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「シキ恋」企画書

キャッチコピー:
新進気鋭のマンガ家は5兄妹!?

あらすじ:
柘植礼司つげれいじは高校生マンガ家である。
が、正確に言えば、人物作画の担当で。
一女の春華はるかがベタとトーンの担当で。
二女の夏姫なつきが背景作画の担当で。
三女の秋葉あきはがネームの担当で。
四女の冬季ふゆが原作担当で。
青海社せいかいしゃに突如現れた新進気鋭のマンガ家――『四季巡しきめぐる』。
その正体は――柘植家の5兄妹だった。

青海社で長年看板を背負う『無刀のレイ』。
その作品を連載するのは、5兄妹の父親である哲哉てつや
『俺から首位の座を奪ったら、お前の頼みをひとつ聞いてやる』
身勝手に家を飛び出した父親を連れ戻すため、礼司は姉妹と楽しく騒がしい日常を過ごしながら、マンガ制作に青春を費やす!


第1話のストーリー:
連載8話目にして、早くも読者アンケート上位層に定着しつつある『シキ恋』。編集長は、長年、青海社の大黒柱の役目を担っている『無刀のレイ』以来の大ヒットの予感に大興奮の様子。
そんな編集長に、絶対大ヒットさせますよと意気込む『シキ恋』担当編集の斎藤さいとう。斎藤は、元・『無刀のレイ』の担当編集でもあるが、現在は『シキ恋』の連載開始に伴い、担当作品を一本に絞っていた。
今日は誰が出迎えてくれるかなぁ……なんてつぶやきながら、斎藤は『四季巡』の元へ。

かくして『柘植家』に到着した斎藤。
インターホンを押すと、冬季が扉を開けて姿を見せる。
その姿を見て、ほっと息を漏らす。最悪の事態ではないな、と。
家に足を踏み入れると、春華と秋葉がフル稼働している。
原稿があがる目途はついているかと春華に問うと「このままだとヤバイです♪」と笑顔で返され、秋葉には無言で睨まれる。
落とすのだけは勘弁してくれよ~と斎藤が祈っていると、礼司と夏姫が学校から帰ってくる。

『四季巡』の正体は、『無刀のレイ』を連載するマンガ家、柘植哲哉の子どもたち――柘植礼司、春華、夏姫、秋葉、冬季の5兄妹だった。

日を跨ぐ1時間前には原稿をあげると宣言し、作業に着手する礼司。
社内で『四季巡』の正体を知っているのは斎藤だけだった。

宣言通りに原稿をあげる礼司たち。姉妹は床で雑魚寝している。
礼司に先週の『シキ恋』の順位を問われて、4位だと答える斎藤。
それを聞いて、悔しげに歯を噛み締める礼司。

青海社で不動の首位を飾る『無刀のレイ』。
その座を奪い取り、父親である哲哉に家に戻ってきてもらうことが、礼司がマンガを描く理由だった。
『俺から首位の座を奪ったら、お前の頼みをひとつ聞いてやる』
そう哲哉と約束していたから。

母親の死後、家族を捨ててマンガを描くことに専念しはじめた父親。
それが哲哉にとって苦渋の決断であることも、礼司の才能を磨くためであることも、春華と話がついていることも知らず、礼司はあのクソ親父を連れ戻してやるの一心で、マンガに青春を費やしていた。

