2.現地レポート 埼玉県でのジュニアアスリート育成をサポートする ──令和5年度ジュニア強化対策合同会議(月刊トレーニング・ジャーナル2024年1月号、特集/トータルコンディショニングの鍵となるもの)



特集目次
https://note.com/asano_masashi/n/n2147fb5d0cbc

選手をトータルで育てていく

 2023年12月6日、スポーツ総合センター(埼玉県上尾市)にて、令和5年度ジュニア強化対策合同会議が開催された。最初に挨拶として、埼玉県スポーツ協会専務理事の久保正美氏が「この会議は、昭和57(1982)年より中高合同強化対策として設置された。設置後に国民体育大会での少年男女の成績が向上し、この年代での上位入賞が続いている。ただし直近3年ほど、成績がやや振るわない状況となっている。これから優秀な選手が埼玉県で育ち、世界で活躍してほしい。そのためにもスポーツ環境の改善を行い、競技力強化に当たっていきたい。今回は『トータルコンディショニング』という考え方を取り入れた研修となっており、選手をトータルで育てていく環境を高めていってほしい」と話した。

 続いて埼玉県県民生活部のスポーツ振興課や、県高体連、県中体連、埼玉県スポーツ協会からも、現状についての報告や、今後の方向性などについて報告が行われた。


写真1 スポーツ総合センター


写真2 挨拶する久保氏

全体講演

 続いて全体を対象とした講演が行われた。講演タイトルは「ジュニアアスリートのためのトータルコンディショニング」である。講師は澤野博氏(UNIT、彩の国スポーツ推進パートナー)であった。効率的にパフォーマンスを向上させていくうえで、さまざまな制約があるが、それをどうクリアしていくか、ジュニアからトップレベルまで、どのレベルの選手であっても、トータルで見ていく必要がある、と述べて5つの要素の頭文字から「タテフスマ」を示した。それぞれ、タクティクス、テクニック、フィジカル、スピリット、マテリアルを意味する。

 コンディショニングは総合的かつ計画的に維持向上していくことが求められる。「ぜひコーディネーターとなって、必要な指導者を加えてチームづくりをしてほしい。専門家を使ってほしい」と呼びかけた。パフォーマンス向上のためにはその競技の練習をする必要があり、そのためには強いフィジカルが必要になり、それには総合的にコンディショニングを行う必要がある。本棚に多くの書籍が詰まった写真を示し、「一人で抱え込まず、サポートスタッフと連携してください。専門職の知見を活用しない手はない」とした。

 さらに、薄いベールを重ねるように、ある程度の頻度でトレーニングを継続することや、年間計画に基づいて指導を行う必要があること、痛みを抱えながらトレーニングするのは効率が悪く、傷害を起こしてからでは遅いということ、一口に「トレーナー」と呼ばれる専門家にも、詳しく見るとトレーニングやケガの予防、ケガからの復帰など、それぞれ別の専門職や資格に分かれているということも示した。まとめとして専門職の専門性を理解してほしいこと、自重を用いたトレーニングからの発展を考えるべきであること、流行へ飛びつくことを危惧していることなども伝え、まずは気軽に相談を、というメッセージで締めくくった。


写真3 講師の澤野氏

分野別講演

 さらに、4会場に分かれて分野別講演「スポーツ科学を活用したジュニアアスリートサポート」が行われた。長瀬エリカ氏(埼玉県AT連絡協議会)による「動作評価・傷害予防」では、スポーツ外傷・傷害の予防のために、どのような因子があるかや、どのように評価するかといったことが実技も交えて説明された。参加者らは両手を挙上したスクワットのほか、「クロック」(側臥位から、前方に伸ばした上肢を円のような軌道を描くように動かすなど)と呼ばれる基本的な動きを体験しながら、肩甲骨などのモビリティやスタビリティー、コーディネーションの3つが重要であるということが伝えられた。

 このほか、「リカバリー」については山本宣夫氏(トム鍼灸整骨院院長)、「メンタルコンディショニング」は須田和也氏(共栄大学)、「スポーツ栄養」は山鹿由莉氏(東海大学)がそれぞれ講師を担当していた。リカバリーであれば温冷浴について、メンタルコンディショニングでは呼吸の重要性や前頭葉についての説明など、各分野の基本的な概念を説明するとともに、たとえば栄養であれば必要な摂取エネルギーを計算する課題を解くといった内容であった。


写真4 実技を通して伝える長瀬氏


写真5 リカバリーについて山本氏の講演


写真6 メンタルコンディショニングについて講演する須田氏


写真7 スポーツ栄養について講演する山鹿氏

協議の時間

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