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カルト説明:テルモー―狼の父

1.神話と歴史
 ハイキムとミキューは獣の部族の創始者である。彼等には大勢の子供がいたが、最後に生まれたのが哺乳類の母である。彼女もまた、肉食獣の神であるフラーラを含む、多くの子供を産んだ。彼女の最も偉大な息子は、狼の父であるテルモーである。彼の一党は、テルモリそしてウルフランナーとして知られている。
 神の時代のテルモーについて伝わる物語はほとんどない。テルモリもバラザールの犬人族も、それぞれの神がお互いに出会った日のことを思い出す。この日の戦いの結果は誰も知らないが、この2つの部族は、何世紀も接触していないにも変わらず、相互に永遠に続く憎しみを抱いている。ドラゴン・パスの猫の民は、彼等の神がテルモーを打倒して、その部族を追い散らしたという伝説があるが、その際に、インキンは自分の尻尾を失っている。一方、テルモリの部族には、彼等の神が最初の猫を追いまわし、ついには捕らえ(そして食べ)たという(バラザール人の伝説に似た)別の物語が伝わっている。
 テルモリは、典型的なありふれた狼として描写されるが、狼の民が行う芸術的行為として描かれる刺青の中では、狼の頭をもつ人間として描かれることも少なくない。
 部族の者は、死んでも、再びテルモリ・スンチェンとしてカルトに生まれ変わるが、それは人、あるいは狼として転生するのだろう。
 死んだテルモリの遺体は、彼等の縄張りの狩場で風雨に晒されるままにする。狼はテルモリの死体は喰うことはないが、その死体が骨になるまでその他の死肉喰らいから守る。
 テルモーの主要なルーンは獣と移動であるが、ナイサロールに付き従った祖先を持つテルモリの信仰には、混沌のルーンも関係する。

2.カルトの生態
 テルモリは、遥かなる昔、部族の四つ足の者と二本足の者との間に違いがなかったことを知っている。初めて、テルモリ以外の人々とテルモリが出会ったとき、その人々は二本足のテルモリを狼ではなく人間だと呼んだ。テルモリ族は、今でも自分達が二本の足で歩く狼であると信じており、全ての狼が自分達の兄弟であることを知っている。彼等は、他の者はテルモリを自分たちと同じような人間だと見なしているが、自分達は人間とは異なる存在であり、実際には彼らとの関係はないことを知っている。
 テルモリの社会生活全体は、狼の兄弟と結びついている。テルモリは狼と共に生活し、狩りをし、子供達は仔狼と遊ぶ。カルトは、世界中の彼等の祖先や兄弟との繋がりを提供している。文明の発達は、あらゆる地域でこのカルトの地位を貶め、しばしば絶滅させられたり、永久的に追放されたりしたが、それでも彼等は、己の力で世界に自分達の居場所を勝ち取った。そのため、彼等はグローランサにおいて最も成功したスンチェン族の一つとなっている。
 テルモリは世界でも孤立した部族であり、同盟者や友人はほとんどいない。ドラゴン・パスでさえ、サーターの部族の一つに数えられてはいるものの、近隣の住民からは恐れられ、嫌われており、比較的ひっそりと生活している。彼等が嫌われるのは、他人の領地で無差別に狩りをする傾向があるからだ。彼等は人狼として恐れられており、一般的には混沌に汚染されていると信じられており、狼の姿の時には人肉を食べるとされている。テルモリ自身は、ほとんどの人間、特に軟弱な都市住民に対して軽蔑の感情を抱いているが、彼等を世界中で狩り立てていたのが同じ「軟弱な都市住民」であったということを都合よく無視している。テルモリは、他のスンチェン人とは仲が悪く、バラザールの犬の民とドラゴン・パスの猫の民とは永遠の仇敵関係にある。
 聖祝日は、獣の力が最も強くなる荒の日である。その日は、グバージの呪いのために、呪われたテルモリは日没から夜明けまで狼の姿でいなければならない。嵐の季の移動の週、荒の日は、カルトと部族にとって最も神聖な日となる。

