他人の金でできてる、

 バイト先で研修中のひよっこの私がファミレスのドリンクサーバーみたいな機械でいれたブレンドコーヒーを心底美味しそうに飲むお客様たちを見て、心底くだんねぇ、と思う。そういう大層くだんねぇことで世界は回っている。そんなことを考えていると、家でジュースを飲んでた方がましだと思ったけれど、それさえも工場で働く人間が金のために作ったものだと思うと笑けてくる。もう何も胃に入らない。私は他人の金でできている。
 2次元の推しと3次元の推し。私は不幸の中で藻掻く少年が好きなので、大体推しは決まってくる。金木研だとか衛宮士郎だとか。エドも好き。奥村燐くんも。アレン・ウォーカーも。有馬貴将と衛宮士郎の母音が同じことに気づいて戦慄した。どちらも推しだったから。
 好き、の熱量に差を感じる。私が重いのか彼女たちが軽いのか、はたまた私が知らないだけなのか。まだわからない。ともかく、私はいつでも孤独を感じている。昔から、集団でいる方が孤独を強く意識させた。現在絶賛五月病の私は今、特にそれを感じている。誰も悪くない。強いていえば弱い自分が悪い。どうにもならない。
 代返をしている。共通の知り合いには「絶対サボりやって。もうせんとき」と言われているけれど、まあ頼まれたらやり続けるつもり。別に親切心なんかじゃない。その子がどうやってテストを乗り切るのか眺めたいだけだ。慌てふためく様子を見たい。自業自得だよ、と心の中でこっそり笑いたい。ハイ、愉悦部員です。性格を悪いのを隠さないから嫌われるのだ、というのは母の言葉で、私はできる限り性格の悪さを隠して生きているつもりだ。
 女の世界といのは怖いもので、もうグループが固まってしまっている。そこに馴染めなかった、というよりかは入り込もうとしなかった人は1人だ。1人だとスマホの充電の減りがすごそうだ、なんて思いながら私は授業中にYouTubeを見る。私はスマホの充電を減らしたくないので、頑張って馴染めそうなところを探して頑張って地位を確立した。友だちを作るというのは勇気が必要だ。それを乗り越えれば、そこからはあんまりエネルギーを消費しないから、内部エネルギーは変化しない。それがめんどくさい人は諦めよう。大丈夫。スマホの充電の減りが少しだけ他の人たちよりはやくなるだけだ。
 帰りにデパコスを買って帰った。ティント。CANMAKEも駄目だった。ので、デパコス。美容部員さんの態度があんまりよくなくてがっかりした。そりゃ、こんな小娘がごめんなさいって感じだけれど。そのあと地元の百貨店の美容部員さんの所に行って、雑談を交わした。「実は、けっこう他ブランドのコスメも使っているんです」秘密ですよ、と彼女は笑った。もう他のブランドには浮気しねぇ、と思った。
 カメラを通して見た私と鏡に映る私、そして電車の窓に映る私。どれも少しずつ違っていて、でもちゃんと私だと認識できる。時々可愛くも見えるし、ものすごい不細工に見えるときもある。だから順位づけなんてくだらないことはやめた。私は私。可愛くも不細工でもない。ただそこにあるだけ。
 そばかす、出っ歯、大きな鼻。私は彼女たちにかわいいよ、と言う。でも届かない。コンシーラーの向こうに隠されたそばかすがどこか悲しげだった。コンプレックスは多分、1番のチャームポイントだ。多分、それに気づく日は遠い未来なのだろう。
 最近テレビで青葉市子さんの声が聴こえてきて嬉しい。大学の友だちがみんなUVERworldを知らなくて驚いた。世界の常識だと思っていたのだ。
 今でも私は、平々凡々で無個性で無価値だと思っている。でも、最近「変」と言われることが多くなった。それが嬉しいかと言われればそうでもない。だってそれはそう見えるように無意識に演じているからだ。本当の私は、どこ。演じているつもりはないけど、気づけばものすごく摩耗している。ねえ、本当の私は、どこ。
 まあ、色々あったよ。でも、比較的楽しい。今のところ。何か忘れているような気もする。多分、何かの課題だ。すぐに思い出して、今から終わらせます。

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