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GTO+の使い方①導入編

GTOツール

 2013年6月に人工知能(AI)を利用したポーカートレーニングソフト「Poker Snowie」が発売され、2015年3月には、GTOソルバー(Solver)と呼ばれる計算解析ソフト「Pio Solver」が登場しました。これらのツールは当初は懐疑的にみる意見もあったと言われていますが、アップデートを繰り返すことで実用性が認められ、さらに個人用パソコン性能の向上もあわさって、現在ではプロ・アマ問わずポーカープレイヤーの大半がなんらかのソフトウェア・ツールを保有し、これを用いてハンドを検証したり戦術を研究したりしています。
 しかし、Poker Snowieは中級版で$99/年、プロ版で$230/年のサブスク料で、現在、日本で人気があるツール「GTO Wizard」では、$468/年で、年間6万5000円もします。学生や趣味でポーカーをする人にとってはなかなか手が出にくいものです。
 先のPio Soleverから遅れること2年6ヶ月、2017年10月に登場した「GTO+」というGTOソルバーは買い切りで$75ドルです。Piosolverが買い切りで$475であることから相当にリーズナブルといえます。ではPiosolverの廉価製品なのかといえばそうでもなく、一部開発途中で使いづらい点があるものの、機能面ではPiosolverと遜色ありません。ただ残念なことに後発であることから利用者が少なく、日本語化もされていないから興味があっても情報がなく、違う意味で手が出にくいというものになっています。
 筆者も調べた限りでは、GTO+の使い方の説明がされているウェブページが何個か、日本語の動画が2~3本くらいある程度で、あとは海外の英語のサイトや動画がほとんどで、1万円ほどで購入できる本格的GTOソリューションなのに非常にもったいないと感じます。そこで少しでもGTO+の利用者が増えるように、本稿では、その導入から使い方を何回かにわけて説明していきたいと思います。

導入編

ダウンロード

GTO+ダウンロード画面

 まずGTO+のホームページの「DONWLOAD」ページに移動し、「GTO+for Hold'em」をダウンロードしてください。特にメールアドレスなど面倒な入力はなくボタンを押せばダウンロードが始まります。
 ダウンロードしたGTO+は試用版で、限られたフロップでしか計算できませんので実用性はありません。まず、ご自身のパソコンのスペックでGTO+が機能するか試してください。最低でもCORE i7のメモリー16Gほど必要で、特にメモリーが足りないと計算すらできません。

購入方法

PURCHASE

 購入が決まればホームページの「PURCHASE」(購入)をクリックし、STEP1の上段のクレジットカードを選択してください。ここでは表示されていませんがJCBも使えます。

クレジット購入の入力画面

JCBが使えることが表示されています。メールアドレスを間違えないようにして所定の項目を記入してください。

GTO+画面

 次にGTO+を購入版にするためのキーを取得します。ダウンロードした試用版のGTO+の左上のメニューの「Register」を選択して「Hardware ID」を表示させてマウス右クリックでコピーして先ほどのGTO+ホームページに戻ってください。

STEP2

GTO+ホームページ「PURCHASE」のSTEP2「Request a Key」をクリック

 この画面で、購入の際に登録したメールアドレスを記入し、先ほどGTO+でコピーした「Hardware ID」を貼り付け、「Key nr」のところを「1」と記入して「Send Request」をクリック。

