広尾サラブレッド倶楽部2022年2歳馬募集 雑感

はじめに

毎度お馴染みの募集馬雑感、今回もやってまいります。

はじめに、少しだけ毒を吐かせてください。不快な思いをされる方もいらっしゃるかもしれませんので、読み飛ばしていただいて結構です。

既に一口馬主ライフを満喫されている方なら当然実感されているように、出資馬が1勝を挙げることはとても尊いことです。未勝利引退や、最悪未出走引退ということもザラにあります。

当然、そのような馬に出資していると収支は大幅マイナスです。収支だけがすべてではない、というのもよくわかりますが、あまりにも赤字が増えると、せっかくの趣味である一口馬主が続けられなくなる恐れがあります。

広尾サラブレッド倶楽部の現3歳馬を見てみると、バスラットレオン、カイザーノヴァ以外はすべて未勝利、勝ち上がり率は2/17です。掲示板にすら入ったことのない馬が多数いますし、すでに引退している馬も多いです。

この現実を踏まえると、今回の募集馬も「みんな勝ち上がって万々歳」という可能性は非常に低いでしょう。そもそも、ノーザン系大手クラブとは違い、100人が見て100人が「良い」と思えるような馬は、日高系クラブにはいないということを大前提に出資を判断する必要があります。

そのような中で、1勝を挙げ、長く楽しませてくれる馬を見極めるべく「完璧な馬はいない」「どこに目を瞑るか」「どこを評価するか」という点を意識して、出資馬を慎重に検討すべきと考えます。

では、以下本題。

ハイアーラヴの20 牡 2.29生
父キズナ 母父Sadler's Wells 栗東:矢作厩舎
募集価格5,700万円 一口価格19,000円

【馬体写真】
繋ぎの角度、肩の角度も標準的だと思います。芝向きでしょう。
馬体バランスは今回の募集馬の中ではトップクラスではないでしょうか。
値付けが強気すぎますが、最高値がついたこと自体は十分理解できます。

【歩様動画】
手先の柔らかさが目立ちます。身のこなしも悪くはありませんが、個人的にはもう少しトモに力感がほしいところ。
また、勝ち気な気性が感じられます。これが行き過ぎてしまうと、レースに悪影響を及ぼす可能性もあるので、留意が必要だと思います。

【測尺】
馬体重418kg、体高157cm、胸囲171cm、管囲20.0cm
ちょっと小さいですね。これから大きくなるとは思いますが、それでも平均より少し小さいのではないでしょうか。450kgくらいかな。

【血統】
母18歳時の11番仔。
半兄クレッシェンドラヴ(父ステイゴールド)は昨年の有馬記念にも出走した広尾の看板馬です。
母父Sadler's Wellsを強調したスタミナ型の配合ですが、現代的なスピード競馬に対応できるかがやや疑問です。
上手く才能を発揮できれば一発がありそうですが、勝ち上がりに苦労する可能性もありそうです。

【厩舎】
言わずとしれたトップトレーナーで、昨年はリーディング、今年もこの記事を書いている時点で首位を走っています。
広尾の期待馬は矢作厩舎に入れる流れが明らかに出ている中、この募集価格、この厩舎、今年の一番馬はこれだ!というクラブの期待が現れています。

ジアナズドリームの20 メス 1.6生
父ドゥラメンテ 母父Twirling Candy 栗東:四位厩舎
募集価格3,800万円 一口価格19,000円

【馬体写真】
トモを中心に、パーツの薄さが目立ちます。ただ皮膚の質感など、どこか高貴な雰囲気をまとっており、全体のバランス自体も悪くはありません。良血馬らしい馬体とも言えます。
繋ぎの角度はほんのり立ち気味に見えますが、気にするほどではありません。芝向きでしょう。

【歩様動画】
やはり力感に欠ける印象があります。一方で、独特の気品は動画においても感じられます。こういう馬は好みではありますが、それでももう少しインパクトがほしいところです。

【測尺】
馬体重430kg、体高156cm、胸囲171cm、管囲20.2cm
現時点ではそれなりのサイズですが、早生まれを考慮するとここから大きくなる可能性は低いかもしれません。初仔の牝馬でもありますしね。

【血統】
母7歳時の初仔。
母は北米で25戦11勝の成績を残しています。
Mr.Prospectorの系列ぐるみのクロスを中心に、父父キングカメハメハを強調。Haloのクロスがもう少し奥にあればさらにシンプルさが際立ったと思いますが、悪くはないでしょう。

【厩舎】
ウオッカ、ディープスカイでダービーを連覇した元名ジョッキー。
開業したばかりで、まだ目立った成績は挙げられていませんが、馬に対する真摯な態度が関係者から高評価を受けているように見受けられます。