テルモリ

3.世界におけるカルト
 何世紀にもわたる強制的な移住の結果に寄り、ジェナーテラのほとんどの地域では、テルモリは知られていない。フロネラには孤立したテルモリの一氏族がいるが、彼等は賢明にも丘陵地帯に留まっている。この氏族が、どれほどの数のテルモリを擁するのかは、誰も正確には知らないが、一部の人々はテルモリの力が第1期の頃の状態にまで高まっているのではと心配している。ドラゴン・パスのテルモリ族の運命は、他の地域の部族との戦争の結果によって浮き沈みする。彼等は、今でもサーター王国に属しているが、ルナー帝国に忠誠を誓っていたマボダー部族を滅ぼしたことで、帝国の介入を招きほぼ壊滅の状態に陥った。
 テルモリが大きな力を持っているのはドラストールの地だけである。彼等はナンタリ大地に何世紀もの間、住みついている。彼等は、ドラストールの他に、アナディキやビリーニで狩りをするが、定住している隣人たちの煩わしい報復を巧みに躱している。彼等が狩り立てられたときは、ドラストールに逃げ込み、生き延びることに長けている。
 テルモリの星人には、普通の狼よりも高い知能を持ち、大柄な体格の「狼の兄弟」と呼ばれる連れ合いがいる。この狼は、男女ともに入信の儀式の一環として獲得することができる。この狼が自然死であれ、殺されたのであれ亡くした場合、一般には別の狼を得ることはない。氏族内の各個人の能力は、仲間としている狼の能力によっても左右される。そのため、巨大な狼の兄弟がいる小柄な戦士は、狼を亡くした強靭な戦士よりも上位に位置付けられることもある。
 テルモーの祈祷師は、神の意志を読み解く。彼等は、季節の儀式でテルモ―の助力を求め、殺した獲物の一部を神に捧げる。彼等は部族や氏族、その指導者に対して直接の権限は持たないが、その意見には大きな重みがある。複数の祈祷師を擁する部族では、それぞれの祈祷師が方針を決定しますが、最も力のある祈祷師が最大の影響力を持っている。テルモリのそれぞれの部族と氏族には、季節毎に儀式が行われる聖地がある。ドラストールのテルモリの氏族の多くは、小寺院と言ってよいほどの規模の聖域を持つ。
 
4.入信
 全ての狼は、混沌との繋がりを持たないテルモ―を祖先として崇拝している。成年になった狼はカルトの入信者とみなされ、小さな氏族でも小寺院を維持している場合が多いのはそのためである。
 テルモリの両親から生まれた者は皆、狼であると信じられており、自動的に宗教の一部を構成する。部外者との結婚は獣姦も同然と見なされ、死をもって禁止されている。成年になると、部族の正式な一員となる。テルモリは、他の氏族のテルモリに対しては、用心深いもてなしをするが、長期的には個人の行動が関係を決める。したがって、ドラゴン・パスのテルモリは、犯罪や下劣な振舞に手を染めない限り、ラリオスのテルモリに受け入れられるかもしれない。部族からの追放はかなり一般的であり、そのような追放者は他のテルモリの部族に受け入れられることはない。
 部族の出身ではないものは、カルトに入信する前に養子に受け入れられなければならない。儀式は、養子になろうとする者の精神を狼のものに変えるが、その姿は人間のままである。この儀式は極めて困難であり、しばしば、挑んだものは死に至る。儀式において死んだ場合でも、その儀式は成功する可能性があり、その場合は来世で狼、または人間のテルモリに生まれ変わることが保証される。
 部族に受け入れられる者は、部族やその長、またはテルモリの祈祷師のために何か大きな功績を残していなければならない。儀式においては、獣の伝承についての知識や武器の取り扱いについて試され、肉体と精神の試練に耐える必要がある。儀式に成功すれば、その者は養子縁組の際に仲間の狼を得る。
 入信者の義務、奉仕のために納めるものは部族の祈祷師が示す。入信者は、カルトにおいて技能の訓練を受けたり、祈祷師から魔術を教わることができる。戦士は、多くの敵から部族を守るため、常に最高の訓練を受け、魔術を授けられる。

5.狼の戦士(侍祭)の地位
 狼の戦士は、カルトと部族の精鋭戦士である。彼等は戦いで己の力を証明し、氏族長を含む部族内の全ての権力を握っている。テルモリが、傭兵として雇われる場合は、1人以上の狼の戦士に率いられている。
 この地位を得るためには、男であれ女であれ、テルモリであれば、獣の伝承、咬みつき、カルトの儀式等について卓越した知識や技術を持つ必要がある。候補者は、人狼であるか、あるいは呪文によって少なくとも一度は完全な狼の姿になったことがなくてはならない。また、カルトのために偉大な偉業を成し遂げたことがあり、何らかの精神的試練を受け、それに耐えることが必要である。このような試練に失敗した場合、1年間の間は、再度挑戦することはできない。
 狼の戦士は、カルトの侍祭であり、カルトの入信者を指揮できるが、祈祷師の命令には疑問を持たずに従わなくてならず、祈祷師になることもできない。

