HDDの中身…オリジナルは大切に。

みなさん、PCのバックアップは取っておられるだろうか?バックアップってありがたい実感が薄いことが多く、また今度で良いや…と思う人も多い。

実際必要にならないとありがたみは沸かないが、残念なことに必要になったときには既に手遅れなのである。ということで、手遅れにならないように先んじて手を打つ必要性と、方法に付いて今回は語っていこう。
例によって「初めての~」っぽくできるだけ平易な言葉遣いを心がける。

HDDの故障率

backblazeというクラウドストレージサービスが実際にHDDを運用し、年間の平均故障率を集計、データを公開している。実運用からなるデータなのでカタログスペックに頼らない、より現実的な値だ。

データに記載された全体の年間平均故障率は
2020年第1四半期:1.07%
2020年第2四半期:0.81%
年々減少傾向にあるが、だいたい1%(100台に1台)。ガチャの最高レアぐらいだね。
…ガチャの感覚を借りるとなかなか当たることはないが、直撃するときは直撃する、と言ったところか。その直撃が命の切れ目だ。
参考:https://www.backblaze.com/blog/backblaze-hard-drive-stats-q2-2020/

故障HDDからデータを救出するためのお金

壊れたHDDからデータを救出するのは手間も時間も掛かる。自分でやる場合は手段は限られるし、失敗して永久に失うリスクもある。
個人の手に負えず、業者に頼むとなると信用できるところを選んだり、結果を待つ手間はあるし、価格も数万は下らない。

どちらの場合も、そもそも救出不可能なケースは十分にあり得る。

…壊れるというのは怖い。マザボ、CPU、GPU等々、パーツはいくら壊れても換えは効くが、中身のデータだけは換えはない。唯一無二のデータだ。

ということで、永遠に失って途方に暮れないために、自衛策を見ていこう。

データを守る方法

幾つかの方法があるが、原則として「普段使っているSSD/HDDとは違う箇所にデータの複製を保管する」という点では同じ。
たまに勘違いする人もいるが、同じHDD内の違うフォルダに複製を保存してもそれはバックアップとは言いません。そのHDDが壊れたら複製もろともおじゃんだ。

ここでは3つの方法として
・クラウドストレージサービスの利用
・バックアップHDDの使用
・RAIDの構築
を挙げていく。それぞれに一長一短があるので見ていこう。

(補足):USBメモリとかに保存しないの?
HDDの他にUSBメモリに保存すれば良いじゃん、という意見もある。もちろんHDDとUSBメモリの両方にデータを保管すれば確かにバックアップとなる。が、以下の点で筆者はおすすめしない。
・USBメモリそのものの耐久性がお世辞にも高いとは言えない
・サイズのせいで物理的に紛失しやすい
個人的にUSBメモリはデータの一時的な運び出し、共有用と見ているので今回は選択肢から除外させて頂く。

方法1:クラウドストレージサービス

one drive, google drive, Dropbox...と言ったオンラインストレージサービス。
主な特徴は以下の通り。
○:小容量であれば無料でバックアップを取れる
○:原則として物品の調達は不要
◎:手間を考えると最も最速でバックアップの準備ができる
×:一定容量以上のバックアップは月額料金が掛かる
×:HDDの中身全てのバックアップは非現実的
×:他社サービスなため、他社のルール(アップロードできるもの、期限etc...)に従わないといけない

特筆すべきは今この瞬間から始められる手軽さ。追加で買うものも無く、サービスに登録して、フォルダを放り込むだけでバックアップは完了する。最近はアプリをPCにインストールすることで、指定フォルダにデータを入れるだけでバックアップが完了するものも多い。アップロードの手間を感じさせずバックアップできるのは大きな利点だ。
欠点は無料枠の容量が限られること。無料枠では多く見積もっても数十GBまでしか扱ってくれず、HDDまるごとのバックアップはコスパ的にも非現実的すぎる。よって重要度の高いファイルに絞って選択しないといけない。

とりあえず重要なファイルを保存したい。ならクラウドストレージでバックアップを取ってみよう。

方法その2:バックアップ用HDD

外付けのHDDに定期的にデータを複製保存する。バックアップと聞いてこれをイメージする人は多いだろう。それがこの方法だ。
主な特徴は以下の通り。
○:HDDの容量が許す限り、複数の履歴を遡って(1つ前、2つ前)データの復元が可能
◎:データを個々に復元可能なため、HDDの故障以外の、うっかり削除にも対応しやすい
△:バックアップは時系列順にまとめられるため、HDDまるごとの復旧には若干手間が掛かる
×:バックアップは定期的なため、復元時は程度の差はあれ、昔のデータに戻ってしまう
×:十全なバックアップのためには普段遣いのHDD以上の容量「より大きい」HDDが必要

