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「花は窓」石川朝24.コントロールしなくていい

「スーツ、持ってないの?」

大学に入ってすぐの時、闘う部活に入りたいと思ったわたしは何を勘違いしたのか合気道部に入った。新入生歓迎会でスーツが必要だと言われるもスーツどころか黒のパンプスすら持っていなかった。

「じゃあ入学式の時はどうしたの」と先輩に笑われる。

あたりめえにワンピースだよ💢


真っ黒でウエストがぎゅっと絞られててポケットみたいにファーのポンポンが3つずつついてるノースリーブのワンピース。
まさかの寝坊して入学式は終わっていたけど代表の挨拶で来ていたスノーボーダーの平野歩夢くんに会いたいがために張り切って武道館まで行った。
みんなスーツを着ていて、ひとりだけ幼稚園の入園式みたいな格好のわたしは武道館でギャン浮きしていた。
しかも平野歩夢くんには会えなかった。
しくしく

仕事=スーツ
という概念が小さい時からあまり結びつかなかった。お父さんが滅多にスーツを着なかったこともあるのかもしれない。まあ、太って入らなくなっただけかもしれないけど。
電車の中で同じ年の子たちがスーツをきちんと着て少し緊張した面持ちで座っている。
お前だけだよ、と言われている気がしてなんだか窓の外を眺める。
大人になるってなんだろう、とか思う
誕生日が特別な日じゃなくなっていくこととかビールっておいしいんだなって思えるようになることとかすきなことにお金を使えるとか自分の責任を自分でとるとか自分で生活できるようになるとか。
うわー先のこと考えたくないなーとか、
ずっとずっとこのままでいたいと思ったって時間だけは進んでいる。そして環境が変わるといつのまにか変わっている。
今までずっときらいでやりたくなかったことが最近好きなことになりつつある。
うれしい気持ちと、ほら見ろバーカって気持ちと、ちょっと後悔してる気持ちが入り混じりながら
なんか、自然にそうなるべき時を待つのもいいのかもしんないなとか思ったり、した。

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