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PIMCOで「債券王」として君臨したビル・グロースとは

株式投資の世界で一番有名な人物はと聞かれると、多くの人がウォーレン・バフェットと答えるでしょう。
では、債券はどうでしょうか?世界最大規模の債券アクティブ運用会社ピムコ(PIMCO)を創業し、債券王の異名を持つビル・グロース氏です。
大きなリターンの望めないイメージがある債券の世界で、なぜグロース氏は確たる地位を築いたのでしょうか。
同氏の経歴や投資への考え方を紹介します。

ビル・グロースとは

1970年代、それまで満期保有が一般的とされていた債券にトレーディングの対象とし、ポートフォリオマネジメントの考え方を導入したのがビル・グロースだ言われています。
1971年に投資顧問会社パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO:ピムコ)を友人と創設し、マネジングディレクター兼最高投資責任者(CIO)を務めました。
着実に評価を得て1996年にグロースは、米国債券運用アナリスト協会に殿堂入りを果たしました。その独特の経済予測は、時に予想コメントひとつで米国債券市場を大きく変動させることもあることから、ボンド・キング(債券王)とも呼ばれることになりました。
PIMCOは全米最大手の運用会社に成長し、2000年にはドイツ最大手の保険会社アリアンツを買収。運用資産はピーク時に2929億ドルと米国最大規模となり、年7%を超えるリターンをコンスタントに出し続けました。
2009年にPIMCOは、金融危機後の世界経済について、成長率の長期的な低下を予測する「ニュー・ノーマル」という概念を提唱。その後も欧州債務危機が続くなど、予想は的中し、この言葉は世界中に広まりました。
そんななか、グロースと経営陣との関係は徐々に悪化。2014年ピムコを退社、米運用大手のジャナス・キャピタル・グループに移籍しました。移籍後にはピムコ社を提訴し、2017年に和解金約8100万ドルを得たとされています。
しかしジャナスでは、世界的な低金利による運用環境の悪化もあり、従来のようなパフォーマンスを出すことができずにファンドからの資金流出が続きました。そして思うような結果を出せないまま、わずか4年で引退することとなりました。それと同時に、新債券王としてのジェフリー・ガンドラック氏が注目されることとなりました。
慈善活動に積極的だったグロースは、20年間でおよそ8億ドルを寄付しているそうです。
人物像を一言で表せば一貫性だといわれています。
日々のルーティーンが決まっており、朝5時に出社し3時間トレーディング。2時間ジム運動した後に、午後のミーティングを行い、そしてトレーディングを行う。そして、毎日決まった時間に帰るのだそうです。

ビル・グロースの経歴

ラスベガスで得た投資理論

大学3年生の時に、グロースはカジノへ行きブラックジャックに興じます。しかし、ものの見事に敗北し、50ドルはわずか5分で消えることとなってしまいました。
その後に、交通事故に遭い入院している時にディーラーをやっつけろ!(エドワード・O・ソープ)を読み、カードカウンティングを学びました。
そして、卒業後に安宿に泊まり込み毎日16時間もブラックジャックをプレイ。200ドルは4カ月で1万ドルにまで増やすことに成功したそうです。
その後に、カジノディーラーも経験し、数学的に知見を研ぎ澄まします。この経験から、リスク分散と投資額の最大化を学び、勝率を高める投資手法を編み出すきっかけとなったようです。
そしてピムコでは、ギャンブルの戦略基準として使われていたケリー基準(ケリーの公式)を世界で初めて債券投資に導入。複利収益率が最も高くなる最適な投資サイズを算出することにより、高いパフォーマンスを叩き出すこととなりました。

ビル・グロースの名言

債券王の異名を持っていたグロースの投資に役立つ名言を知っておきましょう。

ブラックジャックから学ぶ

若い頃にブラックジャックでいくつかのことを学んだ。第一のことは、もしもたくさん努力し数学的能力を磨けば、カジノや金融市場のシステムさえも打ち負かすことができるということだ。

パートナーやファンドが重要

あなたのお金を投資するのに最良の人、最良の組織を見つけることこそ、あなたの人生で最も重要な金融上の意思決定になる。
自身のアイデアを大切にし資産を分散させる
あなたは本当に好きな株の銘柄があるか?それにポートフォリオの10%ほどを投じなさい。
アイデアを大切にしなさい。良いアイデアは分散することで無意味に忘却すべきでない。

マーケットは不合理

市場は不合理な理由で動くものだ。そして、あなたはそれに備えなければいけない。
オルタナティブ投資について
株式は歴史的に、ほぼすべてのオルタナティブ投資※より良好なリターンを上げてきた。
しかし、それはレースの開始時の価格が妥当な場合に限る。
※株式や債券といった伝統的資産以外の新しい投資対象や投資手法のこと

ビル・グロース~まとめ

グロースによると、債券投資家は投資の世界のバンパイアだと言います。それは債券が景気後退や低インフレの際に資産を守ってくれるからだそうです。
景気が良くても悪くても株式投資家は気楽で強気である一方で、債券投資家や銀行家は慎重だという話を聞いたことがあるでしょう。しかし、そんな慎重な人間の話の方が不思議と人間は信頼できることが多いと同氏は話しました。
慎重かつカジノで培ったブラックジャックの数学的知識から構築される投資戦略があったからこそ、大きな成功を収めることができたのかもしれません。
株式投資家は、株式アナリストやストラテジストの話を聞くことがほとんどだと思いますが、たまには”慎重な”債券アナリストのレポートを読んでみると違ったアイデアが生まれてくるかもしれません。

<出典>
ACTION

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