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『赤目』おしゃべり会とその続き

こんにちは!演出助手の植田です。
今日は先日急遽開催した『赤目』を振り返るおしゃべり会でお答えしきれなかった質問などにQ&A形式でお答えしていきます!
長めなので興味あるトピックだけ読むもよし、じっくり読むのもよし。お楽しみください🐇

『赤目』おしゃべり会の本編は下の画像からご覧ください!(写真をタップするとYoutubeに飛びます)

Q&A(and more...)

皆さんからの質問に以下のメンバーが時にゆるっと、時に脱線、時に真剣にお答えします!いってみよう〜!
せり(黒澤世莉/演出)直江(直江里美/三郎役)ひさ枝(蔭山ひさ枝/田口役)カミケン(上条拳斗/影山役)後藤(後藤浩明/音楽)のゆ(植田望裕/演出助手)

子育てと役者の両立は大変?

Q:直江里美さん、創作に向き合う三郎のあり方がすてきでした。子育てと役者の両立は大変ですか?

A:
直江:大変でした!やっぱり自分だけのための時間が取れないのが辛い。稽古が終わった時から朝まで、子供に関して考えること・やることで隙間が埋められてしまって、もっと考えたいことがあるのに考えられない。
私は運良く実家などを頼れて演劇に集中できたのでラッキーだったけど、一時保育に預けたりしていたら金銭面でも大変だったと思うので、親族に頼れない人だったら本当に難しいと思う。稽古場に子供を連れてきていいよ、という現場であったのは心強かったです。そういう場所がもっと増えたらいいのにね(難しいよね)。

せり:「私だったらできるけど他の誰かはできない」というのは社会資本の問題で、恵まれた環境のひとだけが出来る、というのは問題だよね。誰でも出来るようにしたいです。

カミケンの背景は自宅?

Q:カミケンさん、背景がとてもラブリーなお部屋ですが、ご自宅ですか?

A:
カミケン:オンライン稽古の時も誰かに聞かれた気がするけど、バーチャル背景です。こんないい家住んでたら苦労しない!

音楽のはなし、いろいろ。

Q:音楽が即興とのことでしたが、音楽が入るタイミングなども即興だったのですか? 音楽そのものに加え、抑えめで入り方が素晴らしかったという印象を持ちました。
チューニング・イン、チューニング・アウトは、なるほどです。

A:
後藤:楽譜を演奏しているわけではないのですが、入り・終わり・変化のタイミング、どの曲でどんな音色やフレーズを使い、どんなことをするのか、などは全て細かく決まっています。その上で、その間の部分がいきものなので役者のセリフや動きに合わせて即興で演奏しています。控えめなのは僕の性格が控えめだからです。嘘です。(嘘かい!)

のゆ:音楽のお二人が楽譜ではなく、台本を見ながら演奏していたのがとても良いなと思いました。

後藤:音楽と芝居は同じ時空間を分け合って共存しなければいけない、それが面白いところでもあると思います。ただ、結局どちらが自分の時間をペースとして引き込むかの戦いになってしまう。例えばミュージカルなら、一旦曲が始まったらその中で演技も歌もやらなければならない。でもストレートプレイはそういうことをしなくていいし、いろんな方法があると思う。
そのために今は台本を時間の基にして、その上で色々決めていこうというのが基本的な考えなので、台本が楽譜みたいになっているんですね。

直江:最終日、三郎が食物連鎖の説明をするシーン(2幕)でウサギが生き返るところの振りをわかりやすくしたら、後藤さんがそれに合わせてくれたような気がして。その時にすごい「ライブだ!」って思った。

後藤:目の端や無意識で気配みたいなものを感じてやっているんだと思います。事前に打ち合わせしていたわけじゃないし、日々動作のきっかけなどは変わるんだけど、その気配とかには敏感になるのでそれに一瞬で反応する。応用問題みたいな感じでやっているところはあると思います。

直江:それがすごいな〜と思いました。

せり:それはミュージシャンだけじゃ無くて、俳優もやってるよね。ミュージシャンも俳優も、目の前に起きたことに対してリアクションがあってそれが音になるっていうのは素敵なことだよね。

