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『赤目』の創作環境についてーその1ーハラスメント対策

こんにちは!『赤目』制作助手の谷川です。だいぶ前に、これから明後日の方向が行っている創作環境改善の取り組みを紹介して行くよ!というnoteを書いたのですが、

いつの間にか公演期間が終了していました(!)
一ヶ月以上経っとるやん、、、本当にごめんなさい、、、泣

とはいえ、まだまだ映像配信の期間も残っていますし、明後日の方向は今後も活動を続けて行くので、『赤目』の劇場公演は終了しましたが、振り返りの意味も込めて、取り組み紹介&もっとこうなったらいいのにな、を書いていこうと思います。

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今日はハラスメント対策について書きます。

『赤目』では、ロイヤルコートシアターというイギリスの劇場が、2017年に発表したハラスメント防止のための行動規範を、日本語訳したものが座組み内で共有されていました。また、キャスト・スタッフと明後日の方向が締結した契約書(これも後々記事にします!)に、このガイドラインを双方が遵守する旨が記載されていました。

いくつか抜粋してみます。

●自分が持っている権限に責任を持たなければならない。自分より弱い立場にある人たちに対して、その権限を行使してはならない。
●作品を深めるために、人々に個人的な経験を話すことを強いるのは、いかなる場合でも不適切である。そのような行為が進んでなされた場合も、そのことは仕事の場の信頼関係の外に持ち出すべきではない。
●ハラスメントが立証されたら、それを隠してはならない。理事会や組織は、解雇の理由としてのハラスメントを隠匿してはならない。守秘義務の是非を問うことーなぜそれが必要か、誰が守られているのか。
●オープンで明確な報告システムを持つこと。一つの組織内に、三種類の報告システムを持つべきである。直属の上司や経営陣のみならず、仲間や同僚を活用すること。組織内の全員に責任がある。
●稽古場や劇場で、他人の肉体に関する性的な発言をすることは、いかなる場合でも不適切である。
●仕事と社交的な場の曖昧な境界を認識する。その曖昧さを利用してはならない。
(翻訳:常田景子)

上記はほんの一部ですが、ハラスメントを防止するために一人ひとりが持つべき心構えや、不適切な行為が列挙されています。

こうしたガイドラインが共有された背景としては、表現の場で起こるハラスメントがここ最近問題視され始めたということもありますし、明後日の方向では座組みの人たちができるだけフラットな関係性で意見を交換し合うことを是としているため、メンバーの心理的安全を担保すること、逆にそのフラットさがハラスメントの原因になってしまう可能性などを考えると、ハラスメント対策は必要不可欠だったと言えます。

自分が参加する公演でこのようなガイドラインが配られたのは初めてで、びっくりしたのと、そしてとっても嬉しかったです。団体サイド(という言い方が明後日の方向において適切か分からないんですけど!)が、こちらを大事に想ってくれてるんだなと感じました。

ただ、このガイドライン自体は素晴らしいものなのですが、ロイヤルコートシアター が公に向けて発信しているものなので、どうしても抽象的になってしまい、座組み内のルールとして運用するには少し不足がある気がします。

ハラスメント防止のための心構えを全員で共有するだけでは、ガイドラインの遵守といっても「気をつける」くらいしかできません。具体的にどのようなルールが必要か/可能かは座組みの状況に応じて変わってくるはずので、ロイヤルコートシアターの行動規範のような、大きなガイドラインを参照しながら、小さく細かなルールを公演ごとに設定するべきだと思います。

って言うのは簡単ですが実際にルールを設定して運用するのはめちゃめちゃ大変なんですね…。パッと思いつく課題をあげてみます。

具体的にどのような行為がハラスメントに値するとするのか?その線引きは何を基準にして行うのか?
誰が窓口対応をするのが適切か?実際に相談があった場合、誰がどうやって調査・検証するのか?
ハラスメント行為があったということになった場合、降板や興行の続行の判断は誰がするのか?その判断が、加害者や団体の利益におもねることなく適切になされるにはどうしたらいいのか?
事件が起きた際はどのような情報が誰に共有されるのか?被害者のプライバシーはきちんと守られるのか?
被害者のケアはどうするのか?慰謝料や、治療費が発生した場合、どうすれば良いのか?

ちゃんと考えるともっともっと出てくるはずです。

難しい!頭が痛い!自分も団体の主宰をやってるので言っちゃいますがこんなに難しいことを公演ごとに考えている余裕はないです。

ルールを作るためのガイドラインがあったらいいのかな…。一回作っちゃえばその後の公演では細部を修正するだけでいけるのか…?作ったことがないので分かりません。

一つ思うのは、映像配信やチケット販売管理を外注するみたいに、窓口対応や事件の調査・検証を請け負うサービス?があったらいいな、ということです。団体に実現可能な範囲でのルールを一緒に考えてくれて、何か起きた時の窓口対応や調査・検証をしてくれる、みたいな。専任でそういうスタッフさんをつけるのも、できる人がいればアリかもしれないです。相談窓口が座組みの内部にあると、実際に事件が起きた場合は公演を破壊しかねないので相談できないだろうし、知識と経験がないと適切なルール設定はほぼ不可能だろうと思うので。

大事なのは分かっちゃいるけど実際にきちんと対策しようと思うと大変に難しいハラスメント問題。個人的にも、このnoteでの振り返りで止めずにきちんと考えていきたいですし、明後日の方向の活動の一環としてゆっくり時間をかけて考えていく、みたいなことしてくれないかなあと勝手に思っています。

少し長くなってしまいましたが、振り返りnote第一弾はここまで!次は契約書と感染症対策について書きます。また近いうちに!

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配信のことや、舞台写真、皆さまからの感想などなど演出助手の植田さんがまとめてくださってます。ぜひチェックしてみてください!


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