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生態系へのジャックイン展(見浜園)

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とても良かった。

本展は日本庭園という、自然を人為的に再構成することで本来以上の意味を創造する拡張環境を舞台に、自然と技術とアートの結節点となる作品たちを茶の湯のプロセスになぞらえて配置します。そこは理想化された電脳空間でも素朴な自然世界でもない、様々な認知世界が響き合う場であり、同時に茶の湯が追い求めてきた幽玄の思想を継ぐものとなるはずです。互いの認知世界を交換し、交感し、交歓しあう、あらたなる生態系へようこそ。(『生態系へのジャックイン展』より)

18:00から21:00にわたる、夜限定の展示。日没ちょっと前の18:30に入場しました。夕方から夜にかけて日が沈み、徐々に作品の本質が現れていく絶妙な時間に入場できました。ラッキー!

リサーチチーム「METACITY」が初めて企画する展覧会。METACITYについては去年からWIREDなどの媒体で見かけていて、斬新な取り組みの数々に惹かれていたところでした。

全部面白かったなあと満足して帰ってきましたが、片っ端から書くととんでもない量になるので、特に印象に残った作品をいくつか。

まずは最初に遭遇する巨大なパネル、The TEA-ROOMの手がけた《SOTOROJI#1》。画像は見浜園の入り口?始めて行ったので普段の見浜園の様子をよく知らない。また行ってみようと思う。

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よく見ると何か小さい物体の集合のよう。

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QRコードだ。
近くにいたスタッフさんに数を聞くと約10万個あるらしい!エグい!
QRコードを読み込むと日本各地のNPOのホームページや、フードロスなどの問題を扱ったページ、クラウドファンディングを受け付けているページなんかに飛びました。普段私が検索しないようなページを提示されて、私ってそういうの調べてこなかったんだな〜…こんな人間だったのか…って気づいたのと、押し付けがましくないきっかけ作りって心地良いよなと思いました。家に帰っても写真から読み込んでページ見てまわってる。

関野らん≪個別性・連続性・全体性≫も好きでした。「現代における弔いのありかたを模索した作品」。来場者は、手のひらサイズの明かりを一つ持って、そのまま庭をゆっくりと進んでいく。

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道の脇にぽつんぽつんと設置されている看板の指示に従って、心の内に死者を思い、過去を想起する。あまりにもうるさすぎる現代で、私は過去を、死者をおぼえ続けることを忘れていたなと思いました。
盆提灯や盆踊りの浴衣を見てても思うんだけど、薄暗い空間に灯る光や浴衣のあわい色彩、なんだかあったかくて見るとほっとします。

ALTERNATIVE MACHINE≪ANH-01≫は私の認識している世界の不確かさが少し怖いけど、ずっといたくなるような不思議な作品でした。

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写真撮ったけど何かわかんなくてウケるな。これ、林の木々の幹にスマホが括り付けられていて、時折ビビッドな色で光り、アブラゼミみたいな電子音を発してました。
でも、この林の中には色んな動物も一緒に生きていて、鳴き声が聞こえてきます。どれが電子音でどれがそこに元々生きている生き物の声なのかわからない、まさに「幽玄」の空間…。
これ以外にも聞くことや見ることの不確かさが顕在化する作品、普段どっかに置いてきちゃってるような感覚を取り戻すような作品が多かったかなとおもいます。

千の葉の芸術祭の一部として企画された本展ですが、ぜひ来年も続けてほしい。これが無料というのは信じられないです。もっと会期が長くても良かったって思うくらい、いろんな人に見てほしい企画展でした。

こんな世の中だけど、アートに様々なかたちで関わる事の出来る機会が、もっと増えていけばいいなあ…。

次回があるなら、次は鑑賞者以外の形でも関わってみたい。



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