エンパイアブルーの20 牡 4.11生
父マジェスティックウォリアー 母父エンパイアメーカー 美浦:高柳瑞厩舎
募集価格2,400万円 一口価格12,000円

【馬体写真】
ちょっとバランスが崩れ気味かな。成長途上ということだと思います。
立ち気味の肩、短めの繋ぎと、ダート向きの馬体に感じられます。血統も明らかにダート狙いでしょうから、これは狙い通りでしょう。

【歩様動画】
力感を感じますし、それでいてさほど固くない。動き自体は一定の評価をすべきように思います。
ただ、前後のアングルになるとまっすぐ歩けておらず、ここは気になるところです。(前後アングルでの歩様、歩かせ方はノーザン系クラブの募集動画と最も差が大きいところだと個人的には思います…)

【測尺】
馬体重396kg、体高147cm、胸囲162cm、管囲19.0cm
うーん、小さい。4月生まれかつ、6月中旬測定というところを考慮してもちょっと小さいです。初仔でもありますし、ここはネックですね。ダートを主戦場にするなら特に。

【血統】
母8歳時の初仔。
母は3~6歳時に10戦して2勝。能力自体はもう少し上を目指せるものがあったようにも思いますが、満足に使えなかったのが惜しい。
前面でのクロスがとっ散らかっているように見え、芝で素軽いスピードを発揮するような配合には思えず。ただ、ダート狙いだと思うので、米系でゴテゴテ固めるのも戦略としてはありだと思います。

【厩舎】
昨年のランキングは113位。
広尾の馬ではパラスアテナを管理しており、クラブとしては好印象なんだと思います。
ヴィータアレグリアが活躍していた頃は関東のホープのような扱いを受けており、またダートが得意という評判もありました。当馬は比較的合うように思います。

レトロクラシックの20 牡 3.13生
父ドレフォン 母父ディープインパクト 栗東:高柳大厩舎
募集価格2,000万円 一口価格10,000円

【馬体写真】
腰高でややバランスが崩れる時期だと思いますが、最低限のバランス感は維持。どちらかといえばダートかな、とも思える一方で、前述のエンパイアブルーの20と比較すると芝でもやれそうな雰囲気があります。

【歩様動画】
踏み込みがなかなか深く、歩様に力感を感じます。半兄(父エイシンフラッシュ)も広尾で募集されていましたが、そちらは非力な印象だったので、ここは父ドレフォンの良いところが出たのではないでしょうか。

【測尺】
馬体重419kg、体高151cm、胸囲171cm、管囲20.0cm
もう少しだけサイズが欲しかった。ただ、腰高のシルエットから、ここから成長することも考えられます。管囲が標準サイズあるのも良いですね。

【血統】
母8歳時の2番仔。
高齢出産や初仔が続いたあとにこのプロフィールを見ると惹かれますね。
ドレフォン×ディープは既に勝ち馬を出していますが、相性としてはさほど良いと思っていません。血統派がこぞってハイアムズビーチをPOG指名しているように、クロフネとは好相性。
一方で前述したように、半兄があまり大きくなかった中で筋肉量のあるドレフォンに変わったのは馬体面ではプラスだと思っています。

【厩舎】
昨年はランキング84位と、特筆すべき成績ではありませんでしたが、今年はテーオーケインズで帝王賞を制するなど、ブレイクの気配があります。
ソリストサンダーもそうですが、活躍馬がダートに偏っている気もしますが、当馬はダートで十分に走れる馬だと思いますので、そこは気にしなくて良いと思われます。

ゴッドフロアーの20 牡 2.26生
父ダンカーク 母父ハーツクライ 栗東:松永幹厩舎
募集価格1,600万円 一口価格8,000円

【馬体写真】
足が短く、バランス的にはあまり好みではありません。
前後から見ても、やはりバランスが崩れ気味に見えますし、どうでしょう、強調材料は少ないように思われます。

【歩様動画】
写真の項では評価できないとしましたが、歩様自体はさほど悪くありません。芝でも走れそうだな、と感じました。
気性は比較的従順そうで、ここは良いポイントだと思います。

【測尺】
体重405kg、体高148cm、胸囲167cm、管囲18.5cm
うーん、小さい。募集時コメントに「雄大な馬体」とあるんですがね。6月中旬測定とはいえ、2月生まれでこれは相当厳しいのではないでしょうか。管囲も細いですし。