俳優の性別と役の性別の交錯について

Q:俳優さんの性別と芝居の中の役柄を交錯させておられましたが、なにか意図がありましたらお知らせください。

A:
せり:端的に説明するのが難しいですね。(しばし悩む)

のゆ:せりさんが考えている間にすこし私の感想を。今回の配役は、「男性の役者だから男性の役の中からこの役」ではなく、「この役にこの役者が一番良いと思うからこの役」的な、「性別にとらわれない」配役だと考えていた。でも、いただいた感想を見ていると「性別をスイッチした配役」と表現している人が思ったより多くて、なんでだろうと思って。その答えとして、夫婦役の性別がスイッチしてるところがあるからかな?(と喋った時には思ったんですが、よく考えたら夫婦両方の性別がスイッチしているのは加代&茂助夫婦だけなのに後で気づきました。じゃあなぜなんだろう。byのゆ)

せり:「この人がこれやったら面白いんじゃない」で、そこに性別を考えないだけ、という言い方もできるけど……(しばし熟考)……なんで男が男役を、女が女役をやらなきゃいけないのか、私自身が今よくわからなくて、性別はずらしてもいいんじゃないかな?と思ったから今回はずらしました。
多分、一昨年より前の俺は性別揃えてやった方が演劇はいいなと思っていたと思う。でも、20世紀の戯曲を数多く読んでいく中で、演劇界というか戯曲自体が、歴史の中で無意識のホモソーシャルの中でできているんだな、ってのをしみじみ思った。なんだこの男優遇社会は、と思ってイライラして、そんなのダメじゃない?と思ったところから始まっているんだと思う。
今日もSNS上で話題になっていたけど、セクシュアルマイノリティの役はセクシュアルマイノリティがやるべきだという議論は確かにそう思う。ただ、マジョリティとしての男性がすごく得をしている環境が嫌だなと思っていて、それが性別をずらすことにつながったんだと思います。

まとめると、要点は2つ。一つは、性別のくびきもなく、演劇をもっと自由に作りたいと思った。もう一つは、とはいえ当事者性は大事だと思っていて、マイノリティを大事にする一方で、マジョリティとしての男性が優位に立っている状況はあると思うから、そこに対する苛立ちみたいなものが動機になってそうだなと思います。

『明後日の方向』の今後

せり:『赤目』は今後もいろんなところでできたらと考えている。そこからが『赤目』の本当の勝負だろうなと。

「明後日の方向」自体は、今年いっぱい、オンラインで定期的に集まりながら戯曲を読んでいくことをやっていこうと思う。そのなかでも、年に何回かは「この週末はここで集まれる人で何かやる」を東京だけじゃなくて福岡とか静岡とか北海道とか新潟とか……で、オンラインとリアルと交互にやっていきたい。
「明後日の方向」自体は演劇サークルみたいな感じで、出たり入ったり自由な感じでやっていければいいというのが今の考えだけど、またいろんな人の意見で変わっていくかもしれないね。
音楽の人と合わせるとかもやったらいいのか。後藤さんが来てシーンやってる後ろで音楽即興でやってもらう、みたいなことをやって貰うとか。贅沢だな。

後藤:行きますよ。

せり:やったあ!

僕は今まで出会ってきた俳優たちを織りなすということをやって、最終的にはそれがのゆとかの世代の演出家に渡っていくといいと思っている。そこまでやれると明後日の方向はすごく成功。だからカミケン・たろう(高田遼太郎/吉やんの奥さん役)・のゆ・きよか(谷川清夏/制作助手)の世代(『赤目』のU25組)がやりやすくなる足場を作っていけるといいですね。
一方で直江みたいに子供ができて活動しにくい人も活動できるようなこともやっていきながら、芸術的にもめっちゃいいってのをやっていきましょ、という感じです。 

(終)

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「明後日の方向」が目指している創作環境とそのための現場での取り組みを、制作助手の谷川さんが記事にしてくれています✨こちらもぜひご覧ください!

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