1 サッカーチームにおける持久的なトレーニングの取り組み(月刊トレーニング・ジャーナル2020年6月号、特集/持久力とトレーニング)

早川直樹・V・ファーレン長崎フィットネスコーチ

持久的なトレーニングが必要な球技として代表的な種目がサッカーである。長年、日本代表をはじめとする多くのサッカー選手のコンディショニングに携わってこられた、V・ファーレン長崎フィットネスコーチの早川氏に、チームでの取り組みについてお話を伺った。

サッカーの競技特性

サッカーは90分の試合中に10〜12kmを走り、スプリントや方向転換、ボディコンタクトやジャンプなどの強度の高い運動が繰り返される競技です。そのためサッカー選手は「持久力」だけでなく「高強度運動」や「スピード」、「筋力」についてもトレーニングしなければなりません。また「持久力」は長く運動を続けられる能力と捉えられますが、サッカーでは強度の高い運動からの「回復能力」というようにも考えられます。

サッカーのパフォーマンスを構成する要素としては、技術面、戦術面、メンタル面、体力面などが大きな柱となり、体力面では前述した「持久力」「高強度運動」「スピード」「筋力」の4つが柱となります。これらの要素をバランスよくトレーニングし、選手の能力を高めていくことが重要です。今回は「持久的なトレーニング」ということでお話しさせていただきます。

測定について

私はサッカー選手の持久的な能力を測定するためにプレシーズンにYO-YO intermittent Recovery Test(Level 2)を行っています。テストはシーズン中を含め年に3回ほど行うことが理想ですが、テストの実施にはチームのスケジュール、監督の考え方などにも左右されるので、年1回しか行なえない場合もあります。またシーズン中には持久的なコンディションを把握するため、最大下テスト(YO-YO intermittent Recovery Test Level 1を800m)も実施しています。

このテストでは、テスト終了直後と1分後の心拍数から、それぞれ運動適応と回復力を評価します。シーズン中であれば各自の最大心拍数の80〜85%(以下80〜85%HRmaxと表記)であればノーマルとしています。テスト終了直後の数値(=% HRmax)が低ければ低いほど適応能力が高いと考えられますし、1分後の心拍数の減少量(減少率)が大きいほど回復能力が高いと捉えられます。最大下テストであれば選手にとって大きな負担になりませんし、ウォーミングアップを含めて10分程度で行えるので、シーズン中に5〜10回程度は行うようにしています。

最大心拍数を利用する

持久的なトレーニングには最大心拍数が有効な数値になります。私はプレシーズンで行うYO-YO intermit­tent Recovery Test(Level 2)時の最大心拍数をそのシーズンの最大心拍数としています。ケガなどによりテストに参加できない選手は、年齢と体重から最大心拍数を推定する計算式から算出しています。また実際のトレーニング時の心拍計の値から最大心拍数を決定することもあります。

そして持久的なトレーニング時には、個々の最大心拍数に基づいて75〜85%HRmaxの強度や85〜95%HRmaxの強度といった設定で指示をしています。

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