「藤井隆~私の青い空~」偏見レビューpart2

20年ほど前にMatthew's Best Hit TV(マシューズベストヒットティービー)という番組があった
藤井隆扮するマシュー南が司会を進行する音楽バラエティーだ
あの時間帯のテレビ朝日は面白くて、内村プロデュースやくりぃむナントカ、銭形金太郎にぷっすま、アメトーーク、ぷらちなロンドンブーツ、ちゃんネプなど今ではトップランナーといえる芸人達の帯番組が毎日放送されていた

藤井隆は狂気的だ
品が良く言葉遣いも丁寧に振る舞うが一度スイッチが入れば股間の辺りに両手を広げ「身体の一部がHotHot!HotHot!」と大声で叫ぶギャグがあった。あの憑依されたようなスイッチの入り方はキャシー塚本を彷彿とさせ、もうすごいツボ(ところで誰かタレントの千秋が両手を交互に顔の前で波うつようにしながら「一生懸命やったのに!」っていうギャグやってたの覚えてませんか?)

愛くるしい顔つきに加え面白いのでお茶の間に浸透するには時間がかからなかったように思う。極めつけはCDデビューだ。彼の歌った「ナンダカンダ」という曲は紅白に出場するまでに人気を集めた。

芸人のCDデビュー自体は全く珍しくない。私が当時驚いたのはなんとフルアルバムまで制作したことだ。(1stアルバム「ロミオ道行」)
彼は芸人として売れた勢いで自己紹介がてらCDを出したのではなく、いちアーティストとして曲を発表していたのだ
彼のアルバムの制作陣にはキリンジやオリジナル・ラヴ、(そしてナンダカンダに携わった)GAKU-MC等が参加している
彼は確実にミュージシャンとして積極的に歌を歌っていた

ナンダカンダのヒットから時は4年ほど経ち5枚目のシングルとなる「私の青い空」が発売された
先述したMatthew's Best Hit TVはげらげらと笑えるバラエティー番組なのだが、そのEDで流れたこの曲は暗く静かでしかし綺麗なテクノサウンドだった
キリンジの兄が作詞作曲したこの曲は藤井隆本人からカイリーミノーグのような曲にして欲しいと依頼され出来たらしい

アンビエントにループされるサウンドの中、歌詞は援助交際を彷彿とさせる、その関係性に後ろめたさとやるせなさを反芻しては青い空に憧れる少女、そんな少女を咲いては散る花のように慈しむ男、怪しさをふんだんに散りばめたこの素晴らしい曲をはるかに凌駕したのがMVだ
身体の一部がHotHot!!と叫んでいたときと変わらないように藤井隆は何かを憑依させ、踊るこの振り付けの素晴らしさ!青を基調とした全体的に暗めな世界観!美しいと気持ち悪いは表裏一体でどちらも人の目を妙に引くことは変わらず、しかし見事にナルシシズムを美しさに昇華したこのMVがMatthew's Best Hit TVのEDで流れる度に私は釘付けになっていたのだ


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