狭いワカプレとランダムサプライは似ている

 どうもこんにちは、灰銀です。オーディンの記事を書き終えていない僕ですが、久しぶりに記事を書きます。今回は、ボードゲームにおける僕の苦手意識の正体について、色々悩んだ結果自分なりに共通点を見つけたので、そんなお話です。

苦手なメカニクスの話

 ボードゲーム歴がそこそこ長い僕ですが(なので?)、なかなか好きになれなかったメカニクスがあります。それが①狭いワーカープレイスメントと②ランダムサプライのデッキ構築です。
 もちろん他にも苦手なメカニクスはありますが、今回は上の①、②についての自分なりの共通点と、それを認識した事による認識の変化(パラダイムシフト)に関する記事となります。
 読者の諸兄は、上記の①と②に共通点を感じたことはありますか?

定義

 共通点について書き始める前に、まずは①と②とについて、(この記事における)定義を明確にしておこうと思います。ここがずれると色々と話が噛み合わない可能性があるので、少し諄くなるかも知れませんがご了承ください。

① 狭いワーカープレイスメント
 アグリコラに代表されるような、初期のアクションエリアが少なく、徐々に増えていく(あるいは最後まで増えない)タイプのワーカープレイスメントを、ここでは狭いワーカープレイスメントと呼びます。アクションスペースは基本的に先取りになります。
明確に「この条件を満たしたら」というのが難しく、定義としては甘いかも知れないので、いくつか例となるゲームを挙げておきます。アグリコラはアクションエリアがラウンドと共に増えていきますが、ワーカーも徐々に増えるゲームなので、結果的にゲームを通じて狭いワカプレだと思っています。
 例)アグリコラ、ナショナルエコノミー、ワイナリーの四季…など

 対比として広いワーカープレイスメントについても書いておきます。オーディンの祝祭のように膨大なアクションスペースがあったり、西フランク王国の聖騎士や桃色飲茶娘のように各プレイヤー毎に個人のアクションスペースを持つゲームがこれに当たります。また、ヴィタル・ラセルダ作のギャラリストのように、アクションスペースは4つだけど割り込みができるようなゲームも(広義の)広いワーカープレイスメントと言ってよさそうです。

② ランダムサプライのデッキ構築
 次に、ランダムサプライのデッキ構築ゲームです。ハートオブクラウンやクランク!がこれに当たります。ランダムサプライのデッキ構築では、カードプールには1種類のカードが規定枚数ずつ入っていますが、それがどのような順番で、いつ場に並ぶかは予測できません。強いカードばかりが並ぶこともあれば、全体的にサプライが渋いということもあると思います。全員が似たようなデッキを作ることはできず、それぞれの特色を持ったデッキに成長していくようにデザインされているのが、ランダムサプライのデッキ構築の特徴です。

 対比として、デッキ構築の代表格であるドミニオンに触れます。ドミニオンはサプライが全員共通で10種10枚のため、基本的に全員が同じカードを獲得していくことが可能です。もちろん初手の金量差(3-4か2-5かあるいはその逆)によってどうしようもないことはありますが、サプライに10枚ずつあるカードを(狙っていたのに)1枚も獲得できずに終わることは少ないはずです。従って、完全に同じでなくても、ある程度似たようなデッキが組めるのがドミニオンというゲームです。

2つのメカニクスの共通点

 上に挙げた①、②の2つのメカニクスの共通点を、灰銀は「先取りが有利で」「後追いが難しく」「同じ戦術が採れない」の3点であると捉えています。同時にこれが苦手な理由でもありました。
 この結論に至った経緯について、以下に噛み砕きつつ書いていきます。

(1)先取りが有利なのはどんなゲームでも変わらない
 まず前提として、上の①、②に限らず全てのゲームで、基本的に先取りの行動は強い場合が多いです。ドミニオンで言えば7枚目の属州問題を決める6枚目にアプローチできると強い、とかそういうものも含めて、ゲームの流れを左右し得るタイミングや、それを決定づける手は先取りによって下家の行動を大きく変えることがあります。

