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【講義ノート】全国食健連オンライン学習会 食料・農業・農村基本法改定は何が問題なの?

 3月27日に全国食健連の主催で行われた食料・農業・農村基本法改定案についての学習会に参加しました。農民連会長の長谷川敏郎さんから、法案の問題点について講義していただきました。要点をまとめます。

法案はこちら▼

①食料確保は自己責任を明記

改正案第2条1項(食料安全保障の定義)
良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態をいう。

第2条新旧対照表

現行(食料の安定供給の確保)
→改正(食料安全保障の確保)

現行「食料は…供給されなければならない
→改正「食料については…食料安全保障の確保が図られなければならない」

 「食料安全保障」はFAOのフードセキュリティを言い換えたもの。「国家安全保障」の一構成部分として、軍事色彩の強いものとして位置付けられている。

FAOのフードセキュリティとは

 FAOによる食料保障とは、①全ての人が、②いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、③十分で安全かつ栄養ある食料を、④物理的、社会的及び経済的にも権利として入手可能であるときに達成される状況(2003年)とし、1983年の「経済的、物理的近接性の重視」のみならず、「社会的近接性の視点も重視する。さらに量的な確保だけではなく、質的にも「安全かつ栄養ある食料」が入手可能でなければならない。食への権利という基本的自然保障の概念。世界から飢餓をなくすSDGsの第2番目の目標。

これを、法案では、
 ①全ての人が→一人一人が
 ②いかなる時にも→「平時にも」(対義語は「戦時」「有事」)
と言い換えている。

②食料自給率の目標を投げ捨てる

現行法
第15条2項 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
1.(略)
2.食料自給率の目標

3項 前項第2号に掲げる食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針・・・

改正案
第17条2項 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
1.(略)
2.食料安全保障の動向に関する事項
3.食料自給率その他食料安全保障の確保に関する事項の目標

3項 前項第3号の目標は、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する事項の改善が図られるよう、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。

改正案は、食料自給率の目標を向上を目指すものでも指針でもなくするものである。

③食料の安定供給は国内の増産ではなく輸入促進

現行法
第2条2項 国民に対する食料の安定的な供給については、・・・国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて・・・

改正案
第2条2項 国民に対する食料の安定的な供給については、・・・国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと併せて安定的な輸入及び備蓄の確保を図る・・・

④農産物の増産は輸出用農産物だけ

改正案
第2条4項(新設) 国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図られなければならない

いざというときは輸出用を食べればと言うが、輸入農産物13兆円に対し、輸出農産物は1兆円。しかも多くが加工品で、原料は輸入しているとのこと。

⑤新規就農支援も家族農業もない

(望ましい農業構造の確立)
改正案
第26条2項 効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで農業生産の基盤である農地の確保が図られるように配慮するものとする

⑥戦時食糧法制

食料有事の措置(24条)及び「食料供給困難事態対策法」

改正案
第24条(新設)国は、凶作、輸入の減少等の不測の要因により国内の食料の供給が不足し国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に支障が生ずる事態の発生をできる限り回避し、又はこれらの事態が国民生活及び国民経済に及ぼす支障が最小となるようにするため、これらの事態が発生するおそれがあると認めたときから、関係行政機関相互の連携の強化を図るとともに、備蓄する食料の供給、食料の輸入の拡大その他必要な施策を講ずるものとする。

不測時には食料が不足するが、輸入の拡大で対応?

食料供給困難事態対策法
・異常気象等の兆候を把握した時(食料供給困難兆候)に、内閣総理大臣を本部長、全ての国務大臣を本部員とする本部を設置(第5~第14条)
・国民は配給、農民は作付け強制・供出・罰金(20万円)

まるで戦時食糧法のよう。

⑦国会への報告義務なし

農業基本法(旧法)
第6条 政府は、毎年、国会に、農業の動向及び政府が農業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2項 前項の報告には、農業の生産性及び農業従事者の生活水準並びにこれらについての政府の所見が含まれていなければならない

食料・農業・農村基本法(現行法)
第14条 政府は、毎年、国会に、食料、農業及び農村の動向並びに政府が食料、農業及び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2項 政府は、毎年、前項の報告に係る食料、農業及び農村の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない
3項 政府は、前項の講じようとする施策を明らかにした文書を作成するには、食料・農村・農業政策審議会の意見を聴かなければならない

改正案
2項、3項を削除
インターネットでの公表(第17条7項)に置き換える

今後の予定

4月17日(水)12:30~ 署名提出行動
5月29日(水)14:00~ シンポジウム

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