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ネタバレが生む緊張感

 物語は先がどうなるか分からないことや、予想と反する結末になることが面白さの源泉だったりしますが、先がどうなるか分かっていることがある種の緊張感を生み出し Twitter で話題になっているマンガがあります。

「100日後に死ぬワニ」というその四コママンガは、基本的には1日1話投稿される、ワニの日常を描いたマンガなのですが、普通のマンガと違うのはそのタイトル通り100日後に死ぬという設定になっていて、毎回最後に「死ぬまであと〇日」とカウントダウンされていっていることです。

 別にワニが重病になっているとか危険な場所にいるとかではなく、マンガとしてはオチもはっきりしないようなある種他愛もない内容なのですが、100日後に死ぬということが分かっているだけで一気にその意味合いが変わってきます。

 作品への感情移入という意味では読者-作品という壁を取り払い、作中にのめり込んでもらった方がよいはずなのですが、このように読者という地位であることで分かる情報(=あと〇日でワニが死ぬ)を強調することで、ある種「神の視点」から作品を楽しむ仕掛けになっています。

 しかし必ずしも新しい仕掛けというわけでもありません。例えばヒットしたアニメ映画「この世界の片隅に」は戦時中の広島を舞台にしたものですが、作中で具体的な日付が示されていることで、登場人物は知らない1945年8月6日の原爆投下の日に向けた緊張感を見る側は感じることになります。

この世界の片隅に【映画】監督:片渕須直、原作:こうの史代、音楽:コトリンゴ、制作:MAPPA 声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大konosekai.jp

 また日本赤軍を題材にした山本直樹『レッド』では、登場人物の頭に物語の中で死んでいく順番を示した数字が常に表記されています。これは登場人物には見えない設定なのですが、読者に将来をあらかじめ示すことで穏やかな場面でも常に緊張感を漂わせる効果を持たせています。

 そしてあと〇日、といえば「宇宙戦艦ヤマト」のテレビ放送の最後に流れた滅亡の日までのカウントダウンかもしれませんが、これは登場人物も認識していた数字のはずですので、やや違うでしょうか。

「100日後に死ぬワニ」とこれらの作品との違いといえば、メディアが Twitter でリアルタイムに1日1日寿命を縮めていっているという点でしょうか。本日(2020/1/23)時点でまだ生きていますので、彼の最後の人生、じゃないワニ生をリアルタイムで追いかけてみてはいかがでしょうか。1日めから現在までは Twitter の作者のアカウントの他には以下のページで読むことができます。




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