントやチルウェイヴの要素を感じる前半部分から、80’sシンセポップサウンドを取り入れた後半部分へ展開する本作は光と影、静と動、ポップとエクスペリメンタル、そして過去と未来という様々な要素が同居するサウンドをWeekndの多彩なボーカルで紡いだ革新的なアルバムでした。2020年を象徴する1枚とも言える傑作だったと思います。
以上、今年の個人的ベストアルバム50枚でした。もちろん他にも良かったアルバムは沢山あります。挙げるとキリがないですね。世界が一変してしまい悲しみに包まれた2020年でしたが、素晴らしい音楽が変わらずリリースされ続けたのは大きな希望でした。
来年は年明けからShameの2ndアルバムやBlack country,New roadの1stアルバムなど、早速期待の新譜のリリースが控えています。2021年も新たな音楽との出会いを楽しみにしています。