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序の段

3月にメディアを立ち上げた。その途端に、書きたいという気持ちがゆらり、ゆられて消えていったのを、腰掛けでひとりぼうっと眺めていた。目的もやりたいこともなく、ただ書くということを続けていた自分自身に、興味本位と少しばかりの褒美としてきちんとした家を建ててあげたものの、そこが帰る場所になることはなさそうだ。

目的はないが、メモ書きでもない。
読まれなくては仕方がないと、思わずにはいられない。何人も「あなたの書くものが好きだ」と言い残して通り過ぎていく。そのくせ「昨日書いたやつ、見てくれた?」と聞いて頷かれることは皆無だった。人を立ち止まらせるためには何を書いたらいい?そんなことを考えながら決してタダじゃない時間がどれだけ過ぎても、思い浮かぶものは貧相に、ぎこちないものばかりだった。

それでも、2020年を生きる20代だ。スマートフォン1台あればいい。出会した公園のベンチで寝るような毎日であればいい。立派な家を建てる必要もなければ、いそいそと机に向かって格好ばかりの林檎柄PCの前で頭を抱える必要もない。綺麗な知識はいらない。ただ1冊の真っ白なノートに、その日、その時書きたいことを殴り走らせれば良い気すらして、ここを序の段とする。

現実でも、非現実でもないものを。

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