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『2061年宇宙の旅』 作者: アーサー・C・クラーク

一作目の『2001年宇宙の旅』が1968年、二作目『2010年宇宙の旅』は1982年に、そして本作は1987年に発表されている。
タイトルでお分かりの様に、前作『2010年宇宙の旅』から51年も経過しているという奇抜さ。そんな第三作目が一体何を物語ると言うのか。
主人公は、前作に引き続きヘイウッド・フロイド博士である。
2010年から2015年にかけての木星往復の旅は、彼に若さをもたらした。人工冬眠は老化の過程を停止させるに留まらず、生物時計を逆行させる、つまり若返りを促進させるのだということを、彼は証明したのであった。
加えて、帰還後も殆どを地球を離れた宇宙空間の施設で過ごしたフロイドは、ゼロから六分の一の重力環境下に完全に適応したおかげで、実年齢103歳にもかかわらず、身体的には60代であった。
彼は再び宇宙の旅へと出発した。76年振りに太陽系へ接近してきたハレー彗星への調査及び観光ツアーに招待されたのだ。
フロイドを含む旅客宇宙船ユニバース号の一行は、ハレー彗星へと着陸する。
しかし、調査の中途で帰還命令が下る。姉妹船ギャラクシー号が木星の衛星の一つに不時着をしたというのであった。そして、一番早く救助に向かえる船は現状ではユニバース号しかいないのであった。
その衛星はエウロパ。
「これらの世界はすべて、あなたたちのものだ。ただしエウロパは除く。決して着陸してはならない」
この2010年の旅の際に何者か未知の存在から送られてきたメッセージにより、人類には決して立ち入ることが許されてこなかった星だ。
フロイドは、謎の星エウロパへと向かうことになるのであった。

ところで、前作『2010年宇宙の旅』が、『2001年宇宙の旅』に於いて映画版と異なる箇所を一切無かったことにして、完全に映画版からの続編として書かれた様に、本作も前作からの完全な続編とは言い難い。何故なら本作によって、前作のオチが成立しないことになってしまうからだ。
そして、謎の存在たちによる実験はまだまだ続くのである。


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