「まったく、哲哉さんはやり方が遠回りなんですよ」

『近い将来、アイツの……いや、俺のチビがマンガ界に革命をもたらす。だから斎藤、お前がアイツ……かアイツらかは知らねぇが支えてやってくれ。頼んだぞ』

まかせてください、と誰ともなしにつぶやき、斎藤は出版社に向けて、車を走らせるのだった。

第2話以降のストーリー:
一女の春華は、物腰が柔らかく、けれど芯の通った、頼れる姉である。
とはいっても、生活スキルが壊滅的だったり、度がすぎるブラコンシスコンであったりするが、それはさておき。
そんな春華は大学二年生。就活の予定はない。
というのも、自分は長女として家族を支えなくてはならないという責任があったから。
しかし礼司は、幼い頃から春華にはキャビンアテンダントになりたいという夢があることを知っていた。隙間時間を縫って勉強していることも知っていた。
そのことを礼司が指摘しても、春華は「大丈夫だから」の一点張り。
そのことに悔しさを覚えた礼司は、斎藤を介して、プロマンガ家のからベタとトーンのやり方を教わり、春華に「将来はお前がいなくなってもやっていける。だからお前はお前の夢を追いかけろ」と告げる。

「まったく、そういう目で見ないようにしてるこっちの身にもなれよ弟ぉ~」

以降、春華はキャビンアテンダントになりたいという夢を隠さなくなる。

二女の夏姫は、常に自信がなくおどおどしている。
そんな挙動とは裏腹に、姉譲りで大抵のことはできてしまい、しかし注目を浴びたり、ちょっとでも否定的な言葉が耳に入るとてんでダメになる。
そんな夏姫は礼司の双子の姉(全然礼司と似ていない)で、同じく高校二年生。
いつもの癖で夏姫が作品のエゴサーチをしていると、「四季巡唯一の弱点。背景」という批判が目についてしまう。それもいくつも。
このことがきっかけで、夏姫は自分の絵に自信を失ってしまう。
締切が迫っても一向にペンを取らない夏姫。礼司はやむなく、この頃絵が上達しつつある冬季に背景作画を頼む。
するとネットでその回の背景描写が絶賛される。
喜ぶ冬季とは反対に、より落ち込む夏姫。
秋葉から話を聞き、礼司は夏姫がエゴサが原因でネガっていることを知る。
翌日の学校帰り、礼司はいっしょにデッサンしようと夏姫を誘う。嫌だと首を振る夏姫だが、礼司が迫ればあっさりと折れて、なんでもない風景をいっしょにデッサンすることに。
その中で、「ネットの声なんて気にすんな」と礼司は夏姫を励ます。夏姫といっしょに作品を作るのが楽しい。夏姫の書くイラストが好きだと褒め倒す。
夏姫は、ぽろぽろ泣いて喜び、再び背景作画を担当すると決意を示す。

「優しいなぁ礼司は。礼司の相手になる女の子が羨ましいくらい」

翌週、夏姫がエゴサーチすると、まっさきに「先週の背景よりも今週の背景のほうが好き」だという感想が目につく。そのことに喜ぶ夏姫が、その感想を書いたのが礼司だと気づくことはなかった。

三女の秋葉は、テンプレートなツンデレである。
それ故にきつくてもきついと言えず、無理してしまうこともしばしば。
そんな秋葉は中学三年生。受験生。
不登校の冬季と違い、毎日学校に通っている秋葉だが、成績は芳しくない。自分は優秀だと嘘をつく秋葉だが、そんな嘘は兄妹に明け透けで。
ここ最近の秋葉の成績の右肩下がり具合に頭を悩ませる兄妹。
と、冬季がネームを切ると言い出す。
でも技量が……と渋る兄妹だが、いつの間にか冬季は背景作画に続き、ネームを切る技術も一流になっていた。冬季の技量に納得した兄妹は、中間テストが終わるまでは、冬季にネームを切ってもらうことする。
そう決めたはいいが、秋葉は一向に聞き入れない。「テストでいい点獲ればいいんでしょ」と言い、ネームを切りつつ勉強にもより熱を入れて……で、無理がたたって、風邪を引いてしまう。それも中間テスト当日に。
それでも学校に行こうとする秋葉を止め、礼司は秋葉の看病をする。その中で「お姉ちゃんみたいになんでもできなくてごめん」と弱音を漏らす秋葉。そんな秋葉に「困ったら頼ればいい。無理なら無理って言えばいい。だって俺たち、兄妹だろ?」と言う礼司。
そして秋葉はようやく本音を漏らしはじめる。

