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人生をリセットした話 ③


 自営業としての11年間の最後が、親に借金の尻拭いを頼む結果になったと言う事実を、自分の中では無くしてしまいたいという思いがあることを、今のところ否定はできない。

 しかし、その一方で、これはどうしても私が経験しなければいけない出来事であったとも強く思っている。人生の学びの集大成とも言える。

 自分のこの経済的な危機的状況をどうにかするためには、もう親に頼るしかないと腹を決めたら、居ても立っても居られず、昼間仕事を終えて実家に向かった。

 私は土下座し、今の状況を正直に打ち明け、これだけの金額を援助して欲しいとお願いした。その代わりに、今の仕事を辞めて正社員の仕事を探すから、と。

 両親にしてみれば、薄々というか、もしかしたら、私がこういう事態に陥っているのではないかと心配しており、私が正直に話してくれた事とその金額が、まだ自分たちが援助できる範囲の額であったことに、安堵した様だった。

 父は幼い頃に父親を亡くし、母1人子1人で貧しい中に育った。そして、母と出会い謹厳実直に働くことで、家庭を作ってきた人だった。

 法事や祝い事の折に触れ、自分がいかに経済的に苦労してきたか、涙ながらに語った。そして、私に対しても、お金があれば援助してあげることも出来るのにと、何度か言った事がある。
 そりゃあ、援助してもらえるに越したことはないかもしれないが、それで逆に自立できない子の話は、世の中にごまんとあるわけで、自分はそうなりたくないと思っていた。
 でも、結局そうなってしまったんだけど…。

 父はお願いした金額を数日で用意して、渡してくれた。
私はいくつかのクレジット会社にそれらを支払い、そうして経済的な危機から解放された。

(続く)


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