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溶けたアイスと君の嘘

大型動画投稿祭
”モミアゲヲ投稿祭~2024初夏~”
投稿作品の小説版です。
私の個人noteにも併載している内容です。



「ねぇ、たっくん」

------8月半ば、校舎の左側にある階段で
アイスを食べる僕に君はそう話し始めた。

「なんだい?きまちゃん」

急に話しかける彼女の額からは蒸し暑い熱気と
アスファルトに照り返った日差しの熱で
汗がにじみだす。
その姿は若干17歳にしてはやけに
大人びた顔と相まって色気を帯びて見えた。

「今たっくんが持ってるそのアイス
 溶ける前に食べるとささやかな願いが叶うんだって」

ぼくが手に持っているコーンには
半球型のチョコアイスとバニラアイスが1段ずつ、2段がのっている
そんなこのアイスは非常に溶けやすいことで学校でも話題のものだった
ただ、そんなうわさ話があることは僕は知らなかった
ぼくの初めて聞いたといわんばかりの顔を見て
自慢げに話す君はずっと笑顔だった

「そうなんだ。きまちゃんって噂話
 よく知ってるよね」

素直に感心してると何かを察したようで
彼女はふくれっ顔で僕の言葉に返した

「なんかリアクションしてくれないと
 素直に褒められると照れるより恥ずかしいよ」

そんなふくれっ顔のままの彼女に
僕は言い訳をするように言葉を繋げた

「リアクション薄いのはきまちゃん知ってるでしょ
 ごめんよ」

僕の苦しい言い訳に溜息をつきながら

「いいよいいよ。そんなたっくんも好きだし」

いつも通りの反応をした。

でも僕は知っている
彼女の噂話は大抵、まるっきりの嘘
僕が少し鬱屈な様子をしてたのを和ませる為の嘘
いつも僕がクヨクヨしている時に君はいつも通りの顔で
噂話や雑学で場を和ませてくる
そんな君に心を引っ張られたんだ

「----かなわないな」

ふとそう呟いてしまった
既にアイスは溶け始めていた



【キャラ紹介】

 《比嘉巧美》(通称:たっくん)
  三ヶ志多高等学校1年生
  考え事と計算が好きな男子高生
  その考えすぎてしまう性格故に人の心をトレースしてしまう事が多く
  精神に負担がかかることもしばしば
  幼馴染のきまちゃんに憧れと恋心を抱いている

 《八条きまり》(通称:きまちゃん)
  三ヶ志多高等学校1年生
  知識欲と好奇心が旺盛な女子高生
  信憑性皆無な噂話から専門知識まで幅広く学ぼうとしており
  その過程で予想や理想の物語を作ることも多い
  幼馴染のたっくんに素直に告白できないでいる

いつか続編書きたいと思っているので軽くキャラ紹介も書いてみた
参考までに。



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