「いつも素直になれない可愛くない妹でごめんね?
 お兄ちゃんは、こんな妹でも好きでいてくれるかな?」

そうして、礼司と夏姫と春華が、交代で秋葉の教鞭をとることになる。
秋葉の成績は、ちょっとずつ右肩上がりになりはじめた。

四女の冬季は、寡黙で無表情でなにを考えてるのか掴みづらい。
そんな冬季は中学二年生。不登校。
ある日のこと。冬季は礼司に「おでかけしよ」と誘う。冬季が自ら家の外に出ようとする異常な事態に兄妹は仰天する。
聞けば、シナリオを書いているうちに、実際にデートがしたくなったとのこと。冬季とデート紛いのことをしながら、成長したなぁと兄っぽいことを考える礼司。キスしよと誘われるが、兄妹だから無理だと断る。むぅ~と剥れる冬季を「ま、実は兄妹じゃありませんでした、なんて展開があったら別だけどな」と礼司は宥めすかし、冬季とのおでかけを終える。
翌朝、ずっとご機嫌斜めな冬季に秋葉がどうしたのかと問うと、礼司に振られたと答える。一斉に噴き出す一同。冬季だけがじっと礼司を睨んでいた。

そんな日々を送る中で『シキ恋』の人気はますます浮上していく。
確実に父親に近づいているという実感を得る礼司。
そんな中で、春華がキャビンアテンダント試験に合格し、来月には一家の元を去ることが唐突に決まる。
秋葉も受験が近いからと仕事から遠ざかり、5人から3人の作業体制に。
その中で、礼司は冬季の絵を描く技量が飛躍していることに気づく。
これなら……と思った矢先、冬季は別作品でのデビューが決まる。
それでも冬季がやりたいことならと礼司は背中を押し、しかし3人が抜けた穴はあまりに大きく、『シキ恋』はやむなく休載することに。

礼司が抜け殻の日々を送っていると、河原で哲哉と出逢う。
哲哉から、家族のために家を出たこと、冬季に絵を教えたこと。

そして――礼司がかつて哲哉の競っていたライバル作家の息子であると明かされる。事故で両親が共になくなり、身寄りのなかった礼司を引き取ったと。

ずっといた姉や妹が、血の繋がらない他人であると。
目の前にいる父親も、母親でさえも他人であると。

だから人様の事情には関わるなと哲哉に跳ね除けられて、礼司はますます、塞ぎ込んでしまう。
が、仕事を放棄して実家に戻ってきた春華に、弱気なのに無理して背中を押す夏姫に、弱々しく本音を漏らす秋葉に励まされて立ち上がる。

――この子たちのために、あの父親をぶっ倒してやる、と。

それに伴い冬季が最大の敵となるが乗り越え、ついに青海社の首位の座を、『シキ恋』はアンケートで初の1位を獲得する。
そして約束通り、哲哉は家に戻ってくる。

かくして『柘植家』は理想の形に収束し――礼司は冬季に告白する。
礼司は気づいていた。
冬季の作品は、冬季のやり場のない恋心を表出させたものなのだと。
想いが届いたことに冬季は涙し、告白を受け、とはいってもまだ冬季は中学生だから高校生まで付き合うことは認めないと哲哉が言い、今更父親ヅラすんなよと礼司が不満を口にし……そんな騒がしくも楽しい時間が満ちる。

目標を達成してからも礼司はマンガを描き続け、冬季も礼司に自身の恋心を気づかせるという目標を達成してもなおマンガを描き続け、哲哉は『無刀のレイ』を完結させて以降、酒を飲んでは娘にダル絡みする毎日が続き……

「あんたも書けよっ!」

柘植家は、今日も、そんなあたたかく賑やかな空気に包まれている。
                            ―FIN―



















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