国民による課題の発見と国会議員の対応

平井宏冶氏の『経済安全保障リスク 米中対立が突き付けたビジネスの課題』より、国民として考える課題があるように思えました。

平井氏は、amazonの商品説明から引用すると次のような方です。

株式会社アシスト社長。1958年神奈川県生まれ。1982年電機メーカー入社。外資系投資銀行、M&A仲介会社、メガバンクグループの証券会社、会計コンサルティング会社で勤務後、2016年アシスト社長。1991年からM&A(企業の合併・買収)や事業再生の助言支援を行う傍ら、メディアに寄稿や講演会を行う。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

氏は、30年間M&Aや事業再生の支援業務に関わってきたそうです。

それを踏まえて、『経済安全保障リスク』の本文は以下のような記述がありました。

(省略)私は、この改正法を研究しているうちに、はたと気づいた事があった。(省略)
 つまり、安全保障に関わるものは、GATSの例外にするという条文がちゃんとあるのだ。私は、衆議院議員の長尾敬氏に提案申し上げた。GATSの第十四条の二に則り、FIRRMAの802ルールのように、自衛隊基地の周囲2キロ以内、15キロ以内、国境にまつわる諸島というようにカテゴリーを設けて、外国人による土地買収の制限をかけられるのではないか、と説明した。
 長尾議員は現在、世論に対してツイッターや自身のブログを通じて盛んに情報を発信し、「日本版CFIUS創設に動きます!外国人土地問題解決のために!」というメッセージを掲げ、政府を動かすべく熱心に活動されている。

平井 宏冶, 経済安全保障リスク, 28~29ページ

別の記事「国民の知見と対策案の実現までの道」で、国民と政府(国会議員や行政役人)との関係として、以下があるのではと指摘しました。

・国民のほうが政府よりも問題に対して適切な「知見」をもっている可能性
・国民のほうが政府よりも問題に対して適切な「対策」をもっている可能性

また、そのような国民が何ができるのか、ということに関しても例をあげました。

・国会議員(地方議員)に情報を届ける。
・届けるだけでなく、届けたことを情報発信する。
・届けてその後の進捗を確認する。
・進捗を教えてくれてないなら、教えてくれないことを情報発信する。
・進捗を教えてくれたら、その内容を情報発信する。
・国民に対し、適切な説明責任を果たさないのであれば、選挙で落選させる。

この例に当てはまる形で、上記の引用を考えてみます。
・平井さんは、長尾議員よりも、適切と(思われる)「知見」をもっていました
・平井さんは、長尾議員よりも、適切と(思われる)「対策」をもっていました
・平井さんは、長尾議員に情報を届けました。
・長尾議員は、この情報をもとに、なにか行動をしてくれました(ように見えます)

ただし、より国民が行動するためには、もう少し細かな知見が必要です。
・平井さんは、どのようにして、長尾議員に情報を提供する機会を得れたのか
・長尾議員は、どのような判断で、平井さんからの情報を扱ったのか

もっと一般化すれば以下のようになります。
・国民は、どのようにして、国会議員に情報を提供する機会が得られるのか
・国会議員は、どのような判断で、国民からの情報を扱うのか

特に、1つ目は重要です。国民側と国会議員側のニーズがマッチするとは限らないためです。
・国民からの情報の提供のやり方により、国会議員側の受け取り方が変わる
 ・ツイッター等のオンラインでの情報提供
 ・手紙等のオフラインでの情報提供
 ・実際に会うことでの情報提供
・国民が提供する発見情報が適切でない、または不十分である
・国民が提供する対策情報が適切でない、または不十分である
・国会議員側に、発見情報が理解できない
・国会議員側に、対策情報が理解できない
・国民の立場(年齢や職業、実績等)により、国会議員が受ける情報にバイアスがかかる

国民側と国会議員側のニーズがマッチしないと互いに不満が生まれます。
・国民側としては、国のためを思って情報提供しているのに、国会議員が真摯に対応してくれない。理解してくれない。
・国会議員側としては、適切に十分に精査された情報とは限らないため、一つ一つに対応すると、労力がかかりすぎる。精査されていたとしても、理解のために労力がかかる。

結果としては、専門家や有識者といった、一定の品質を保っていると思われる人からの情報を国会議員は優先することになるでしょう。

他の問題としては、以下が考えられます。
・透明性:国民から提供された情報が、国会議員に伝わったあとでどのように処理したれたのかの透明性が必要です。
・反論容易性:透明性があるように何らかが決められたとしても、その決定が適切とは限りません。その決定に対し、さらなる意見を出せることが望ましいと思われます。なぜなら、国民側としても、意見が一つにまとまっているとは限らないためです。





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