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ひとは褒められると必ず嬉しいのだろうか?

このタイトルの答えを一言でいうなら「ノー」です。ここでは、その根拠の一端を示す二つの研究を紹介します。

2005年に起きた、福知山線脱線事故を受けて、JR西日本は、翌年、「安全研究所」を社内に設立しました。そして、2008年に、人的要因が安全に与える影響についての研究結果が発表されました。

研究の一つとして実施された、「効果的なほめ方・しかり方」についてのアンケート調査によると、部下が行った工夫を上司が評価した場合、両者の間に良い関係性が築かれている場合は、業務に対する責任感が向上しますが、両者の関係が悪ければ、逆に低下するという結果が出たのです。

つまり、「上司と部下の関係が良好な状態を保ったうえでほめることが重要」だということが分かったのです。

一方、1994年に浅野が考案した〈対話法〉の理論では、「ほめること」は「反応型応答」(相手が話した内容について、聞き手が、自分の考えや気持ちを言うこと)に分類されます。そして、2008年に浅野が発表した研究によると、反応型応答は、その好感度が、相手との信頼関係など、様々な条件に左右されること、一方、「確認型応答」(相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめるための応答)は、信頼関係などの様々な条件ににあまり影響されずに、好感度が比較的高く保たれる傾向にあることが分かりました。なお、浅野による、この研究結果は、2008年の8月に九州で開かれた、コミュニケーション関係の国際学会で発表されました。

JR西日本の研究では、ほめるという行為と業務に対する責任感との関係について調査したわけですが、「ほめられる」ことに対する好感度が、業務に対する責任感に影響すると仮定するなら、浅野による研究、つまり〈対話法〉理論との共通点が多いと言えるでしょう。

〈対話法〉についての詳細は、対話法研究所のサイトでご覧ください。

参考文献
■関係の良くない上司からほめられても、むしろ「やる気が失せる」という現実―「ほめる」「ほめられる」をめぐる上司と部下のギャップ(間杉俊彦、DIAMOND online、2008)リンク
■聞き手の応答が話し手に与える好感度を質問紙によって測定する試みー確認型応答と反応 型応答の心理的効果ー(浅野良雄、ヘルスサイエンス研究・第12巻1号、2008)

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