6.祈祷師の地位
 テルモリが祈祷師になるのは、通常の祈祷師になる要領と同じである。角のある男は、角を持つにも関わらず、常に狼の頭(そしてしばしば胴体も)をもって顕現する。テルモリの祈祷師のフェッチは常に狼の形態をしている。
 部族に加入したテルモリではない祈祷師になることはできないが、代わりに「神造りし者」を意味するイツヴァヌの周りで奉仕する。テルモリの祈祷師の中には、神の道を拒み、独自に祈祷師としての地位を獲得した者もおり、彼等は精霊を召喚したり、狼の戦士のために魔力が付与された刺青を彫ることに時間を費やしている。
 テルモリの祈祷師は主に動物の精霊を扱う。狼の精霊は常に友好的であり、他の肉食獣の精霊は少なくとも中立的である。鹿や羊、ヤギといった狼の餌となる動物の精霊は、敵対的な場合が多く、よくて中立である。その他の動物の精霊は、通常中立だが、犬の精霊や猫の精霊は常に敵対的である。動物以外の精霊もほとんど敵対的であり、祈祷師への協力を拒む。
 テルモリの祈祷師は、カルトの司祭でもある。

7.テルモ―の特殊ルーン呪文
《狼との会話》:
この呪文を使えば、声が届く範囲の狼と会話することが可能になる。対象の説得のために、言いくるめや雄弁を使うこともできる。これは獣に知性を与えるわけではないので、その会話の内容は獣の自然な意識で扱うものに限られる。

《人狼の護り》:
この呪文を、人に使えば、対象者に尾が生え、灰色の毛皮を身にまとい、人狼のように打撃に対する部分的な免疫を得る。魔術、火、鉄等が対象を傷付ける。対象は、毒の影響も受けるし、窒息もする。狼に対して使用しても、同じ効果を得る。人狼に使用すると、防御力が向上する。

《獣の走り》:
この呪文は、対象の手足を狼のそれに変え、四足歩行で走ることを可能にする。移動速度は、二本足のときのそれに比べ、格段に増大するが、両手を使った作業はできない。

《狼の頭》:
この呪文は対象の狼の頭に変化させる。この頭部は実際の狼と同様の咬みつき攻撃を実施できる。この咬みつき攻撃は他の攻撃と組み合わせて使用できる。この狼の頭部は、実際の狼と同様の嗅覚があり、獲物を追跡できる。また、人間との会話がかなり困難であり、狼と会話するには《狼との会話》を使用する必要がある。

8.下位カルト
報復精霊について
 テルモ―のカルトには、報復精霊はいない。凶悪犯罪や下劣な行為(同族殺し、狼食い、異国の魔術の使用等)を犯した者は、カルトと部族から追放される。このことは、他の全てのテルモリの祈祷師に知らされ、追放者が他のテルモリの部族に出会った場合でも、彼らはその者を追放者として扱い、部族に受け入れることはない。その者の獣の兄弟さえ敵対的態度を取る。テルモリの社会において、死をもって罰せられる犯罪は2つだけであり、それはテルモリ以外の人間との性交(獣姦とみなされる)と祈祷師、氏族長、自分の狼の兄弟の殺害である。この罪を犯した者は、死ぬまで追われることになる。このような者に対しては、遭遇した狼は必ず牙を剥く。

9.友好カルト
哺乳類の母
 哺乳類の母は、すべての哺乳類の祖先である。彼女は、自分の子孫に《自己変容》の呪文を授ける。

《自己変容》:
 この呪文は、《人狼の護り》《獣の走り》《狼の頭》の3つ全てと併せて使用する必要がある。それにより、使用者は、巨大な半神めいた狼に変身する。狼の通常の能力はすべて使用できる。また、狼や狼の姿に変化した人狼にかけるとその能力が向上する。

10.備考
人狼について
 一般的な通説とは異なり、テルモリは皆、人狼というわけではない。ナイサロールに使えた者達の子孫である「呪われた者」は獣性を抑えることができず、荒の日の日没から夜明けにかけて無意識のうちに人狼になる。このような者達は、テルモーのルーン呪文によって自ら狼に変化することもある。ナイサロールに従うことを拒否したテルモリの子孫である「純粋なる者」は、人狼ではなく、荒の日に無意識に狼に変身することはないが、ルーン呪文よって狼の姿になることがある。

曜日について
 赤い月の満ち欠けは1週間周期で行われます。人狼への変身を強制される日(荒の日)がルナー帝国の満月の日であることから、人狼とテルモリは月の周期と結びついていると一般に思われており、これは特にルナー帝国の敵対者の間では強く信じられている。これは偶然ではないかもしれないが、誤解ではある。

狼の兄弟
 テルモリは、通常の狼よりも体格がすぐれ、知能も高い狼を飼っている。彼らは生まれた時から共に育てられ、同じ種族であるかのように扱われる。テルモリは、こういった狼と共に狩りをし、暮らしており、成人した者はそれぞれ特定の狼の血を分けた兄弟、姉妹となる。

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