【血統】
母10歳時の3番仔。
半兄ゴッドシエル(父エピファネイア)は広尾で募集された馬ですが、現在大苦戦中。気性面が特に厳しいようで、既に去勢されています。
Mr.Prospectorの系列ぐるみのクロスを中心に、比較的シンプルな構成。できれば母父のHail to Reasonはもう少し引っ込んでおいてもらえれば更にシンプルだったのでしょうが、特に悪くはないと思います。

【厩舎】
昨年のランキングは37位。その前年はトップ10入りを果たしています。
芝での実績が目立つのかな、と思いましたが、ダートや障害でも活躍馬を排出しており、万能タイプの厩舎。半兄を管理しているのも良い点ではないでしょうか。
ラッキーライラックがG1を2勝したにも関わらず成績が落ち込んだのは少しだけ気になります。

クエストフォーワンダーの20 牡 4.24生
父サトノアラジン 母父マクフィ 美浦:中館厩舎
募集価格1,500万円 一口価格7,500円

【馬体写真】
好みかどうかで言えば微妙ですが、半兄の募集時よりは整った馬体だと思います。半兄は立派な筋肉を誇りましたが、バランスの面で好みから外れ、スルーしました。
芝のマイルから中距離が似合う体つきをしていますね。

【歩様動画】
歩き自体はそれなりに力感も感じますし、なかなか良い雰囲気です。父ミッキーアイルで短距離向きな半兄よりバランスも保たれている気がします。ただ、耳の動きなんかを見ていると、ちょっと神経質なのかな、と心配します。

【測尺】
馬体重445kg、体高155cm、胸囲186cm、管囲20.7cm
良いですね。今回の募集馬の中で唯一平均以上のサイズになる可能性を秘めた馬だと思います。でかくなりすぎる感じもありませんし、ここはナンバーワンですね。

【血統】
母8歳時の3番仔。
半姉クエストフォーラヴ(父キズナ)、半兄ウィンダミア(父ミッキーアイル)ともに広尾で募集された馬。
半兄は結構人気だった印象です。半姉は小柄だったのがネックでしたね。
LyphardのNearctic抜けが主導で、Mr.Prospectorも一定の影響を持っているでしょう。スタミナの血も含んでおり、やはり芝の中距離ぐらいが似合う感じがします。
3年続けてディープ直子をつけているのも、狙いがあってのことだと思います。

【厩舎】
昨年のランキングは22位。
思ったより頑張っているというのが正直な感想です。馬主からの満足度も高いといった記事を最近見た気もします。
実際、突出した活躍馬がいないのにこの成績というのは日高系一口馬主にとっては特に評価すべき点だと思います。

ラズベリータイムの20 メス 2.25生
父エイシンフラッシュ 母父フジキセキ 栗東:田中克厩舎
募集価格1,400万円 一口価格7,000円

【馬体写真】
肩の角度の割に前繋ぎが寝てますね。エイシンフラッシュ産駒らしく、黒光りするので見栄えしますが、それでもバランス面で少し崩れて見えますので、あまり推薦はしにくいです。

【歩様動画】
めっちゃ良いとは思いませんが、踏み込み、柔軟性ともにそこまで悪くもないと思います。もうちょい首を上手く使えればなあとか、欲を言えばキリがありませんが。

【測尺】
馬体重399kg、体高146cm、胸囲169cm、管囲18.5cm
あー、こちらも小さいですね。全姉はそこそこサイズがありましたので、当馬もさすがにこのサイズで続くようだと厳しいです。ただ2月生まれで、ここから急成長があるかどうか…

【血統】
母17歳時の9番仔。
全姉ミトノレインボーは準オープンまで出世しました。
異系配合で、前面でのクロスが少ないです。その中で強調された母母。全姉はスプリンターでしたが、Creperoの系列ぐるみのクロスなど、一定のスタミナはあるように思うんですがね。
クロス総数も少なめですし、早期から動ける可能性は秘めていると思います。

【厩舎】
開業したばかりでまだ実績はさほどありません。
ただ、義父が矢作調教師というのが気になります。クラブとしても、良好な関係を築いていきたいと考えているでしょう。
ハナズレジェンドも転厩しましたしね。

総評

◎レトロクラシックの20
○クエストフォーワンダーの20
▲ハイアーラヴの20

価格を込みで考えると上記の評価順になりました。ハイアーラヴは一発がありそうですが、さすがに強気すぎる値段設定に対して手を出す気がなくなりました。

個人としては◎は申し込むつもりで、財布と相談しつつ○を検討…というところでしょうか。既にこの世代は2頭持っていますしね。

以上です。
ご覧いただき、ありがとうございました。馬体、血統ともに素人の雑感ですが、出資馬検討の参考になれば幸いです。

皆様の一口馬主ライフが充実したものになりますように。

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