特筆すべきはデータ復旧の柔軟性。個別のデータ復旧にも対応しやすいため、HDD故障の他、うっかり変な変更を上書き保存してしまった…だったり、間違ってファイルを消してしまった…といったうっかりミスにも強い。
欠点は普段遣いのHDDより大きい容量…4TBのHDDを使っていたら4TB、6TBのHDDが必要になる点。まるごとバックアップには当然普段遣いと同量のHDDが要求されるし、履歴を多く残したい場合、更に要求容量は大きくなる。そして、復元した際は最後にバックアップした日までデータが遡ってしまう。
完全に失うよりは遥かにマシだが、いくらか作業はやり直しになってしまうので、そこだけご注意。

windowsではファイル履歴、MacOSではTime Machineと、どちらのOSにも標準でバックアップソフトが搭載されている。基本はこれを使うといいだろう。

慣れ親しんだ「バックアップ」でHDDのデータを保全したい場合はこの方法だ。

方法その3:RAID構築

…書いてはみたが、正直定期バックアップ、クラウドストレージ使用と比べると事前準備などで確認することや手順がかなり多い為PC初心者にはあまりおすすめできない。
が、有名な手法の為名前ぐらいは覚えておくと良いだろう、ということで記載する。特徴は以下の通り。
※今回は最もお手軽なRAID1/ミラーリングを使う前提で話を進める。

○:普段遣いのHDDとそっくりそのままの、いわば「双子」が作れる
◎:故障しても、その場で作業は止まらず続行可能
△:フェイルセーフが発動した瞬間バックアップ手段は消え、次の故障への備えが無くなる
×:うっかり削除、上書き保存は対処不能
×:RAID専用のケースが必要など、挙げた中では最もコストがかかる

RAIDとは、複数のHDDをまとめて1台のHDDと見なして使うというもの。PCでも見た目上、1つのHDDとして扱われるし、複数台動いていることは基本意識することはない。バックアップではなくて冗長性を持たせるとか、厳密には言い方が違ったりするが、ここでは割愛。

特筆すべきは1台故障しても何事も無かったかのように作業が続行できること。ミラーリングの場合、2台のHDDを1台とみなし、内部では2台に全く同じデータを書き込む。仮に1台故障しても、残る1台が全く同じデータで状況を引き継ぐため、故障で作業の手が止まることはない。
ただし、中身がリアルタイムで同期する以上、うっかり削除、上書きに対する備えは出来ない、注意。
欠点はとにかく機材の調達と設定に手間がかかること。ただHDDを2台用意すればいい…と言うわけではなく、RAID対応の外付けHDDケースを買うか、マザーボードがRAID対応か確認する必要がある。RAID対応ケースは当然普通のHDDケースと比べると値段は張る。

ちなみに、故障時の挙動がスムーズなことは利点で述べたが欠点にもなり得る。HDDが1台故障しても作業は止まらないが、次の故障に対して無防備になっていることは忘れてはならない
作業にキリをつけた時点でもう1台の故障に備え、速やかに新たなHDDを用意、RAIDの再構築を行う必要がある。

「HDD故障への備え」この一点に特化して冗長性と快適性を高めたのがRAIDだ。

まとめ

・大事なデータに絞られるが無料で今すぐ始められるクラウドストレージ。
・別のHDDは必要だが、HDDの中身全てをバックアップできる他、うっかりミスにも強いファイル履歴/Time Machine。
・高度な準備、設定は必要だが「対HDD故障」一点特化で最も強力なRAID。
初めてのバックアップには上2つの併用…HDDをまるごとバックアップしつつ、特に大事なファイルはクラウドストレージにも保存、をおすすめする。

いくら保証期間内であろうと、何もしていないのに壊れようと、どんなに文句を言っても失われたHDDの中身は誰にも、どうにもならない。金では買えない、文字通りプライスレスな代物だ

いつかの日を備え持たずに迎えてしまう前に、今日からバックアップ、やってみよう。

私?…クラウドストレージで一部のデータしか保全していないのでHDD買ってきます……←

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