買い物日記
花粉が「非常に多い」と予報であった通り、今日は目も耳もかゆく、くしゃみもでる。なのに自転車で出かけてしまった。とても天気が良かったので、どこまでも走れそうな気がしたからだ。
ふと目にとまった路面店に入ってみた。外からみると分からないが、中には観葉植物がいくつか置いてある。値段が書かれていない。奥から三十代半ばと思われる女性の店員さんが「いらっしゃいませ」 と、こちらに歩いてきた。
「あの、植物を育ててみたいと思って。」
嘘ではない。部屋におく緑を探していたのだ。全くの素人なので、とりあえず一通り説明を聞いた。
「これは菩提樹です。この巻きがとてもよくて、一目惚れして仕入れたんです。もし売れなくても、私が育てようかと思って。」
たしかに幹がくねくねと曲がっていて、面白い形をしている。他の植物達の説明も聞いたが、菩提樹が気になった。大きさもちょうどよい。
何より店員さんの声や空気が不思議な心地よさを生んでいた。時間の流れがそこだけゆったり流れ、澄んだ気持ちにさせた。
菩提樹を入れる鉢の相談をしたところ、おすすめの骨董屋さんを教えてくれた。安くて良い店らしい。グーグルマップで場所を確認し、とりあえず「またきます」と店を出た。
骨董屋さんまでは、ここから車だと18分とグーグルマップが教えてくれた。自転車だと35分くらいだろうか。せっかく天気も良いし、今日はもうやることも終わってしまった。
いってみるか!
マップの示す場所に到着したが、骨董屋さんらしきものはない。
あれ?
付近を探索するとドアの空いた平屋が一軒。中を覗くと食器がたくさん並べてあった。
ここだ!!
嬉しくなり中に入ろうとすると、奥から白いヒゲをたくわえた長身の男性が「なんですか?」と怪訝そうにこちらに近づいてきた。追い出されそうな勢いだ。
「あの、こちら、骨董屋さんですよね?」
「そうだけど、どうしてここに?」
たしかに看板もないのだ。
「あのー、花屋さんの〇〇さんから聴いてきました。」
「あー、〇〇さんね!」
やっと顔が和らぎ声も怖くなくなる。
主に料理屋さんがお店で使う食器を買いにくる骨董屋さんらしい。八畳程の店内に沢山の和食器が並べられていた。
「これは幕末の頃の古伊万里だね」
と教えてくれた魚皿と豆皿、青の綺麗な浅めの鉢を購入することにした。たしかにめちゃくちゃ安かった!
お代をお支払いしようかと財布を出すと
「ちょっと待って」と奥から紅茶を出してくださる。なんともすっきりしたジャスミンのような香りがする。店内に飾られた百合の花の香りと混ざり、ふわぁ〜という感じになる。
「紅茶!とても美味しかったです!!」
「ここは珈琲が一番美味しいんだよ。
珈琲は今度な。」と笑う。
かっこいいじゃないか!!
「来るときは一人で来てね!うちは団体さんはお断りしてるんだよ。買い物は一人でするものだ。」
かっこいいじゃないか!!!
「また、きます!!!」
とお店をでた。帰りの自転車は重い荷物をしょってはいたけれど、なんだかウキウキしていた。
(続く)
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