すると登録メールアドレスにキーが送信されます。これをコピーしてください。

もう一度GTO+のメニューの「Register」をクリックして「Enter key」に先ほどのキーを張り付ければ、GTO+の導入が完了します。

GTOソルバーの注意点

 次回からGTO+の基本的な使い方の説明をしていきたいと思いますが、このGTOソルバーとうまく付き合うため少し注意してほしい点があります。

GTOソリューションは本来的なGTOではない

 GTOとは「Game Theory Optimal」の略で、慣れた日本語にすると「ゲーム理論における最適戦術」ということになります。「二人零和ゲーム」(2人のプレイヤーの一方の損失が他方の利得になるゲーム)において、双方のプレイヤーが最善手段とり、これ以上利得がでない状態で、他の手段をとると利得が低くなる均衡の状態になったときの戦術の組が最適戦術と呼ばれるもので、その戦術は一定の期待値が保証され、かつ相手ががどのような戦術をとったとしてもその期待値が保証されるという大変すばらしいものです。GTOソルバーやAIソフトウェアのソリューションはこのゲーム理論における最適解をコンピューターの計算(※CFRアルゴリズム)やニューラルネットワークを使って求めたものです※。
 しかし、ポーカーにはレーキというカジノが徴収する場所代が発生するので「二人零和ゲーム」という前提がそもそもなりたたず、先に述べた最適解はゲーム理論上求めることはできません。レーキという概念が誤差のように思われますが、最初の計算に誤差が生じるとその後の計算で誤差が広がり、さらにその後の計算にも誤差が影響して、解析結果に大きな影響を与えますので、GTOソリューションで得られる回答は「数学的に理にかなっている」ものの、ゲーム理論における最適解とはいえないものとなっていることに注意する必要があります。
 ですからGTO+だけにとどまらずGTOソルバーを使うにあたっては、前提条件(ツリーといわれるベット額やスタックの設定)や得られた解析結果の「正しさ」「正確さ」に過度にこだわるのはナンセンスで、ハンドの検証や戦術を研究するにあたり参考にすると言う姿勢が大切で、時には簡略化単純化したりすることも必要です。今後、著者がGTO+の使い方を説明するにあたって、おおらかに捉えることがあると思いますが、それはこのためです。

※CFR(Counterfactual Regret Minimization)
2007年にZinkevichらが提案した不完全情報ゲームの学習アルゴリズムで、あるアクションをとった場合のEVロスを修正し、後悔の値を最小限にしてアクションを更新していく反復解法
※ニューラルネットワークで求められた最適解
Poker snowieのAIアルゴリズムについて情報がないので詳しくわかりませんが、Poker snowieのHPなどで調べるとEVロスを修正してアクションを更新していく反復解法が用いられているようです。上記のCFRは不完全情報ゲームにおいて通常用いられる学習アルゴリズムなので、Poker snowieのAIはニューロネットワークと組み合わされたCFRと思われます。そうするとPoker snowieが導き出す戦術もGTOに近似した最適解ということになります。

GTOソルバーは大きいサイズのベットを好む

 小さいベットは、有効スタック(プレイヤーのチップの量の少ない方)に対する影響が少ないので次のストリートを計算するにあたり選択の幅が大きくなります。そうすると指数関数的に計算量が増えるのでパソコンのメモリーへの負担が大きくなります。それゆえGTOソルバーはベット額をなるべく大きくして、計算量を少なくしようとする傾向があります。GTO+も「basic」とされるベット額は幾何学的(ジオメトリック)サイズベットつまり、リバーでスムーズにオールインする大きなサイズになっています。もちろんここはオプションで任意のベット額を設定するのですが、注意しないといけないのがあまり小さいサイズのベット額を選択するとメモリーに負担がかかることです。ベットするか否か、ベットにコールするか否かは戦術に対する重要度・影響度は大きいといえますが、ベットするとしてどのサイズを選ぶかの重要度・影響度は比較的小さくはなります。ポット25%ベットもポット33%ベットのようにベットサイズが近い場合、両者のEVは実質的に同じですので、ソルバーは両者に対して無差別ですから、あまりベット額を細かく設定(例えば20%,33%,50%,75%,100%)するのではなく、一つのベットサイズ(75%のみ)で計算してみることも考慮してください※。

※GTOの計算では、できるだけ多くのベットサイズを使いたいと思うかもしれませんが、残念ながら、ベットサイズを1つ追加するごとにゲームの木のサイズが指数関数的に大きくなってしまうため、あまりにも多くのベットサイズを使うのは現実的ではありません。また、人間がゲーム内で全てのベットサイズを正しく使うことはほぼ不可能です。さらに、大きなゲームの木を解くには、より多くの時間がかかり、計算能力の高いコンピューターが必要になるので、その意味でもあまりにも多くのベットサイズを使用することは現実的ではありません。

マイケル・アセベイドー著
現代ポーカー理論<下>「ポストフロップのベットサイジング」

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