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ゆるやかな肯定と夜明けの爽やかさ。Inverted Angelがガチでおもろかった

こんちくわ〜

最近遊んだゲームの中でInverted Angelがダントツで面白かったので感想のような紹介のような駄文を書きます よければお付き合いください

・どういうゲーム?


あなたの恋人を名乗る知らない女性。でも、ただのストーカーにしては色々なことを知りすぎている。 あなたが入力した推理が"だいたいのニュアンス"で判定されるKawaii Future Mysteryです。インターフォン越しに話を合わせながら、あなたの考える彼女の正体に辿り着きましょう。

(以上Steamストアページより引用)


噛み砕いて言えば、「知らん女が俺くんの彼女だと名乗ってインターホンを押してきたので、ドア越しに会話しながら相手の正体を探るゲーム」です。骨組みとしては、推理アドベンチャーのカテゴリに属します。 

・システムがおもろい

このゲームの最も大きな独自性の一つとして、上記した「あなたが入力した推理が"だいたいのニュアンス"で判定される」という点が挙げられます。

これは何かというと、従来の推理ADV(逆転裁判やダンガンロンパ等)のように、矛盾や疑問点を指摘する際にアイテムを選択するのではなく、

推理のターンに入ると入力窓が出現して、そこに推理を文章として自由入力でき、

自然言語処理AIが文意を判定してくれる、というものです。

例えば、明らかに俺くんが家族にしか話してない内容(実は昔右乳首に黒子があったけどレーザーで焼いた、とか)を彼女が知っていた場合に、

「右乳首に黒子があったことを知っている」

とか入力すると、

AIが「これはあなたの言いたいことですか?→右乳首の秘密」みたいに提案をしてくれ、

それに「はい」と答えると話が進む、みたいな流れです。

(ものの例えで出したので本編に右乳首の話は出てきません)

これの何が面白かったかというと、もちろん新しいシステムによる体験という点もそうなんですが、シンプルに推理ゲームとしての難易度を跳ね上げてるんですね。

先述した逆転裁判なんかは、解答が選択式のため、マジで分かんないときはセーブ&ロードを駆使して総当たりすることも可能でした。(実際自分も何度かお世話になった)

一方でInverted Angelは、自由入力のため、自分でちゃんと答えにたどり着かないと先に進むことができない。

ある程度推理ADVの経験がある自分みたいな人間にとっては、新しく難易度の高い推理ゲームに挑戦できることは大変ありがたく、夢中でバックログを読み漁りました。

もちろんハードルを上げてもいるのですが、台詞等である程度ヒントも出してくれていますし、

選択ではなく、自分自身の言語で、自分自身の意思をゲームに介入させる、というプレイ感自体がとても面白いものなので、もし興味を持たれたら、あまり構えずに気軽にプレイしてみてもいいんじゃないか、と思います。

何よりメチャ安い。800円。やすい!

・シナリオや世界観について

以上でゲームシステムがめちゃ面白いよというところが伝わってたらいいなぁと思うんですが、シナリオ面も相当面白かったです。

以降は多少なりともこのゲームの根幹部分やネタバレ部分に触れるので(魅力を伝えるためにはどうしても触れざるを得ない)、もしこの時点で何も聞かずにやりたいとお思いでしたら引き返してネ。


・メタフィクションと、ゆるやかな肯定

私が思うこのゲームの魅力は大きく2つで、既存のゲームの文脈を踏まえて一つ進めた点と、その結果出力されたものが「ゆるやかな肯定」である点です。

まず(多少なりとも昨今のゲームの流行について知っている人であれば、遊んですぐに分かることなので触れてしまいますが)、このゲームはメタフィクション要素のあるゲームです。

なぜこの点について初めに触れたかというと、Inverted Angelにおいては、それは目玉要素ではなく前提になっているからです。

ここ最近のゲームで、メタフィクション要素のあるゲームとして有名なのは、DDLC(ドキドキ文芸部)かUNDERTALEだろうと思います。

これらにおいては、メタフィクション要素(キャラクターが自身をゲームの登場人物であることを認識している、等)は、ゲームの根幹であり、メッセージの中枢を担っている要素でした。

DDLCにおいては、モニカはプレイヤー自身に対して恋愛感情を抱き、

アンテにおいては、サンズはプレイヤーの「罪」についての裁判を開きます。

彼らは、我々が神の視点にいて、彼ら自身の運命を左右することができる立場にいることを改めて指摘し、再認識させる役割を担っています。

そのシーンは、ゲームにおける一番の盛り上がりどころであり、一番面白い部分でした。私自身も、モニカとの会話も、サンズ戦も夢中で楽しみましたし、これらは大好きなゲームです。

しかし、こうした「指摘」は、やや食傷気味になっているのではないかとも思っていました。

何もこの「指摘」自体はDDLCやアンテが史上初というわけではないですし(メタRPGという意味ではラブデリック製のゲームなんかもありましたし、メタ美少女ゲームは既にニトロプラスもやっていたことです)、ある程度ゲームの歴史や文脈について齧っていると、「あーはいはいこういうやつね」という気持ちになってしまったのもまた事実でした。

実際、Inverted Angel を最初に遊んだときも、ゲームシステムの面白さに惹かれつつも、世界観については「またか…」という気持ちは、正直に言ってありました。

その気持ちを、最後の最後で、いい意味で覆してくれたのが、このゲームの根底に流れる、「ゆるやかな」肯定でした。

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(以降は、自分が一番感銘を受けた点について書きたいのですが、どうしてもラストシーンに触れざるを得ないので、ご注意ください。)

このゲームはルートが複数あり、各エンディングを見るために何度も「彼女が訪れる夜」を繰り返します。

そうして辿り着いた最後のルートにおいて、上記のメタフィクション的な部分について触れるのですが、そこで彼女と俺くんは、「色々あったけど、それでも楽しかったよね」という結論に至り、二人で夜明けを迎えます。

そこには、罪の指摘も、プレイヤーへの一方的な好意もなく、ゆるやかに、これがゲームであることと、これまでのプレイについての肯定だけがありました。

先述したように、メタフィクション要素を作品の中枢に置いている作品は、その出力の結果が肯定にしろ罪の指摘にしろ、ある種の鮮烈さ、強烈さを伴うものでありました。

一方でInverted Angelにおいては、結末に至るまでに本当に色々あるのですが(マジで本当に色々ある)、それらをまるっとひっくるめて、「楽しかった」と締めくくってもらえたことに、なんとも言えない爽やかな嬉しさがありました。

もちろん、どちらの手法が優れているか、という話ではないのですが(重ねて言いますが、私はDDLCもアンテも大好きです)、メタフィクションを描くにあたって、こういったアプローチが可能であるということに、いたく感銘を受けてしまいました。

一見、露悪的なゲームにも見える建付けにも関わらず、こうしたゆるやかな肯定が結論にあったことは、プレイしていてとても意外でしたし、このゲームならではの魅力だな、と思いました。

以上、大変拙い文章で申し訳ないのですが、Inverted Angelの魅力が少しでも伝わったのであれば、こんなに嬉しいことはありません。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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