(2)後追いの再現性がない
 アグリコラ然り、クランク!然り、先取りされた後のプレイヤーはどうしても(上家と狙いが被っていた場合は特に)弱い手を打つか、狙いを変えていく必要が出てきます。狭いワーカープレイスメントであれば強いアクションエリアはもう埋まっており、ランダムサプライであれば強いカードはもうサプライにないためです。
 後追いのプレイヤーは先行するプレイヤーと同じことができない、というのがこれら2つのメカニクスの共通点の1つ目と考えています。もちろん、多くのゲームは自動かあるいは能動的にスタートプレイヤーを交代するので、先取りの有利も緩やかに交代していきます。

(3)非対称性によるエンジンの偏り
 上の項目で触れたように、各プレイヤーは先取りの有利と後追いの不利とを順繰りに体験・実行していくため、全く同じエンジンを構築していくことはできません。むしろ、全く同じエンジンの構築を目指す動きはお世辞にも効率的ではなく、エンジンを偏らせた方が利益が大きいことの方が多いでしょう。
 つまりは、初めはインタラクションによって強制的に異なるエンジンに舵を切り、それぞれのプレイヤーが異なるエンジンを伸ばさざるを得ない、これが2つ目の共通点です。

苦手だった理由

 上に挙げた3項目が、基本的にそのまま苦手だった理由です。「先取りが有利で」「後追いが難しく」「同じ戦術が採れない」これに尽きます。灰銀は、あるゲームで強くなるための1番の方法は「強い人の真似をする」事だと考えています。そのゲームで平均的に、あるいは安定して強いプレイヤーは、少なくともそのゲームにおける強い行動を知っているために強い。と言えます。であれば、そのプレイヤーの戦術を真似て、自分のものにしていくのが強くなるには近道ではないでしょうか。

 ところが、今回取り上げている2つのメカニクスはそれが強くなる近道になっていないのです。というか、単純な真似ができない構造です。そのため、初めの内はかなりの確率で負けました。真似をする=1周遅れで追いかけるという構図になるので、そこから何をしようと大体間に合いません。結果的には上手い人のプレイを参考にしているのに負け続けてしまい、苦手意識だけが育ってしまいました。

苦手意識の克服

 漠然とした苦手意識に引っ張られて、これらのメカニクスのゲームを避けるようになっていましたが、このままではいけないと思ってあれこれ考えてみたのが、この記事のスタートでした。初めはそれぞれの苦手なメカニクス単体について何が苦手なんだろうな、と考えていきましたが、考えていくうちに「あれ?実は共通点があるんじゃないか?」と思えてきて、その軸で考えていった結果前述したような結論に至りました。
 そして、そこまで苦手な原因がわかっているなら、それに合わせて考え方を変えてやれば、今まで見えていなかったそのゲームの楽しさが見えるんじゃないか、と思えるようになりました。苦手な理由を自分の中で言語化して腹落ちさせることができたために、心の余裕が生まれたのかも知れません。

 もちろんこれは灰銀なりの基準に基づく思考実験のようなものなので、全員に当てはまるものではないと思います。が、自分の苦手を漠然と済ませずに、根本的なところまで深掘りすることで克服できる場合があるかも知れません。
 少なくとも、灰銀はこの結論に至ったことで「先行するプレイヤーの真似をするのではなく、状況を見て自分の戦略を調整していく」という(得意な人から見たら当たり前なのかも知れない)戦術を意識して動けるようになりました。

おわりに

 色々なゲームで遊んでいれば、どうしても合う合わないは出てくると思います。そこで「このゲームは合わなかったな」「このゲームは苦手だな」で終わるのは簡単です。一方で、どんなゲームも楽しめるかどうかは遊ぶ人次第であることも事実です。
 一度は苦手だと思ったゲームでも、見方を変えて楽しめるのであれば、そこは自分次第なんだよな。と、強く感じた次第です。

 それでは皆さん、よいゲームライフを。

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