tetsuya

 眠れないのはいつものことだった。他人の寝言の隣でこっそりと恨み言を言ったり、東京湾の中心でおぼれるふりをしたり、一晩のうちに数えきれないやんちゃをして、きっと透明人間にこっぴどく怒られてしまったせいか、目は潤み充血し、鼻では鼻水を啜っていた。一日のループ、一週間のループ、一年のループのことを考えると、やはり宇宙はループの中に存在していると考えるのが自然なのではと思い、つまりは自分の幸せや不幸せが所詮ループの一環で複製されうるものであるという結論に達したとき、私の眼の中にある私ではない誰かの存在を知らず知らずのうちに隠してしまっていた自分の勝手さを、自分の中だけの秘密にしておこうとイの字の口で誓うと同時に、少しだけ愛おしく思うのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?