2.「埼玉スポーツメディカルサポート」による野球検診 新島慎也(月刊スポーツメディスン No. 250 特集/野球検診が担うもの)


新島慎也
川口工業総合病院リハビリテーション科、NPO法人 埼玉スポーツメディカルサポート

月刊スポーツメディスン 特集記事 目次ページ
https://note.com/asano_masashi/n/n940c46650669

野球検診の内容

──どのような検診内容なのでしょうか。

新島:私たちNPO法人 埼玉スポーツメディカルサポートで行っている野球検診は、肘エコーに加えて2つの班、1つは肩肘の所見を重点的にみる班と、全身所見をみる班に分けて実施しています。日本プロ野球機構(NPB)のほうで主催されている検診では、下半身の柔軟性など身体所見の項目が統一されていて、その項目を参考として組み立てています(図1)。



図1 検診用紙

──一度に何人くらいの選手を診るのですか。

新島:2月5日に、埼玉県のリトルリーグの大会の開会式に合わせて行った野球検診は161名でした。これが今年行った中では一番大きな規模となりました。その後、2月19日に埼玉県野球協議会が主催した埼玉baseballサミットのイベントの1つとして行ったものが二番目に大規模で、ベルーナドームで開催しました。そちらは約80名でした。

──スタッフは何人体制になりますか。

新島:160人規模のときはとくにスタッフの人数が必要で、医師7名と理学療法士40名を集めました。それでもぎりぎりで大変でした。

──スタッフの人数が少ないとき、項目を減らすこともあるのでしょうか。

新島:今回は十分な人数が集められたので、取れるだけのデータを集めましたが、上半身の肩・肘の所見と全身所見と分けると検査を受ける選手も動きが多くなってしまいますし、時間的にも限りがありますので、今後はもう少し項目を選定してグループ分けせずに肩肘も全身も一通り検者1人で取れるようにしようという話はしています。

──動線をうまく構成しようという工夫でしょうか。

新島:そうですね。


写真①



写真②

スタッフの募集と運営の工夫

──スタッフの募集はどのようにしていますか。

新島:この会の立ち上げが新型コロナウイルスの感染拡大の真っ只中でした。去年も企画はしていましたが実施できませんでしたので、募集期間は結構長かったのです。最初はドクターが所属している病院の理学療法士を中心にコアスタッフを集め、そこから知り合いに声をかけてもらって、という感じで集めました。それでも足りなさそうだったので、NPO法人としてはオンラインセミナーを開催し、そのセミナーで投球障害を診ているドクターやスポーツ現場で活動しているトレーナーを通して私たちを知ってもらい、声をかけて広げていきました。ほかにSNSで募集をかけたりしました。

──検診を行う前にスタッフは研修などを受けるのでしょうか。

新島:そうですね。本当はその場で集まって研修をするのが理想ですが、コアメンバーが集まって項目を選定し、スタッフ向けの講習会としては一連の測定方法を動画撮影してLINEやSlackなどで共有し、「本番までに確認しておいてください」としました。

──オンラインを活用しています。

新島:そうせざるを得なかったという面もあります。

──スタッフが集まらなくて困ったわけではなかったのですね。

新島:そうですね。去年、やりたくてもできなかったので、「新島さんは野球肘検診をやってるんですね、今度やるときは声をかけてください」というような話もたくさんいただいていて、今回に関してはあまり苦労はしませんでした。

 もともと、私の所属する病院に西武ライオンズから毎年依頼があって、僕自身も入職して10年、検診に関わっており、そういうつながりもあったりします。

──大会の開会式やイベントに合わせて実施することで、自然にそこにいる人たちが対象者になるような仕掛けなのですね。

新島:そうですね。2月5日の大規模なものに関しては、本当は一年前に予定していましたが、新型コロナにより開会式自体が中止になってしまいました。今年はようやく実施できました。

──開会式の後に行うのですか、あるいは並行して実施するのでしょうか。また時間はどのくらいかかるのでしょうか。

新島:野球検診は開会式の後に行います。時間はカツカツに詰めて2時間でした。160人を40人ずつ、4つのグループに分けて、同時進行でぐるぐる回ってもらうような形でした。また検診だけではつまらないだろうということで、ストレッチ指導のクラスもつくりました。上半身の所見、全身所見、超音波(エコー)、ストレッチ指導のブースの4つで、それを回していく感じです。

──選手が記入用紙を持って回るのでしょうか。それとも電子化されていて端末に入力していくのでしょうか。

新島:一番最初の大規模なものは、選手個人個人に紙に記入してもらい、それをこちらが後で打ち込む、という形でしたが、それだと入力の手間がかかります。

 次に行ったときは紙での記入とグーグルフォームでの打ち込みを併用してみました。すると意外とオンラインもスムーズにできることがわかりました。そこで3月の検診では完全にオンラインで直接打ち込み、ペーパーレスとしました。そうすると事後処理も格段に楽ですし、記入漏れにも気づけるので、そちらの方がやりやすいということになりました。

──検診の中で選手へのフィードバックもするのですか。

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